図鑑
ファラオ・ハウンド
美しい肉体とエキゾチックな表情。
敏捷性抜群のウサギ狩りの名手
英名
Pharaoh Hound
原産国名
Kelb tal Fenek(ケルブ・タル・フェネク)
FCIグルーピング
5G 原始的な犬・スピッツ
FCI-No.
248
サイズ
原産国
特徴
歴史
ファラオ・ハウンドは、FCI(国際畜犬連盟)やJKC(ジャパン・ケネル・クラブ)のグループ分けだと「スピッツ&プリミティブ・タイプ」に属する。
プリミティブとは「原始的な」「未発達の」「自然なままの」などの意であり、そのグループの名前のとおり、ファラオ・ハウンドは古いタイプの犬の血を残す犬種である。紀元前3000年頃の古代エジプトにいたガゼル狩りの狩猟犬であり、王族の墓に儀式的に共に埋葬された「チズム」(英名:エイシャント・グレイハウンドまたはエジプシャン・ハンティング・ドッグ)という、いまは亡き謎の多い古代犬を祖先にしていると一般に言われる(関係ないという説も近年浮上しているが)。現代のファラオ・ハウンドと、エジプトの犬のミイラのDNA検査を本格的にしたら、新たな発見があるかもしれない。
その犬を、フェニキア商人(紀元前に地中海周辺の海上交易で栄えた人々。フェニキアという歴史的な地域名は現在のレバノン付近。地中海のいちばん東端)がマルタ島(現在のマルタ共和国。イタリア半島のシチリア島の南に位置する。イギリス連邦加盟国なので、イギリスの影響が色濃い。公用語はマルタ語と英語)に連れてきた。マルタ共和国は、マルタ島、ゴゾ島、コミノ島という3つの島からなる。3つ合わせても、淡路島の半分ほどの、面積の小さな国だ。首都バレッタのある、いちばん大きなマルタ島は、日本の徳之島(奄美大島の南隣り)とほぼ同じ大きさ。
そんな地中海の真ん中の小さな島国の、陸地と隔絶された環境で、ファラオ・ハウンドは純粋性を保ち続けた。現在はマルタ共和国の国犬に指定されている。JKC翻訳の犬種スタンダードでは1979年指定とあるが、ドイツサイトハウンド協会によると「マルタの国犬になったのは1974年、77年には銀貨のデザインに、2001年には切手にもなった」とある。真偽のほどを確かめるべくマルタ共和国名誉総領事館にも問い合わせたが、日本では分からないとのこと。しかし、
マルタ島に住むマルタケネルクラブの元会長 (しかもファラオハウンドのシリアス・ブリーダー)によると、国犬になったのは1974年とある。地元のファンシャーの意見が有力かも。
ちなみにもう1犬種、マルタといえば思い出すのは小型愛玩犬の
マルチーズ 。名の由来は、「マルタにいる犬」。マルチーズの原産地は、中央地中海沿岸地域とされているが、彼らもフェニキア商人によって海洋貿易の中継地点であるマルタ島に連れてこられた犬であり、歴史的な経緯はファラオ・ハウンドと同じだ。
ただしファラオはエジプト方面から連れてこられた犬だが、マルチーズは
ビション・フリーゼ などと同じビション系だが、一説ではアジアから来た犬も混血しているとされる。
シー・ズー やラサ・アプソと関係があるのかもしれない。ファラオとマルチーズは、全く違うタイプの犬だが、地中海の真ん中の小さな島で、同じように発展していったのである。
マルチーズはさておき、ファラオ・ハウンドは、地元では「ケルブ・タル・フェネク」(Kelb tal Fenek)と呼ばれる。マルタ語で「Kelb」は「犬」、「Fenek」は「ウサギ」。つまりウサギ狩りのための「ウサギ犬」だ。
体躯的にも性質的にも使用目的としてもサイト・ハウンドと類似点も多く、アメリカではサイト・ハウンドのグループに属している。ただファラオ・ハウンドは「サイト(視覚)」だけでなく、嗅覚も非常に鋭く、視覚・嗅覚・聴覚のすべてを使って猟に挑む。そういう点では、同じくアフリカのプリミティブ・ドッグ(未改良犬)のバセンジーと似ていることを想起させられて興味深い。
ともあれファラオ・ハウンドは、マルタ島とゴゾ島の人里離れた田舎で、農夫のウサギ狩りの犬として使われてきた。それは現在に至ってもそう。実は、マルタに行けばファラオ・ハウンドがたくさん街に歩いているかといえば、そうではないらしい。むしろ全然出会えないそうだ。マルタ(とくにゴゾ島)では今も生粋の狩猟犬として使われており、普段は田舎の敷地内の犬小屋に閉じ込められていて、外に出てくることは猟期の季節しかないという。また狩りをする時間も夜なので、ますます島を歩くファラオ・ハウンドに出会うチャンスは少ないとのこと。きっと地元の狩猟家は、いまも「ケルブ・タル・フェネク」と自信と誇りを持って呼んでいるに違いない。
つまり、ファラオ・ハウンドは、ショー系と実猟系で、まったく違う道を歩んでいると考えて間違いなさそうだ。
そもそもマルタ共和国はイギリス連邦加盟国なので、イギリスから輸入された犬が多い。街中やドッグショー会場では、ラブラドールやポインター、テリアなどを見かけることはできるが、ファラオ・ハウンドはそう簡単にお目にかかれないらしい。それは昔も同じだったようで、誰も土地の犬である「ケルブ・タル・フェネク」には目もくれず、ヨーロッパから輸入されたハイカラな外国の犬に関心を寄せた。
逆に、細身でエキゾチックな「ケルブ・タル・フェネク」に注目したのはイギリス人である。彼らにとっては新鮮で神秘的な魅力溢れる存在だった。1968年に8頭をマルタ島からイギリスへ連れて帰った。まだほんの40数年前ほどの話である。そしてたちまちイギリスで人気を博することになる。
その際に「(マルタ島の)ウサギ追いの犬」を意味する「ケルブ・タル・フェネク」という野暮な名前は、この美しい犬には似合わないとされ、「ファラオ・ハウンド」といういかにもエジプト王家を思わせる名前が付けられたという。
現在ファラオ・ハウンドは、北欧などで人気があり、ヨーロッパのショーの世界でもよく登場している。日本でも北欧のラインが輸入されている。日本や欧米で、コンパニオンかショードッグとして飼育されている本犬種は、おそらくショー系の家系と思ってよいだろう。猟欲や機動力などはコンパニオン向きに抑制されているかもしれない。
とにかく、家庭犬やショードッグとしては、まだ歴史の浅い犬種である。日本での登録頭数も少なく、2013年度の登録が9頭、2012年度の年間登録はなし(つまり血統書登録された犬は1頭もいない)、2011年度登録は11頭(ランク106位)、2010年度登録は7頭(ランク119位)という程度である。国内でのブリーダーも少ないし、またファンシャーも少ない分、情報も少ない。
本犬種の飼育を考えるのであれば、なるべくすでに飼育経験のある人をネットなどで探し、できれば成犬に直接会わせてもらい、少しでも多くの前知識を収集してほしい。プリミティブ・ドッグは、家庭犬としての改良の歴史が短いので、野性的な、ほかの犬と比較すると不思議な性質を残していることが多い。飼育上管理すべき注意点や、実際の成犬の大きさや動きなどを確認することが望ましい。
外見
体高はオス56〜63.5cm(理想体高56cm)。メス53〜61cm(理想体高53cm)。ちなみに
ラブラドール・レトリーバー の体高がオス56〜57cm、メス54〜56cmが犬種スタンダードなので、体高的にはほぼ同じ。でもファラオ・ハウンドの方がスリムでシュッとしているので、ラブよりも体高が高いように見える。小顔で首が長くスタイルのいいモデル体型の人が、実際よりも背が高く見える原理と似ている。
ファラオ・ハウンドの体重は、犬種スタンダードにはないが、おおよそ18〜25kg。前述のラブの場合は25〜35kgほど。体高が同じなのに、体重が10kg近くも違うので、ボリューム感がまったく異なる。ファラオ・ハウンドは、体高だけ見ると大型犬と言われてしまうが、体重的には中型犬であり、体重換算での食事代や投薬代などは思ったよりも高額ではない。
外貌はすっきりした輪郭で、無駄のないボディでとにかく美しい。この美しさにノックアウトされるファンシャーは多い。歩様は流れるようで、頭はかなり高い位置に保ち、歩幅が大きく、少ないエネルギーで効率よく進む。足を横にはねたり、ハイ・ステップな「ハクニー歩様」(ハクニー馬のように前肢後肢を高く上げる歩き方。例:ミニチュア・ピンシャー)はNGとされる。
エキゾチックな琥珀色の、オーバル(卵形)の瞳。聴覚もとても発達している犬で、大きな直立耳。「ろうそくの炎のように大きい耳」と評される。しっぽは、根元はかなり太く、先が細くなった鞭状。静止しているときはホック(飛節。くるぶし)の下まで伸びるほど長い。活動時は高く持ち上げ、カーブしている。尾は後肢の間に挟んではならない。
美しい筋肉に貼り付いた、短く、光沢のあるタン(黄褐色)またはリッチ・タンの被毛も特徴的。琥珀色の瞳と、この光り輝く金色に近いカラーが、またファラオ・ハウンドの名前のイメージに華を添える。手触りは個体差があるようで、密で柔らかく滑らかな犬と、やや粗めの犬がいる。ほぼ全身が黄褐色であるが、犬種スタンダードでは尾の先が白いのが大変好まれる。胸にある「スター」と呼ばれる白い斑、前後の指の間の白い部分、顔の中央の細くて白いブレーズ(鼻筋の白斑)は許容されるが、これら以外の斑点や白い部分は好ましくない。
非常に短いスムースヘアなので、手入れは簡単。気になったときにラバーブラシでブラッシングをする程度。ただごく短い毛だが、抜けるときは抜ける。シャンプーも自宅で出来る。乾かすのも簡単。ただ「イヤなモノはイヤ」と頑固な部分があるので、ドライヤーを嫌がっておとなしく我慢してくれない犬もいる。狭い脱衣所のドアを閉めて、物理的に脱走しないようにするなどの工夫をするとよい。
毛色
魅力的なところ
とびきり美しい犬。静止していても、走っていても、飛んでいても、芸術品のような美しさ。
薄い琥珀色の瞳、エキゾチックな表情も魅力的。
自由運動大好き。ドッグランにたくさん連れていこう。
瞬発力はすごいが、持久力はそうでもない。運動時間はそこそこですむ。
敏捷性に優れ、いろんな地形に対応でき、危険察知能力に優れている。ケガも少ない。
遺伝性疾患等、病気が少ない丈夫な犬種とされる。
毛の手入れは楽。
敏感で警戒心が強いので、よい番犬になる。
猫っぽい気ままなとこがある、ちょっと普通と違う不思議な犬。
大変なところ
人間に迎合しないし、気が散りやすい性質なのでトレーニングには忍耐力が必要。
飼い主との信頼関係を築くのにもひと苦労。海のように深い愛情と包容力がある人向き。
自分の欲・欲求に正直。嫌いなモノは嫌い。頑固。意見変更してもらうのが難しい。
怒鳴る、叩くなどの強制的なトレーニング方法では飼い主への不信感が募り、ますます言うことを聞かなくなる可能性大。
幼少期はとくにイタズラ好きの破壊魔。イタズラ防止の環境を整えるのが不可欠。
ジャンプ力が超人的。フェンスも軽々と飛び越えるので要注意。
警戒心が強く、物音に敏感に反応して吠える。吠え声が問題となる住環境には不向き。
呼び戻しは苦手。脱走・迷子の危険あり。自由運動は必ず高い柵のある場所で行う。
猫や小型犬などに本能的に追いかけたくなる習性が残っていることが多い。
持久力がそれほどでもないせいか、日本の暑さにへばりやすく、また寒がりでもある。
国内で優秀なブリーダーを探すのが大変。
まとめ
美しい犬。静止していても、駆けても、跳んでも、とにかく美しい
今までほかの犬種も飼育経験があり、かつ現在2頭のファラオ・ハウンドと暮らすファンシャー曰く、「とにかく綺麗。アジリティーをさせて走っている姿も、跳んでいる姿も綺麗。ほかの苦労も消し飛ぶ、なんでも許せてしまう美しさ」。それほどまでにファンシャーを虜にする美しい犬。また心肺機能がよく発達したスプリンターである。走って体温が急激に上がると、もともとピンク色をした鼻や耳がもっと紅くなり、特別な魅力を醸し出すという。
岩場がゴツゴツしている自然環境でウサギ狩りに使われていただけあり、サイト・ハウンドのような体形でありながら、直線を走るのが速いだけでなく、小回りもよく利くし、跳躍力もある。狭いドッグランでも上手に切り返し、美しく翻り、ターンする姿に惚れ惚れする。非常に敏捷性があり、運動性能の優れた犬だ。サイト・ハウンドの仲間には、急ブレーキや急旋回が苦手なタイプもいて、そのため止まりきれず、よけきれずに、骨折などのケガをする犬もいるが、ファラオ・ハウンドに関してはその心配はほとんどないらしい(「むしろ飼い主が下手によけた方がぶつかる」とのこと)。ちゃんと目でしっかり目標物をとらえ、自己判断でうまく調整し、危険回避をしている、運動神経抜群の犬なのだ。
クイックリーな動きが得意なので、アジリティーに参加している犬もいる。従順にトレーニングをするタイプではないが、犬が楽しみながらゲームを体得していく教え方をすれば、じゅうぶん一緒にドッグ・スポーツを楽しむこともできる。アジリティーの障害物をしなやかに軽やかに跳ぶ姿は本当に美しい。
ただ、跳躍力が優れている分、180cmのフェンスをも越えてしまう強者もいるそうだ。ただでさえ呼び戻しのトレーニングが難航する犬種でもあるので、自由運動をさせるドッグランや庭では、十分な高さのフェンスで囲まれていることを確認すること。万が一のときのために、迷子札やマイクロチップを準備しておくことも忘れずに。
「好きなモノは好き、嫌いなモノは嫌い」。トレーニングは忍耐力が必要
ウサギ狩りの仕事以外にも、牧羊のお伴にしたり、家庭で可愛がられていたり、農家の子供たちのよき遊び相手も勤めていたそうで、人間に対しての反抗心や攻撃心などは見られない。反抗的ではないし、それほど欲求が高いわけでもないのでそんなに飼いにくい犬ではないのだが、でも、バセンジーを始めプリミティブ(未改良)な犬にありがちな、高い自立心、独立心、自尊心がある。自分の好きなものは自分で決める。自分がやりたいことは自分で決める。自分がやりたくないことも自分が決める。そういうタイプなので、人間と暮らすルールを教えていくのは、忍耐力が必要。繰り返し繰り返し、気長に教えていくことがポイントである。
人間に対して素直で従順で、次のコマンドは何か何かと待ち望んでいるガンドッグのようなタイプとは本質的に違う。でもこれはファラオ・ハウンドが、バカだとか物覚えが悪いというわけではない。そもそも自分の意見をしっかり持った、自己判断能力の高い犬だというだけである。よって、「呼んだらすぐ来る」「教えたら一発で覚える」というような従順で献身的な犬がお好みの人は、「犬らしくない」とイライラしたり、扱いに悩むことになる。ファラオ・ハウンドの性質をよく理解した人に、ファラオの良さを伸ばしていただきたい。
また野性味の残る犬のせいか、人間の教えたいことが、うまくすぐに伝わらないことが多々あるようだ。すでにトレーニングのできている先住犬がいれば、その犬の真似をして、家庭内のルールを覚えてくれたりするが、そうでない場合、人間が自分に対して何を望んでいるのか、すぐに理解できないことも多い。そういうときに厳しい教え方や体罰などをすると、ますます犬は混乱し、飼い主に対する不信感を募らせてしまうので要注意。信頼関係がなくなると、よけい意思伝達は難しくなる。我慢大会と思って、丁寧に、気長に教えていくことが大事だ。
それでも、どう頑張っても頑なに拒まれることもある。たとえば神経質な一面があるため、道路のグレーチング(排水溝の金属の格子状のフタ)を過剰に嫌がったり、室内トイレの敷物にえり好みをしたり、いくら教えてもどうしても意見変更をしてくれない案件もあるらしい。そういう場合は、飼い主が「この犬はそういうもんだ」と大らかに許してあげてほしい。生命の危険がないような問題ならば、多少のことは飼い主の方が意見を変更して、違う作戦を考えるなり、違う道を選ぶなりして、ファラオが暮らしやすい方法を模索してあげよう。
頑固なうえに、イタズラ魔。覚悟と対策が必要
トレーニングにはコツと忍耐力が必要だというのに、そのうえけっこうなイタズラ魔だとファンシャーは言う。どの犬種も子犬のときは多かれ少なかれ、好奇心旺盛で探求心が強く、ヒマを持てあまし、いろんなものを囓ったり、壊したりするものだが、ファラオ・ハウンドもかなりのイタズラっ子らしい。ティッシュ、布、スリッパなど、いろいろなものを引きちぎって遊びたがる。もっと強者になると、床や壁を囓ったりもする。
まずは運動をたっぷり与え、破壊する気力や体力もなくなるほど遊ばせる努力が必要だ。しかしそれでも留守番をさせねばならない日もある。留守番時間が長いとますますストレスが溜まって何をしでかすかわからないが、誤飲などの事故はやはり避けたいので、留守番をさせる際にはバリケンで休ませるようにクレート・トレーニングを子犬のときから行ったり、物を置かないスッキリした犬部屋を用意し、その中で待たせるなど飼育環境を整備する。
ファラオ・ハウンドに限ったことではないが、カッコイイ凛とした外貌に憧れ、ファラオ・ハウンドとのおしゃれな都会的な暮らしを夢見ているとしたら、現実とのギャップはかなり大きくなる可能性大。すべてのファラオ・ハウンドが破壊魔はどうかはわからず、もちろん個体差や運動差でも違いはでてくると思うが、最悪のケースを覚悟はしておいて、心の準備をしておいた方があとで楽だと思う。共働きなど、犬1頭での留守番を長くさせるしかないライフスタイルの家庭は、この犬種を選ぶのはもう一度よく考えて。
ウサギ狩り犬だったので、小動物に反応することがある
猫や小動物に対して、敏感に反応することもある。それは猟犬としての血がそうさせるので、無理もない。散歩中、目の前をパッと猫が飛び出したときに、リードの手を放してしまったり、自分が転倒しないように気をつける。体重的には中型犬くらいだが、瞬発力のある犬なので、飼い主もそれなりに運動神経の発達したふんばれる人がいい。
また小型犬に対して、攻撃性がある犬もいるし、まったく攻撃しない犬もいる。ドッグランなどで、怯えて逃げる小型犬を追いかけ、追い詰めたがる行動もあるそうだ。これもまたこの猟犬の習性ゆえである。
そのときに、追い詰めたらゲームオーバーだと思ってそれ以上のトラブルにならない犬もいるのだが、昔の猟の方法を思い出すと、最終的にはウサギをくわえて狩る仕事だったので、もしかしたら咬んで、飼い主の元へ持って帰ろうとする犬もいるかもしれない。そういう習性が残る犬の場合は、逃げ惑う小型犬がいるドッグランには入らないか、あるいはマズルガード(呼吸はできるし、水も飲めるが、咬みつくことはできないようになっている口輪)を着用し、相手の犬をくわえることのないように配慮しよう。
病気は少ない頑健な犬。しかしレア犬種だけにブリーダー探しは大変
日本はもちろん世界的にも家庭犬としての飼育頭数が多くないので、病気の臨床数が少ないだけなのかもしれないが、この犬は、現時点ではほかのどの犬種と比べてもかかりやすい病気が少ない犬である。かかりやすい病気としてあげられているのが「耳のしもやけ」のみ。なんとも微笑ましい。内臓や骨関節はかなり頑健な犬と思って大丈夫だろう。健康な犬はありがたい。大きな魅力のひとつといえる。人間が人為的に犬種改良をした歴史が短いので、犬本来の強さを持っている犬なんだと思う。
もちろん個体差もあるので、絶対病気が少なく長生きする犬だと断言することはできないが、少なくとも遺伝性疾患などの存在が多く判明している犬種よりは、病気が少なく、動物病院にお世話になる回数は少ないと期待できる。
ただ、世界的に見ても遺伝子プールの大きな犬種ではなく、その中で誤った商業主義の繁殖が行われれば、将来的にどうなるかはわからない。本犬種がこの先も最も遺伝性疾患や先天性疾患の少ない犬種のトップに君臨するよう願う。
そのためには、心あるブリーダーがこれからも頑張ってくれないといけない。レアな犬種だけに、日本でファラオ・ハウンドの子犬を探すのは大変だ。でも、珍しいことに目がくらんではいけない。健全な犬を選ぶことがいちばん大事。ファラオ・ハウンドを飼ってみたいと思ったら、ドッグショー会場やファンシャーのオフ会などに足を運び、写真でしか見たことのなかった犬をちゃんとその目で本物を体感してほしい。そして実際に飼っている人の話をどんどん聞こう。研究しているうちに、よいブリーダー情報なども入ってくるはず。子犬も数年待つくらいの気持ちで探すのが理想だ。
このページ情報は,2014/11/08時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
掲載されている内容/データに間違いを見つけたら?