図鑑
ジャーマン・シェパード・ドッグ
捜索・救助・番犬・ガイド・家庭犬なんでもお任せ。
世界で最も大活躍する万能犬
英名
German Shepherd Dog
原産国名
Deutscher Schäferhund
FCIグルーピング
1G 牧羊犬・牧畜犬
FCI-No.
166
サイズ
原産国
特徴
歴史
世界で最も有名な「賢い犬」といえば、この犬種。
ラブラドール・レトリーバー や
ボーダー・コリー も有名だけど、日本ではラブやボーダー・コリーより歴史が長いし、「警察犬」といえば「シェパード」の姿を思い浮かべる人も多い。警護・護衛・襲撃・軍用といったタフさと攻撃性を必要とする仕事や、捜索・救助・麻薬探知といった鋭い嗅覚・集中力・忍耐力が不可欠な仕事、盲導犬・介助犬のようにいつでもどこでも平常心で沈着冷静に行動できる環境適応能力が試される仕事、そしてあるときは、子守りや忠実なコンパニオン(家庭犬)の役目、さらにもともとの職業である牧羊犬としての能力など、実に多才。トレーニング次第で器用になんでもやってのける、犬界最高峰の訓練性能を誇る犬だ。
日本では、ジャーマン・シェパード・ドッグ(以下、G・シェパード)のことを一般では「シェパード」とよく呼ぶが、そもそも「シェパード」とは英語で「羊飼い」(教会員を羊に見立てて)「牧師」などを意味する。よってシェパード・ドッグとは、読んで字のごとく「羊飼いの犬」。G・シェパードのほかにも、オーストラリアン・シェパード(アメリカ原産)、タービュレンやグローネンダールなどのベルジアン・シェパード(ベルギー原産)、ピカーディ・シェパード(フランス原産)、マヨルカン・シェパード(スペイン原産)など、シェパードと名の付く犬はたくさんいる。
ちなみに、オールド・イングリッシュ・シープドッグ(イギリス原産)や日本にもよくいる
シェットランド・シープドッグ (イギリス原産)といった「シープドッグ」(羊の犬)と名の付く犬、そしてラフ・コリー(イギリス原産)、
ボーダー・コリー (イギリス原産)といった「コリー」と名の付く犬も、羊飼いの犬である。昔やっていた仕事としては、シェパードもシープドッグもコリーも同じなのだが、名前が統一されていないのはなぜだろうと、ちょっと不思議に思う。こう並べてみると、ヨーロッパ大陸で使われていた牧羊犬はシェパードと呼ばれ、イギリスの牧羊犬にはシープドッグやコリーの名称が使われているようだ。
さて本題に戻り、原産国ドイツでは「ドイチャー・シェーファーフント(Deutscher Schäferhund)」または単に「シェーファーフント」と呼ばれている。こんな世界に冠たる犬を作出したことは、ドイツにとってさぞ自慢だろう。それは現代においても、本犬種の犬種スタンダードの作成などについてドイツが主導していることからも分かる。
はるか昔からドイツでは、羊の群れを管理し、広大な場所で羊たちが柵のない畑に入り込まないように、大型の牧羊犬が必要だった。ドイツの各地方にそれぞれ独特の牧羊犬がいたが、19世紀末にみんなで協力して、究極の牧羊犬を作出しようと試みたという。機敏で、賢く、声を立てずにひっそり行動し、冷静で落ち着いているという特殊な能力を求めて改良された。G・シェパードの祖先は、ドイツ北部にいた犬と、中部にいた犬の交配によって作られたとある。
しかし当初、犬種改良の盛んなイギリスはじめほかの国は、G・シェパードに対してほとんど関心を示さなかったらしい。でもドイツにおけるこの犬種への熱き思いは、他犬種にはないものがあった。ドイツ・ケネル・クラブのメンバーである、この犬種の作出協会である「ジャーマン・シェパード・ドッグ協会「Verein fuer Deutsche Schaeferhunde」(通称:SV。1899年設立)が「本犬種のスタンダードの責任を負う」と、FCI(国際畜犬連盟)やそれに加盟している各国のケネルクラブの犬種スタンダードに明示されている。
つまりそれぞれの国でいちばん大きな畜犬団体(たとえば日本ならJKC:ジャパン・ケネル・クラブ)やFCIよりも、G・シェパードに関していちばん発言権があり、責任を持つのが、SVという単犬種団体なのだ。その犬種を愛する1つの団体に、スタンダードのすべての権限を委譲されている犬種は、ほかには知らない。
SVが最初に作ったスタンダードは1899年。その後、何度か修正や見直しがされている。最も新しいのは2010年。従来はG・シェパードはショートヘア(短毛種)だけが認められていたが、2010年からロングヘア(長毛種)も公認された。犬種スタンダードも気をつけて最新情報をアップデートしていないと、いつのまにか新しい基準が追加されていることがあるので注意が必要だ。
SVによる厳しい繁殖管理が功を成し、G・シェパードは大きく発展した。第一次世界大戦中は犬種管理は一時中断していたが、戦争が終わるとその実力が認められ(戦時下で軍用犬として活躍したからであろうか)、ヨーロッパで人気犬種となる。しかし、イギリスとフランスでは敵国だったドイツに対する反独感情を避けるために「アルサシアン」と呼ばれていた(“Alsatian”は、ドイツとスイスの国境に接するフランス北東部・アルザス地方出身者の意味もある)。
またアメリカでは、ジャーマンの文字をとって単なる「シェパード・ドッグ」と一時期改名されていた。しかし1931年、AKCではジャーマン・シェパード・ドッグの名前に戻す。戦争は犬の名前にまで影を落とすのだな、と感じる逸話だ。
話は変わって、アメリカではG・シェパードが主人公の「名犬リン・ティン・ティン」という30分間の西部劇テレビ番組(1954-1959)が大ブレイク。日本でも1956年に放映されたので、ご存知の方もいるかもしれない。その後も複数のG・シェパードがリン・ティン・ティンの芸名で、何本もの映画に登場。映画のキャストを見ると、主演キャストとして人間の俳優の名前よりも先に一番上にリン・ティン・ティンの名前が書いてあるものが多く、人気のほどが伺える。こうしてG・シェパードは一躍国民的大スターになり、近年ラブラドール・レトリーバーにその座を譲るまで、何十年間にもわたってアメリカで人気ナンバーワンを独走していた。
日本でも、このたぐいまれな才能のある犬に魅了された人達が早い段階からいた。1928年に「日本シェパード犬倶楽部」が誕生し、1934年に「日本シェパード犬協会(JSV)」に名称を変更してG・シェパードの血統書の発行を始める。1935年には本場ドイツのSVと協力関係を結び、JSVは日本で最初の国際的なクラブとなったのである。これほどの歴史と実績のある団体は、日本ではほかにない。
1939年からはG・シェパードの訓練性能を競う「日本訓練ジーガー競技会」が開かれており、ファンシャーにとって最高のイベントとなっている。一般の見学も許されているので、G・シェパードをいつか飼育してみたいと夢見る人ならば、ぜひ見学させてもらうとよい。JSVは今までに何度も名称変更がなされているが、2012年9月から「公益社団法人日本シェパード犬登録協会」となっている。
ちなみに靖国神社(東京都千代田区)には、軍馬と軍犬の慰霊像がある。軍犬慰霊像は「兵士たちにとって最愛の仲間であったジャーマン・シェパード」(靖国神社公式サイトより)とある。日本でもG・シェパードが戦争で使われた歴史を感じることができ、戦争という極限状態においても重要な人間のパートナーだったんだな、と誇らしくもある一方で、悲しく複雑な気持ちになる。
このようにG・シェパードは世界中に熱きファンシャーを持つ偉大な犬種なのだが、かたや国際的にこれだけの人気犬種ともなると、営利優先の乱交配や遺伝性疾患の増加などの問題がもれなく浮上してくる。
ドッグショーでポーズをとるとき、後肢を曲げ、背中がしっぽに向かって低くなるよう傾斜させるが、これが美しいと賞賛する人と、腰に悪く不健全だという人の間で対立がある。ショー系の犬と、訓練系の犬とでは、トレーニング性能、運動能力、性質の安定性などが別犬種のようだ、という人もいる。
事実現在では、G・シェパードは遺伝性疾患を含む病気の多い犬の1つとなっている。また性質が過敏で神経質すぎる犬が一部に増えている。そのため近年になってアメリカでは、初期のG・シェパードの健全な肉体と安定した性質を復元しようと「シャイロ・シェパード」(FCI未公認犬種)という犬種がファンシャーによって作出されているくらいだ。
ともあれG・シェパードは犬界随一の実力者で、すべての作業にマルチに対応できる、賢くて強靱なワーキング・ドッグ、タフなスポーツ・ドッグ、美しいショードッグ、忠実なコンパニオン(家庭犬)であることは、誰にも異論はないだろう。体も心も健全な犬が、これから世界でも、日本でも増えて、さらに完成された万能な犬になることを望む。
外見
どことなくオオカミを彷彿とさせる野性的な風貌を持つ。体長が体高よりも長い(つまり胴長)。重要な比率として「体高は体長よりも10〜17%短い」と、細かいスタンダードが決められている。
体高は、オス60〜65cm、メス56〜60cm。体重は、オス30〜40kg、メス22〜32kg。性差が大きく、また個体差も大きい犬といえる。
頭部は、鈍重すぎるのもよくないが、他犬種に比べると大きめ。利口そうにピシッと前を向いた直立耳をしている。半直立耳や垂れ耳は欠点となるが、耳が大きすぎてぺろんと垂れている犬はたまに見かける。ショードッグでなければ、それも愛嬌があり、可愛い。また歩行中や休止時に耳を寝かせているのは欠点とはならない。目は中くらいの大きさのアーモンド形。色はなるべく暗色がよい。鼻はブラック。
筋肉質でがっしりとしているボディは、き甲部(両肩の間にある背の隆起した部分。肩の最高点)からごくわずかに傾斜した背を通り、徐々に尻に向かって傾斜している。
被毛は、従来の短毛種に加えて2010年には長毛種も公認されて、2バラエティになった。どちらもダブルコートで、抜け毛はけっこう多い。牧羊犬や軍用犬などの作業犬としての全天候型のタフさ、耐寒性を求められる犬なので、それも当然のことだろう。
短毛の場合、オーバーコートは密で、ストレートで粗毛。堅くボディに密着している。頭部、耳の内側、足の毛は短い。首の毛は少し長め。足の後ろ側には適度なトラウザー(大腿および下腿の後ろにある飾り毛)がある。
長毛の場合、柔らかい被毛に覆われている。長毛種が公認されたのは最近だが、昔から短毛同士の交配でも長毛種が生まれることはあった。今まではスタンダード外とされ、血統書が出なかったので淘汰される犬もいたが、健康や遺伝に問題がない長毛種にも血統書が与えられるようになったことは喜ばしいことといえる。ただ現在も交配相手を選ぶ基準が、ドイツでは厳しく設けられている。もしも長毛種のG・シェパードを希望するのであれば、国内はもとよりヨーロッパのブリーダーの情報を精査することが必要だろう。
毛色は、短毛種・長毛種も同一ルール。黄褐色に黒いサドル(ブラック&タン。背中に鞍を置いたような大きな黒いぶち)とブラックマスクの犬が、日本でも最もポピュラーに見かける。マーキングは、タン(黄褐色)のほか、レディッシュ・ブラウン(赤みがかった茶色)、ブラウン、イエロー、明るいグレーの個体もいてさまざま。そのほかブラックやグレーの単色(全身1色)もいる。オオカミっぽい野性的なウルフ・カラーやウルフ・セーブルもいる。
被毛色は、割と多彩。アンダー・コート(下毛)は明るいグレーがかかった色をしている。このアンダー・コートがすごく抜けるので、部屋の中には明るいグレーの毛が散らばることになる。
色素が欠乏しているものは重大な欠点。アルビノはもちろん、白い被毛の犬は、目の色や爪が黒でもスタンダードとして失格。ちなみにG・シェパードによく似た外貌で、全身真っ白の犬種に、ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ(スイス原産)がいるが、これはG・シェパードとは別の犬種だ。
ほかの失格事由として「気が弱い」「神経質」「重度の股関節形成不全」「1cm以上のオーバーサイズ、アンダーサイズ」など、厳しい規約がある。心身ともに健全なG・シェパードを未来に残すための繁殖管理ルールといえる。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
若年性白内障
遺伝性てんかん症
股関節形成不全
拡張型心筋症
肥大型心筋症
大動脈弁下狭窄症
動脈管開存症
三尖弁異形成
フォン・ウィルブランド病
強迫性障害
角膜ジストロフィー
先天性前庭症候群
先天性
その他
悪性血管内皮腫
骨肉腫
慢性僧帽弁不全
細菌性心内膜炎
心嚢疾患
肥大性骨ジストロフィー
炎症性腸疾患
椎間板疾患ハンセンII型
巨大食道
膵腺房細胞萎縮
肢端舐性皮膚炎
毛刈後脱毛症
慢性表在性角結膜炎
魅力的なところ
犬界最高峰の訓練性能。犬のトレーニングを楽しみたい人向き。
運動性能も高く、タフ。体育会系飼い主向き。
優秀な番犬・護衛犬になる。
とにかく頭がいい。玄人向き。たいていのことは多彩にやってのける。
飼い主だけに見せる素直で甘えん坊のところがたまらない。
オオカミっぽい野性味溢れる風貌。カッコよく、美しい。
飼い主とのよい絆があれば、子供にも寛容。
大変なところ
ものすごく賢いので、ものすごく手強い。ビギナーには簡単には扱えない。
トレーニングできないのなら、G・シェパードは飼うべからず。
元来自立心が高い犬なので、トレーニングしなければ暴君になる恐れ。
育て方を間違えると、飼い主や他人を咬むことがある。
犬から信頼される飼い主にならないと無理。優しい人より一貫性のある飼い主がよい。
仕事が大好きなので無職のままだとストレスで問題行動を起こす。
優秀な番犬になる分、警戒心が強く、吠え声が問題となる可能性あり(トレーニングで抑制することは可能)。
パワフル。力は強い。トレーニングなしで非力な人には無理。
オオカミっぽい大型犬のため他人から「怖そうな犬」と見られることも。
抜け毛が多い。
人気犬種の宿命で遺伝性疾患はじめ病気は多い。
病気の問題、性質の問題があるので、良識のあるブリーダー探しが必要。
急死する可能性のある胃捻転に注意。
まとめ
不可能を可能にする犬。でも、訓練のないGシェパードはG・シェパードではない
とにもかくにも、賢くて、強くて、たくましい犬である。世界中で「警察犬といえば」→「G・シェパード!」と真っ先に返事が返ってくるはずの、誰もが知っている賢い犬の代名詞だ。警察犬訓練競技会に見学に行くと、広大な原っぱで黙々と(犯人役の)足跡のニオイを追いかける競技や、迫力がありすぎて目が釘付けになる襲撃訓練はじめ、いろいろなG・シェパードの素晴らしい実技を見ることができるが、その集中力、作業意欲の高さ、知能や運動性能の高さにただもう尊敬。ひとたびG・シェパードに魅了されてしまうと、この犬種以外では物足りなく思えてしまうファンシャーの気持ちも頷ける。
難しいことを覚え、ハードなことをやり通す集中力とタフさと忍耐力は、この犬の右にでる者はそうはいない。だから世界中で、警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬といった公的な仕事だけでなく、個人の屋敷や生命を守るボディガード犬、ハンディキャッパーの心を癒すセラピードッグや手足となって働く介助犬、家庭で子守り犬、など幅広いジャンルで人々から必要とされているのだと思う。
日本では残念ながらこういう雄々しい犬は「怖い」「凶暴そう」と間違った印象を未だに持つ人もいるが、欧米では家庭犬として飼育されていることがとても多く、
ラブラドール・レトリーバー に次いで、ポピュラーに見かける犬だ。G・シェパードに向かって、往来で「その犬、咬む?」と軽々しく言う人は、国際的に見るとかなり恥ずかしいリアクションである。
とにかく、これ以上の犬はない、というほど優秀な犬。しかし当たり前だが、生まれたときから自動的に警察犬のように「人間にとって都合のよい」賢い犬に仕上がるわけではない。ドイツの犬の専門家であり、シュッツフント(防衛犬)の訓練に長くかかわってきたエーファ・マリア・クレーマー女史も著作の中で「今も昔も、訓練のないG・シェパードは、G・シェパードではない」と明言している。この一言に尽きる。
頭のいい犬、というのは、頭が良すぎて手強い。自己判断力のある、自立心の高い犬は、しっかり者で、自分の意見がちゃんとあるので非常に手強い。そして相手を見るので、頼りない飼い主の言うことなんか聞かない。指示の出し方が悪ければ応じない。一貫性のないことを言うと、逆ギレする(いや逆ギレでなく、犬の立場から見ればキレて当たり前かも)。かといって高圧的な態度で訓練したら、絆がつくれず、最高の能力は引き出せない。
G・シェパードの賢さ/トレーニング性能は、ラブラドール・レトリーバーやセッターなどの鳥猟犬チームのような、素直で従順なタイプとはジャンルが違う。優秀なG・シェパードを育てるためには、この犬種を熟知していないと難しい。
つまり優秀な犬を育てるには、どの犬種でもそうだがとくにG・シェパードのようなタイプは、強い意志のある、優秀なハンドラー(飼い主)が必要。仮になんでも飼い主の言うことを完璧に聞き、リードは引っ張らず、飼い主のそばで礼儀正しく振る舞うG・シェパードを公園などで見かけたとしよう。それは犬も優秀であるが、それ以上にそのハンドラーである飼い主さんがすごく優秀な人なのである。G・シェパードは家庭犬であっても「訓練することが趣味」という人にこそふさわしい。そしてさらに上をいくファンシャーは、単なる犬とは異なる「G・シェパードにしかできない能力」を引き出すことに、オーナーとしての誇りと悦びを見いだす。
ちなみにひと昔前は、G・シェパードを訓練所に数か月預けて訓練をしてもらうという家庭も多かった。そういうのも育て方の1つの方法ではあるが、嘱託警察犬などを目指しているのではなく、家庭犬として飼いたいのであれば、やはり飼い主自身が優秀なハンドラーになる必要がある。そうでないと、訓練所では完璧な犬で、訓練士の言うことはピシッとなんでも聞き、高度なトレーニングをこなす犬であっても、家に帰ってくると、お父さんの持つリードをぐいぐい引っ張り、お母さんを小馬鹿にして唸って威嚇し、子供やお客様に攻撃する犬になることだってある(軽いレベルであればよく聞く話だ)。
G・シェパードのオーナーになれるのは、このずば抜けた才能の犬の上を行く賢さと強い精神力とオーラを身につけた人のみ。相当の覚悟が必要。また最初は、自分がトレーナーに習う時間や授業料が必要と心すべし。まずはG・シェパードの飼育経験や訓練経験のある人の話を聞いたり、訓練競技会に出向いて見学して、どん欲に情報を収集してほしい。頑張れば頑張るほど、きっとG・シェパードは、素晴らしい相棒に成長してくれるはず。G・シェパードはダイヤの原石といえるかも。磨かなければただの硬い(頑固で頑丈な)石っころ。磨けば世界一価値のある輝く宝石となる。
軍用犬になるタフな運動能力
当然のことながら,運動欲求量も高い。脚側歩行(飼い主の足のそばについて歩く)を教えれば、リードを引っ張ることなく(リードがなくてもそのまま逃げることもなく)、賢く散歩のお伴をしてくれるが、しかし、それは犬にとって訓練モード・お仕事モードの状態である。ずっと訓練モードのままでは犬も気の毒。それに人間の歩く速度で動いても、G・シェパードの運動にはならない。
公園までは脚側歩行でも、ドッグランなどの広い場所でしっかり自由運動や自転車引き散歩などをさせることが必要。どんなにトレーニングが入っている聞きわけのよい子でも、犬は犬。自由に駆け回り、好きなだけ葉っぱなどのニオイを嗅ぎ、はしゃぐ時間を与えてあげよう。そうすることにより心の健康が保たれ、美しい筋肉がつく。
抜け毛はたくさん。ブラッシングを頑張る
ダブルコートの大型犬なので、短毛タイプでも長毛タイプでも、抜け毛は多い。とくに春と秋の換毛期は、とても抜け毛が増える。下毛をしっかりブラッシングで取り除く作業を行う。短毛タイプは堅めのサラッとした毛なのでもつれることはあまりないが、長毛タイプは柔らかい毛なのでもつれる。長毛タイプでも短毛タイプでも、換毛期は毎日ブラッシングをすることになる。そうすれば室内の中で散らばる毛を減らすことはできる。それでも室内のこまめな掃除機がけは覚悟するべし。
遺伝性疾患はじめ病気は多い。ブリーダー選びと病気の早期発見が大事
世界的な人気犬種の宿命で、遺伝性疾患およびかかりやすい病気が多い。悪性血管内皮腫や骨肉腫といったガン、股関節形成不全などの骨関節の病気、さまざまなタイプの心臓疾患、角膜ジストロフィーなどの目の病気、常同障害(強迫性障害)などの心の病……
ゴールデン・レトリーバー やラブラドール・レトリーバー、
プードル 、
ボクサー 、
ダックスフント と同じく「病気のデパート」と呼ばれてしまう犬である。
飼育頭数の多さから臨床データ数が多いということもあろうが、いずれにせよ少しでも病気のリスクの少ない家系の犬を手に入れるために、志の高いブリーダーを探すことがまず大事。犬を売ることで生活している繁殖業者や商業主義の訓練所の犬だと、繁殖犬の遺伝子検査といったお金と手間のかかることはしていないことが多い。病気の多い大型犬を飼育するのは、精神的にも経済的にもきついので、まずは正しいブリーダー選びが欠かせない。
しかしどんなに頑張っても生き物なので、病気を100%回避することはできない。もしも発症したときにすぐ対応できるように、日頃からG・シェパードファンシャーの友達や犬の実家と情報交換を行い、病気の知識を蓄えておこう。そしてもちろん病気の早期発見も重要だ。いつも愛犬のことをよく観察し、小さな異変にも早く気がつけるようにしよう。
また胃捻転で急死する個体もよく聞く。胃捻転についての知識を蓄え、胃捻転をなるべく起こさせない生活習慣・食習慣に努める。万が一の時のために夜間の救急病院を調べておくことも大事だ。
このページ情報は,2014/11/08時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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