歴史
世界最小の純血種とされる。ちなみに、チワワと同じくらい小さい「プラシュスキー・クリサジーク」という、ミニチュア・ピンシャーをさらに小さくしたような姿のチェコ共和国原産の超小型犬がいるが、こちらはまだFCI未公認犬種なので、チワワは国際的に認められた「世界最小の純血種」として名乗ってよいだろう。
チワワという犬種名は、メキシコ北西部に位置する同国内で最大の面積を持つ「チワワ州」に由来している。チワワの発祥については諸説あるが、かつては野生に生息していて、狩猟民族であるトルテカ文明時代(7〜13世紀頃)のトルテカ族や、アステカ文明時代(14〜15世紀頃)のアステカ族に捕らえられ、家畜化されたという説がある。
家畜化というと聞こえはいいが、要は神様に捧げるための生け贄だった説が濃厚。アステカ族は宗教的な「生け贄の文明」があることで有名で、人間の大人も子供も心臓を神に捧げられ、そのあと「神様の肉」として民に食されていたが、チワワも同様に神に捧げられる聖獣として扱われた。死者と一緒に埋葬されていたらしい。またチワワの肉は食用にもされていた(それが宗教的理由か、庶民の食料としての利用かは分かっていない)。とにかく現代の愛らしい姿からは想像もつかない、壮絶な過去を持っていた犬といえよう。
アステカ族はスペイン人の征服により滅亡するが、その後メキシコでこの超小型犬を発見したのはアメリカ人だった。ちなみにメキシコの首都メキシコシティの約70km北のところにあるトゥーラという街は、トルテカ文明時代のトゥーラ遺跡があることで有名だが、この街に「テチチ」という小型犬をかたどった装飾品がある。この「テチチ」が、今日現存するスムースコートのチワワに似ている。
また最初のチワワは、スムースコートのみだった。
パピヨンや
ポメラニアンなどの血を入れ、ロングコートのチワワへと改良されたようだ。犬種改良は主にアメリカで行われた。
余談だが、ポルトガル原産の体重5kgくらいのポテンゴ・ポルトゥゲス・ペケノという、立ち耳・丸い頭・とがった口先の犬がいる。被毛はスムースヘアかラフ・ヘアーの2タイプ。どことなくチワワに似ている。チワワと遠く血のつながりがあるかどうかを示す文献はないし、仮に血縁関係があったとしてもどちらが先に存在していて海を渡ったのか分からないが、ともあれ、なぜチワワのような極小の犬が、犬の起源とされるユーラシア大陸から遠く離れた中米に登場したのかは謎に包まれている。
日本では、2002年後半からTVのCMにロングコートのチワワが起用され、一大ブームが巻き起こった。テレビの影響でこれだけ一気に流行犬が作り上げられる国は、世界的に見て珍しい。とはいえ超小型犬で、子宮も小さく難産になりやすいため、1回のお産で普通1胎しか産まれないから、流行犬種になっても供給が間に合わない。そのため一時期チワワは品薄になり、べらぼうな高額な値段で売買されたり、その一方で乱繁殖に拍車がかかった。
大柄な母犬を繁殖犬に使えば、産まれる子犬の数が増えるので、サイズオーバーの母犬が都合よく利用された。その結果スタンダードを大きく外れるビッグサイズのチワワが増え、遺伝性疾患に配慮なくパピーミルやバックヤードブリーダー(=犬種の研究もしない素人ブリーダーで、自分の家にいるメス犬に赤ちゃんを産ませてみたという程度のレベル。犬種スタンダードの保存や遺伝性疾患の淘汰などは一切考えていない)の元で生産されて、健康上も性格上も問題のある個体が日本で増えてしまった。
時期をほぼ同じくして、アメリカのセレブがチワワをバッグに入れてファッションの一部のように持ち歩く姿がマスコミによく取り上げられたため、日本でも若い女性層が、チワワをアクセサリーのように欲しがる風潮もあった。しかしわざわざ書くことでもないが、犬はアクセサリーではない。ウンチもするし、吠えるし、毎日の世話も必要である。そんな「犬を飼う」という当たり前のことすら理解されないまま飼ってしまう(買ってしまう)ケースも実際にあって、その後飼いきれずに捨てられるチワワが急増した。日本のチワワにとって苦難の時期だったといえる。
今では当時のバカ騒ぎ的なチワワブームは沈静化しているが、それでもまだ「小さければ小さいほど可愛い」「小さいから飼いやすいはず」と間違った認識の人は存在しており、日本のペットショップではチワワは未だに衝動買いされやすい犬種である。正しいチワワの真の価値を知る人が、一刻も早く日本でもっと増えることを望む。
外見
体重500g〜3kgが犬種スタンダード。理想体重は1〜2kgとされ、3kg以上はスタンダード外となる。体高のスタンダート記載はないが、おおむね15〜23cmほど。体高は、体長よりもわずかに短いスクエアなコンパクトボディ。オスは体高(肩甲骨のいちばん高い部分〜地面):体長(胸郭の一番前〜肛門横あたりの寛骨の一番後ろ)が、ほぼ1:1の正方形の比率が望ましい。メスは、妊娠する可能性があるのでわずかに体長が長くても許されるが、胴長すぎるのはチワワとしてバランスが悪い。
ただし上記のスタンダードの数値は、チワワという犬種を未来に残していくための理想像を示すもの。家庭犬には上も下も「失格」もない。ちゃんと可愛がっていて、毎日散歩に連れ出していれば、それがいちばん。でも「チワワ愛」を育むうえで、犬種スタンダードを知っておくということは、チワワという犬種をより理解する大切なプロセスの1つだ。
外貌で最も重視されるのは、リンゴのように丸いアップル・ヘッドの頭骨。ただし、健康を損なうほどの奇形はいかがなものかという論争がある。
また、しっぽの形状も大事なポイントで、尾先を腰へ向かってカーブさせた適度な長さの尾、あるいは半月上に高く保持した尾がよい。自信たっぷりに高くあげたしっぽが、自意識が高くて勇敢な性格をはっきり示し、チワワらしい魅力が伝わる。
鼻はちょっと上向き。大きくピンと直立した耳と、大きくて丸いダークな瞳はチワワの最大のチャームポイント。決して出目ではない。たれ耳、小さい耳、無尾は失格となる。また四肢が長く細く、全体の骨重の軽すぎる「ディアー(鹿)・タイプ」も失格。これは、チワワとミニチュア・ピンシャーの体型の大きな特徴の差といえるのではなかろうか。ミニピンは体重4〜6kgと一回りチワワより大きいうえに、四肢が長く、スッとしており、チワワより鹿っぽい。チワワの方がコロッとしている感じだ。チワワは小さくても、ぎゅっと中味が詰まったようなボディが良く、スラッとしているミニピンとは一線を画する。弱々しい華奢なチワワは、虚弱体質の可能性があるので注意。
被毛は2タイプ。光沢のある柔らかな短いスムースコートと、長毛のロングコート。長毛の被毛は細くシルキー(絹糸状)で、まっすぐかわずかにウェービー。厚すぎる下毛は望ましくない。耳、首、四肢の後ろ側、尾の被毛は長く、ブルーム(尾から垂れている長い飾り毛)がある。長くうねっている被毛は認められない。また被毛がない(無毛)のも許されない。
毛色は、シェルティなどに見られるブルー・マールやレッド・マールといったマール・カラー以外のすべての色調と組み合わせが認められている。つまりマールを除き、何色でもいいということ。日本でもいろいろな色のチワワに会える。たとえば、フォーン、ブラウン、セーブルといった単色のもの、ホワイト&ブラウン斑やホワイト&ブラック斑といった2色のパーティ・カラーのもの、ブラック&タンやチョコレート&タンなどだ。
毛色
まとめ
「愛らしい小型愛玩犬」は表の顔。実は初心者には難しい、玄人向けの犬
小さな体、潤んだ大きな瞳を見ると、抱きかかえて守ってあげたくなる気持ちになる愛らしい超小型犬。しかしチワワの真の姿は、ほかの犬に負けないたくましさを持つエネルギッシュなしっかり者。チビちゃんのくせに自信満々で、気が強く、活力も旺盛。どんな大きな相手にもひるまず、向かっていく。自分の体がほかの犬に比べて小さいなんて、まったく思っていない。なぜそんな自信に満ちているのか分からないが、「小さな巨人」という言葉は、まさにチワワのためにある。
気丈だから、よく吠え、よく咬み、よその犬にも喧嘩を売る。それなのに「うちのは小さくて可愛いから、なんでも許される」と思っている勘違い甚だしいチワワ飼い主が多い。そのためよけいにチワワの評判を下げている。たしかに、自分より大きな犬に喧嘩を売っても、チワワは体格的には不利だから、相手をケガさせるより、自分の方がダメージを受ける可能性は高い。
しかし、そういう「殺される」「ケガをする」可能性があるにもかかわらず、ほかの犬に向かってワンワン吠えかかっていく愛犬を好き勝手によその犬に近寄らせたり、ノーリードで公の場所を歩かせているのは、飼い主が自分の愛犬を殺そうとしているのと同義語である。吠えつかれたよその犬が、チワワを牽制したり、テリトリー内に入った犬を反射的に攻撃するのは、犬の行動学的に当たり前。大きな犬が悪者で、小さな犬は弱者、というのは人間が当てはめた間違った見解だ。チワワも、犬から見れば、同等の種族であり、立派な犬なのである。
ほかの
トイ・プードルなどの利発な小型犬でも同じだが、概して小型犬の不良化は、明らかに人間のせい。軽い気持ちで飼ってしまった人は、甘やかしたいわけではなくて、チワワをしつける能力が飼い主にないだけかもしれない。チワワは、独立心が高く、マイペースで、自尊心の高い、したたかな賢い犬なので、決して初心者向きの犬ではない。つまり初心者には手に負えない犬なのである。
かたやチワワを理解する正しいファンシャーにとっては、とても魅力的な犬である。見かけの儚さとは裏腹な、チワワのたくましさ、強さ、賢さに気づくとますますその魅力にはまる。さらに、自分が気が向いたときだけ飼い主にべったり甘えてくるネコのような性格もまたチワワ・ファンシャーの心を鷲掴みにする。そっと飼い主の膝に乗り、目を細めて満足そうに寝ている姿の可愛いさといったらない。
チワワを正しく理解し、訓育し、きちんとトレーニングしている優秀な犬とその飼い主さんもいる。超小型犬チワワが完璧にトレーニングできていて、ピシッと機敏にコマンドに従い、お行儀よく振る舞っている姿を見ると、ものすごく感激する。……いや、つい感激してしまうのだが、本来チワワはとても聡明なデキる犬。ほかのチワワにだってできるはずだ。チワワの名誉を守るためにも、カッコイイ、聡明なチワワが増えることを願う。
チワワは、小さくてコンパクトで場所もとらず、ごはん代もそんなにかからないが、犬を飼う苦労も悦びもしっかり味わうことのできる、コストパフォーマンスの高い犬だといえるかもしれない。ちゃんとチワワを「犬」として迎えることが絶対条件。アクセサリー感覚で欲しがるような「一見さん」はお断りだ。
本来は、勇敢でしっかりした性質がチワワのあるべき姿なのだが、日本では流行期に乱繁殖されたために、体格だけでなく、性質もチワワらしからぬ犬が増加してしまった。神経質、シャイ、びびり、神経過敏などだ。ペットショップ販売のため、早期に母犬と離された社会化不足の弊害もある。いまの日本には、そうした心も体も虚弱なチワワがたくさんいるのも現実。神経質でシャイな犬は飼育が難しいのだが、社会化トレーニングを忍耐強く行っていくことにより、少しずつ改善することもできるので、気長に練習を重ねてあげてほしい。
よって、チワワの未来をきちんと考えて、犬種スタンダードや健康、性格の安定性も考えた良いブリーダーから子犬を迎えた方が、当然性格のよい健全な飼いやすい犬が手に入る確率が高い。体力のない極小犬なだけに、ショップで購入してわずか数週間で病気で死んでしまったという話もたまに聞く。そういう悲しい事件に巻き込まれないよう、子犬の入手先をよく検討することも大切である。
超小型犬でも外の散歩はもちろん必要
日本のペットショップでは、未だにチワワやトイ・プードルなどを売ろうとするときに「小型犬だから、散歩に行く必要はない」と説明している店がある。信じがたいことだが、今もまだその悪しき習慣は残っているのだ(2014年現在)。それはもはや詐欺同然の悪質なキャッチセールスに近いので、そういうショップで購入するのはお勧めできない。
確かに20畳などのカーペット敷きの広いリビングを自由に走る回ることができる住環境ならば、チワワの運動量は室内で遊ばせるだけで足りるかもしれないが、外の散歩は運動や排泄のためだけではない。最も大切な散歩の役割は「社会化」。散歩は、外の世界やほかの人間を知る大事な社会勉強の場であり、それにより心のキャパシティを広げるという効果がある。社会と隔絶された自宅内に監禁された生活では、臆病で神経質なよく吠える神経過敏な犬を育ててしまうだけなので要注意だ。
またチワワはとても好奇心の強い犬なので、いろいろ体験させてあげることによってストレスが解消でき、心の安定にもつながる。寒がりなので雪などの悪天候の中に連れ出すことは避けるべきだが、天気のいい日にはどんどん外へ連れだし、心の強い情緒の安定したチワワを育てよう。
そういう社会体験を子犬の頃から行っていればおおむね問題はないのだが、今まで外へ連れ出したこともなく幽閉生活をさせていたのに、いきなり電車に乗って都会のドッグカフェへ行くとか、大勢の犬の集まるドッグランに投げ込むというのは、あまりに犬にとって過酷である。心が大らかに育っていればよいが、外の世界を知らずにシャイな性格なのに、いきなり知らないことを体験すると犬は恐怖心でいっぱいになってしまう。体調を崩して下痢になったりもする。ひどいときは、精神的ダメージが大きすぎてパニックになり、低血糖発作を起こし、死の危険すらあるから、安易に考えてはいけない。
社会化をさせることは大切。でも、それはいきなりやるものではない。まずは近所から少しずつ練習をさせる。キャパシティを大幅に超えない範囲で、ゆっくりいろいろな種類の経験を増やしていこう。最も大事なことは「ハッピーな経験を積むこと」。「コワイ」「痛い」(他の犬にぶつかられた、咬まれた)のようなマイナスの体験は逆効果だ。「おでかけは楽しい」「よその人もいい人だ」とチワワが感じるように練習を繰り返し、徐々に遠出したり、ドッグランの外からまず眺めたりをさせつつ、慣らしていくとよい。
超小型犬だからこそ、子供や老人の相手は向かない
チワワは、ちょっとしたことでも興奮したり腹を立てたりする癇癪持ちなので、遊び盛りの小さな子供のいる家庭や、人の出入りが激しい落ち着かない住環境だと、神経過敏な性質が余計に強化されやすい。できるだけ平穏な環境で暮らした方が、穏やかなチワワになる。
また、子供がキャーキャーと追いかけたりすると、チワワも恐怖心から咬むという防衛本能を発揮せざるを得ない。チワワにとっては、幼児であっても大きな動物に見えるのだから無理もない。しかも、ある意味子供ほど信用ならない動物はいない。チワワだって必死なのだ。かたや咬む行為により、恐怖から逃れられたという経験を積むと、犬は頭がいいので、今度から咬んで自分の要求を通せばいいんだと気づいてしまう。そうして「咬むチワワ」がつくられる。やはり小さな子供とチワワの同居は少々無理がある。咬む行為や興奮性が助長されない環境や育て方を整えてあげることがお互いのためだ。
ぬいぐるみ感覚で子供が抱っこしてチワワを落下させ、骨折などのケガをさせることもある。首の骨でも折ったら致命傷だ。さらに、頭部の大泉門(頭のてっぺんの骨)がくっつかずに開いたままの犬もいるので、頭部を刺激するのはこれまた致命傷になる。チワワのような極小犬を、小さいからといって子供の相手に選ぶのはやはりよくない。
一方、高齢者のコンパニオンとしても推薦しにくい。ちょこまかと小回りが利き、すばしこいので、お年寄りには捕まえられないことも多い。小さすぎるうえに素早いので、腰を曲げて追いかけっこ状態になると、けっこうきつい。「大型犬は(引っ張る力も強く)大変だから、小さい犬がいい」と超小型犬や小型犬を高齢者の伴侶に望む傾向があるが、極小犬には極小犬ゆえの苦労がある。体格や俊敏さを考えると、
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルや
ビーグル、バセット・ハウンド、
ゴールデン・レトリーバーなどの、温厚なのんびり屋さんの方が、サイズが大きくても意外と扱いやすい気がする。
また超小型犬ゆえにお年寄りは、ついつい甘やかしたり人間の食べ物を与えたりしがち。その気持ちも分からなくもないが、実は小型愛玩犬の方が相対的に気丈でワガママな犬が多いので、甘やかしているうちに小さな暴君になって、飼い主を召使い扱いすることがある。そうなると、吠えて要求したり、盗み食いしたり、呼んでも無視したり、もっと不良になると飼い主やお客様を咬んだりと、好き放題するようになるので要注意。チワワは小さくても「犬は犬」なうえ、大型犬の
ラブラドール・レトリーバーのように従順で温和でフレンドリーな犬ではない。はるかに「獣」らしく、自分のメリットを主張するしっかり者。小さいから飼いやすい、と思うのは、チワワを軽視しすぎである。
心は強いが、体はガラスのように耐久性がない
抱っこで落として骨折させるなどは前述したが、いかんせん小さいので身体的には壊れやすい。ちょっとした衝撃が脱臼や骨折につながるので、ベッドからの飛び降りや階段の上り下りはさせないようにする。階段や吹き抜け、ベランダからの落下事故にも十分注意。柵の隙間をすり抜けて落ちないように、住環境の危険箇所の点検をすること。
また、家庭内のドアや、スライド式のクルマのドアに挟まれて死亡するという痛ましい事件も起きている。さらには、掘りごたつの中で死んでいたとか、飼い主が座布団で座った瞬間につぶしてしまったなどの悲しい事件も聞く。極小型犬だけに、ほかの犬種では聞かない事故が起きている。うっかりミスも許されないので、十分すぎるほどの気配りをしたい。飼い主の後ろを愛らしくちょこちょことついてくることが多いので、チワワが足元にいないか、背後にいないか、よく確認するのを習慣にしよう。そう考えると、あまり大雑把な、がさつな動きをする人、気配りができない注意力散漫な人には、チワワの安全管理は難しいかもしれない。
温度変化にも敏感で、暑さにも寒さにも弱い。とくにメキシコ原産のせいか、寒さにはとても弱い。スムースヘアのチワワはもちろんだが、ロングヘアでもそれほどアンダーコートがなく寒がりなので、温かい室温管理とぬくぬくのベッドが必要。冬の散歩は防寒着を用意するのがいいかもしれない。
一方、夏は今度は冷房で冷えすぎてしまうことがある。冷気は低いところに溜まるものだが、体高の低いチワワの床に近い位置は、冷気に包まれている場合がある。背の高い人間にとっては快適温度でも、小さなチワワにとっては冷蔵庫のように感じるかもしれない。夏でも愛犬の様子をよく観察して、チワワが寒そうにしていないか気をつけよう。
さらに小さいだけに、体力や持久力も乏しい。大型犬なら数日様子を見ても大丈夫そうな下痢でも、チワワの場合はすぐに急変してしまう可能性があるから、動物病院には早めに行くようにした方がよい。
極小犬なので、低血糖になりやすい
性格的にはしっかり者なので、分離不安になりにくいから留守番もできる犬ではある。しかし超小型犬のため、一度に食べる量が少ないし、食が細いことも多い。そのため空腹から低血糖を起こしやすい。低血糖とは、血中のブドウ糖が不足することにより、だんだん脳の機能が低下して意識レベルが下がり、ひどくなると昏睡状態から死に至るというものだ。
とくに子犬のときは、ほかの大型犬種でもごはんの回数を1日3回に分けて与えるものだが、チワワは1回に少量しか食べられないので、もっと回数を増やさないといけない。1歳くらいの成犬になるまでは注意が必要なので、それまでの期間、朝から夜まで飼い主が不在で、チワワを留守番させて空腹時間が長くなるのはよろしくない。1人暮らしの会社員や共働きの家庭では、チワワを子犬から飼うのは難しい。どうしてもチワワと暮らしたいのなら、1日2食で大丈夫な成犬になるまでブリーダーの元で育ててもらうか、犬の保育園のような施設に毎日預けるなどの方法を検討する。
毛の手入れは簡単
滑毛のスムースコートはもちろん、ロングコートもアンダーコート(下毛)がほとんどないし、なにしろ体表面積が小さいからブラッシングもすぐ終わる。ただロングコートの犬は、絹糸状のロングヘアが毛玉になることはあるので、週2回ほどはブラシをかけてあげよう。スムースヘアも、皮膚のチェックや皮膚の血行促進をかねて豚毛ブラシなどでたまにブラッシングしてあげるとよい。
トリミング犬種ではないので、ロングコートの犬でも、自宅でシャンプーができる。ただしロングコートの場合は、足の裏の毛が伸びすぎると床で滑って転倒して脱臼や骨折などをしかねないので、定期的にチェックし、カットする。また、シャンプーしたあとで濡れたままにして放置すると、体力を奪われてしまうので、きちんと乾かしてあげること。足の裏のカットやドライヤーは難しい作業ではないが、プロのトリマーに依頼する家庭も少なくない。