図鑑
ビション・フリーゼ
爆発したおむすび型アフロがキュート。
見た目の愛らしさどおり、性格もまるいよい子
英名
Bichon Frise
原産国名
Bichon à poil frisé
FCIグルーピング
9G 愛玩犬
FCI-No.
215
サイズ
原産国
特徴
歴史
ビション・フリーゼは「ヨーロッパ最古の犬種に属する」とも言われるが、犬種改良されて、ショードッグとして華々しく人気が出たのは近代のこと。どれくらい古いかも定かでないが、
マルチーズ の歴史などとも照らし合わせると、その歴史は紀元前に遡るだろうと思われる。そのためかはっきりしていない部分も多く、いろいろな説がある。有力だと思われるのは、フランスにバルビーというヨーロッパのすべてのウォーター・ドッグの祖先であろうとされる体重25kgほどの巻き毛の犬がいて、そうした犬をベースに変化していったいう説だ。
ちなみに、ビション・フリーゼ(フランス・ベルギー原産)、マルチーズ(中央地中海沿岸地域原産)、ボロニーズ(イタリア原産)、ハバニーズ(地中海西岸原産)、コトン・ド・テュレアール(マダガスカル原産)はみなビション系の犬と言われ、どれも白い被毛の小型犬で、性格も基本はよく似ている。マルチーズに次いで、ビション・フリーゼはたまに日本でもいるけれど、あとの3犬種は日本でお見かけすることはほとんどないレアな犬種だ。
これらの犬たちは地中海を中心に、船員のペットや貴婦人の船旅のお伴として海を渡り、その先々の島で子孫を残していったのだろうか。はっきりとした確証はないが、外見上も性格上も、これらの犬たちは親戚筋だと想定するのが自然だろう。
ビション・フリーゼは、犬種スタンダードでの原産国はフランス/ベルギーとなっているが、それは小型愛玩犬として16世紀に犬種改良をして固定化させた国と考えるのが妥当。もともとビション・フリーゼは、アフリカ大陸の左上(北西)のモロッコや西サハラ沖100kmほどの大西洋に浮かぶスペイン領のカナリア諸島にいた犬。当時は、もう少しサイズが大きかったと思われる。
カナリア諸島は7つの群島からなるが、そのうちの一つにテネリフェ島という島がある。どうやらそこが本犬種の起源。ビション・フリーゼは別名ビション・テネリフェ、テネリフェ・ドッグ、カナリー・アイランド・ラップ・ドッグなどとも呼ばれていた。
当時からすでに古代ローマ時代の貴婦人のアイドルだったが、16世紀のフランスで小型化に成功したと犬種スタンダードにある。資料には「貴婦人の間で、香水で洗う白い抱き犬として流行した」とあり、このほわほわの白い犬はとてもハイソサエティーな存在だったようだ。スペインやフランスの貴族の肖像画にもよく登場している。また満足な暖房もなかった時代に、手足を温め、ベッドを温めるという役目もあり、「テネリフェの小犬」と呼ばれて、可愛がられていた。
しかし19世紀末には流行が去り、サーカスや祭りの見せ物とされていた不遇な時代もあったという。でも1933年頃に、フランスとベルギーの愛好家たちが再建に力を尽くした。
第二次大戦後、人気がゆっくり復活。1950年代後半にアメリカでブリーダーが繁殖に力を入れ始めた。この頃、あのアフロヘアのような独創的なカットを開発したのもアメリカ。これに工夫が加えられ、現在の特徴的なショー・カットが誕生し、ビション・フリーゼは世界的に注目されることとなった。アメリカのAKC(アメリカン・ケネルクラブ)とイギリスのKC(ケネルクラブ)に公認されたのは1970年代。比較的最近の話しである。
日本に入ってきたのは、80年代。白いほわほわの毛の手入れをするのは手間とお金がかかるが、素直でしつけしやすい性格だし、ほどよいサイズであり、家庭犬として優良な実力を備えている。日本でももっと愛好家が増えてもいいように思える存在だ。
外見
フランス語で、ビションは「飾る」、フリーゼとは「縮れた毛」の意味。もじゃもじゃの巻き毛をきれいにコーミングすると、まさに綿菓子のようなほわほわの毛になる。しかも、頭部を丸く、あるいはおにぎり型に、ほわほわのパウダーパフ(おしろいたたき)のようにカットするのがビション・フリーゼらしさ。日本でも一時「アフロ犬」として有名になった。とくにショードッグの、頭でっかちぶりは実に見事。なかなか家庭犬であそこまで白く美しくボリューミーに管理することは大変ではあるが、ファンシャーからすれば、ビション・フリーゼたるもの、あのほわほわの大きな頭部を保ってこそ、である。ビション・フリーゼは、マルチーズでもないし、
トイ・プードル でもないという自負がある。
体高は、上限30cm。小型であることが望ましいとされる。犬種スタンダードに体重表記はないが、おおよそ7〜12kgほど。日本でよく見かけるのは、10kg未満の子が多い。ほわほわの毛で覆われているので、見た目では重く思えるが、抱きあげると思ったより軽い。マルチーズなどの3kg程度の犬に比べれば、それなりにボリュームはあるけれど、大きすぎず小さすぎずの絶妙な存在感がある。このくらいの大きさの愛らしい犬は、意外といないので、そういう点でもビション・フリーゼは他犬種にない魅力がある。
被毛は、柔らかく細い絹糸状。7〜10cmの長さがある。ドレッドヘアのような縄状にはならず、マルチーズのような直滑毛でもない。柔らかい絹毛で、からみやすく、毛玉もできやすい。アンダーコートも豊富なので、上の方はよくても根元付近が毛玉だらけになり、フェルト状にぎっしりと詰まってしまっている犬もいる。毎日、スリッカーブラシで整え、からみかかっている毛をやさしくコームでほぐすことが欠かせない。
また目の下が変色する涙やけになる犬も少なくない。雑菌が増えないように、こまめに拭き取る作業も必要だし、状況に応じて動物病院で診てもらったり、食事療法をして体質改善を要する場合もある。
毛が長くなりすぎても毛玉ができやすくなる。また汚れが付着していると、そこからまた毛玉ができやすい。白い毛は汚れが目立つので、シャンプーは2〜3週間に一度くらい。毛が絡んだまま濡らすとますます毛玉になるので、シャンプー前にはよく櫛ですくこと。そして1か月くらいに一度カットをして、頭部や、全身の毛を整える。特別なカットの技術を要する犬なので、ビション・フリーゼに慣れたトリミング・ショップを探すことも必要。毛量も多いし、サイズも大きめの小型犬なので、ほかの小型犬よりはトリミング代が高め。1万円を超えることも多い。
毛色は純白。でも白い毛は、涙やオシッコなどで汚れやすい。清潔感のある美しい白さをキープするのがやはり大変だ。しかもとても快活で、好奇心が強い陽気な性格な犬なので、お外の散歩は大好きである。汚れるのがイヤだからと、部屋に幽閉するような生活を強いるのであれば、ビション・フリーゼを飼うのは諦めよう。毎日のコーミング、目や口の周り、お尻周りをこまめに拭き取る作業、こまめなシャンプーとカットなど、日々の毛の手入れが楽しみという人向き。
目、眼瞼、鼻、口角は黒であることが絶対条件で、爪も黒が理想。明るい目の色、ピンクの鼻、肉色の唇は失格となる。巻き込んだ尾や螺旋状にねじれた尾も失格。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
レッグペルテス症
若年性白内障
角膜ジストロフィー
先天性
その他
魅力的なところ
日本人が好みやすい清潔そうな白い犬。
元気で人なつこく楽しい性格。小型犬にありがちな過敏性・攻撃性が低い。
素直で、反抗的ではないから、ビギナーにも扱いやすい。
陽気で明るい性格。お散歩のお伴に最適。
ほかの小型犬ほどチャカチャカした動きではないので、高齢者との相性もいい。
トイレのしつけが入りやすいとのこと。
何事にも中庸で飼いやすい。
小さすぎず、大きすぎずの適度な大きさで扱いやすい。
遺伝性・先天性の病気がそれほど多くない。
過敏でもなく、警戒咆哮も少ない犬なので、マンションにも向いている。
大変なところ
清潔な白さをキープする毛の手入れが大変。毛もからみやすい。
トリミングのコストがけっこう高額。
ポピュラーではないので、独特なカットの上手なトリミング・ショップを探す必要あり。
食後や排泄後の拭き取り作業は手間がかかる。
涙やけ対策の拭き取りや、目の周りの毛のメンテナンスも必要。
子供がパッと手を出したりすると咬む可能性はある。幼児のいる家庭は要検討。
それなりのサイズでそれなりの体力がある。散歩はしっかり行く。
まとめ
小型愛玩犬だけど過敏性・攻撃性が低い、素直で扱いやすい犬
真っ白いほわほわの愛らしさを持つ、大きすぎず小さすぎずの適度な存在感のある犬。ショークリップにしている頭に大きな綿菓子をかぶったような姿は、本当に可愛い。歩き方、走り方も軽快でお茶目。
小型愛玩犬の愛らしさを持ちながら、多くの小型犬にありがちな勝ち気なきかん坊ぶりや、せわしさがない。毛の白さを美しくキープするのは大変だが、素直でおおらかな性格で、性質的・行動的には飼いやすい。臆病さや過敏さは感じないし、テリアの仲間のような激情型でもないので、ビギナーや、しっかりしつける自信がない女性や高齢者にも扱いやすい部類といえる。
ただし、犬種本来の性質では飼いやすい犬と言えるのだが、性格形成は、遺伝半分・環境半分である。まずは、親犬が神経過敏や臆病でないかを確認しよう。そのためにはビション・フリーゼ・ファンシャーのブリーダーの元から譲り受けるのがベスト。また子犬期の社会化の経験の具合によっても、性格や情緒の安定ぶりは左右される。やはりそういうこともちゃんと考えて子育て(犬育て)をしているブリーダーを探すことが大切だ。
そうした良心的かつ、その犬種をこよなく愛するプロならば、毛の手入れについていろいろアドバイスをしてくれたり、よいトリマーの情報なども教えてくれるだろう。日本ではまだ珍しい犬種だけに、犬の実家(ブリーダー)は大事な情報源であり、飼い方の師匠。よいブリーダー探しをまず頑張ることがビションへの道の最初の一歩である。
また遺伝性疾患は他犬種に比べて少ない健康優良犬といえるが、レッグペルテス症という骨関節の病気と、若年性白内障、角膜ジストロフィーという目の病気はある。比較的丈夫で長生きできる犬種でもあるので、なるべく元気に長く健康体でいてもらえるよう、遺伝性疾患の淘汰のために努力しているブリーダーの元から子犬を迎えた方が安心である。
ビション・フリーゼは、ぬいぐるみではない
快活で、人なつこく、飼い主家族と行動を共にするのが大好きな犬なので、犬の扱い方を説明すれば理解してくれる小学生高学年くらいになれば、ビション・フリーゼと子供との同居は可能。誘えば喜んで遊びに応じてくれるし、芸を教えればそつなく覚える物覚えのいい犬でもある。子供が散歩しても制御ができないような力持ちでもないし、ほかの犬に喧嘩を売るタイプでもないから、室内・屋外問わず子供のよき遊び相手、よき兄弟となってくれるだろう。
ただし、いくら小型犬とはいえ、散歩中は、自動車や踏切など、危険を回避しないといけない場所も多いので、くれぐれも事故のないよう、散歩は子供に全面的に任せるのではなく、親が安全を監視した方が安心。また子犬を迎えたら、親子と犬と一緒にパピー教室に参加して、犬との付き合い方やトレーニングの仕方を習っておくとよい。
子供が犬への接し方を誤ると、追い詰められて恐怖のあまりに吠えたり、咬んでしまう例はある。小型犬の気持ちをよく想像して、接することが大事だ。それができないような、幼児や小学生低学年のうちは、もう少し彼らの成長を待ってから、犬を迎えた方がお互いのためによい。
また、犬をぬいぐるみ扱いするのはよろしくない。抱っこされるというのは犬にとっては「拘束」と感じることもあり、不安を助長することでもある。守ってあげているつもりでも、犬にストレスを与える動作になりかねないことを覚えておく。やはりいくら小型愛玩犬でも、犬は犬として扱い、心も体も健全に育ててあげることが大切だ。
もちろん、外の散歩をしない犬は、脳に刺激も少ない生活ゆえ心も健全に育たないし、足腰の筋肉もつかない。ストレスも発散できない。そういう生活をしていれば、素直で飼いやすいはずのビション・フリーゼでも、うっぷんが溜まり、どんな問題行動を引き起こすかはわからない。正しく犬らしい生活を与えてあげることは何よりも大事である。
ごく当たり前のことなのだが、とにかくビション・フリーゼはぬいぐるみではない。そして12年か15年か、さらに長く愛をいっぱい振りまいてくれる可愛い家族である。ちゃんと犬として正しく飼養する覚悟と情報と経済力を備えてから迎えよう。
白いふわふわのキュートな姿を保つために、頑張れる人向き
ビション・フリーゼは、飼いやすい犬種なんだけれども、純白の被毛の手入れを一生涯することになる犬。毛は絡みやすいので毎日コーミングが必須。シャンプーも2〜3週おき。トリミングは月1回。
涙やけで流涙症になりやすいので、目元はこまめに拭きとる。ごはんや水飲みのあとは、口の周りの食べ残しや水分を拭きとる。オシッコやウンチが長い被毛についたら拭きとる。とにかく拭き取り作業を怠ると、汚れに雑菌がわき、毛が黄色や茶色に変色していくので、清潔を保つためにちょくちょく拭いてあげることが大切。
ついでに言うと、マルチーズやトイ・プードルよりもサイズが大きいし、アンダーコートも厚いので、それだけコーミングの手間や時間がかかるし、トリミング代も高くなる。手間や時間やお金がかけられない人、毛の手入れに関心が持てない人がこの犬種を選ぶのは正直無理。
やはり毛の手入れが好き、誰かのお世話をするのが大好きという母性が強いタイプの人が、ビション・フリーゼの飼い主に向いている。この特別にキュートな容姿と白さに惚れ込み、これをキープすることが自分の悦びとなる人がいい。手をかければかけるほど、ビションは可愛さが爆発するような自慢の犬となる。
ちなみに、子犬を迎えたばかりの頃は、まだこどもの毛質と長さなのでそう絡まないのだが、生後8か月前後に成犬の毛に変わってくる。その頃、被毛のもつれがひどくなる。もつれてから焦って、コーミングしようと思っても、犬も痛いし、櫛に慣れていないので嫌がる。一生毛の手入れが必要な犬なのに、グルーミングが嫌いな子になってしまうとあとから大変だ。まだ子犬の毛でそうグルーミングが必要じゃないときから、「グルーミング・タイムは楽しい時間」と犬が覚えるように毎日ちょっとずつ練習を繰り返すとよい。
このページ情報は,2014/11/12時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
掲載されている内容/データに間違いを見つけたら?