図鑑
ブリュッセル・グリフォン
映画「スターウォーズ」のキャラクターのモデルという噂も!?
パグとテリアの魅力が同時に味わえるカワイコちゃん
英名
Brussels Griffon
原産国名
Griffon bruxellois
FCIグルーピング
9G 愛玩犬
FCI-No.
80
サイズ
原産国
特徴
歴史
まず、この犬の犬種名や分け方は、国によって違っており、混乱しやすい。整理すると、3つの犬がいる。
ブリッセル・グリフォン (FCI-No. 80)……テリアのような粗毛/レッドという赤っぽい色
ベルジアン・グリフォン (FCI-No. 81)……テリアのような粗毛/ブラックやブラック・タンの黒っぽい色
プチ・バラバンソン (FCI-No. 82)……パグのような滑毛(スムースヘア)/赤っぽい色、黒っぽい色どちらもいる
FCI(国際畜犬連盟)やそれに準じているJKC(ジャパン・ケネルクラブ)では、FCIナンバーがそれぞれ違うことから分かるように別々の犬種として扱っているが、イギリスやアメリカなどでは3つを1犬種として扱っている。なにしろ、ブリュッセル・グリフォン(赤)とベルジアン・グリフォン(黒)は色違いなだけ。そして、2つのグリフォン(粗毛)とプチ・バラバンソン(滑毛)は、毛のタイプが違うだけなのだ。
ちなみにベルジアン・シェパードの犬種の場合は反対に、AKC(アメリカン・ケネルクラブ)ではグローネンダール(黒/長毛)、
タービュレン (茶/長毛)、マリノア(茶/短毛)、ラケノア(茶/粗毛)と4犬種と分けているのに対し、FCIやJKCではベルジアン・シェパードという1犬種のくくりにしている。犬種によって分類が違うので難しい。でも、たまたまなんだろうが、グリフォンもベルジアン・シェパードもベルギー原産の犬というのがちょっと興味深い。
追記のついでに記しておくと,ベルジアン・シェパードは、原則としてタービュレンとグローネンダールの交配は禁止されている。それでもまれに、茶色い両親犬から黒い子犬が生まれることがあるそうだ。一方、2種のグリフォンとプチ・バラバンソンの場合は、例えば赤いブリッセル・グリフォンの両親犬から、黒いベルジアン・グリフォンやプチ・バラバンソンが産まれることがよくある。つまり、同じ親から産まれた同胎の兄弟犬なのに、血統書に書かれる犬種名が変わる。かなりややこしい。
ブリュッセル・グリフォンはその歴史上、いろいろな国のさまざまな犬種が、改良の過程で掛け合わされた。元はブリュッセル(ベルギーの首都)周辺にいた、小型で粗毛の、今はもういない「Smousje」という土地犬を祖先にしている。
その犬に、ドイツの粗毛のアーフェン・ピンシャー、
ヨークシャー・テリア 、19世紀にキング・チャールズ・スパニエル、パグの血を入れ、昔はアーフェン・ピンシャーに似た顔つきだったのに、現在の鼻ペちゃの顔ができあがったという説が有力。パグが改良に使われたからスムースヘアのプチ・バラバンソンが登場し、そしてルビー色(濃い栗赤色)単色のキング・チャールズ・スパニエルの血が入っているから、ブラック・タンの色やブリュッセル・グリフォンの赤みのある単色が生まれたのだろう。
グリフォンの祖先犬とされる「Smousje」は、小型で粗毛という外貌をしていたということなので、いわゆるテリアの親戚と思われる。ベルギーの都市部で、テリアと同じようにネズミ退治の仕事をしており、とくに馬小屋にはびこる害獣駆除に活躍していた。また今で言う“タクシー”である辻馬車の御者のコンパニオンとして可愛がられていたようで、御者のとなりにちょこんと座り、街の人に愛嬌を振りまいていたとの記述もある。
1870年代にベルギーの女王様のヘンリエッタ・マリアのお気に入りとなったことで、庶民に愛されていたブリュッセル・グリフォンが急に王室のアイドルへと転身。上流社会で愛されるようになり、小型化する改良が進んだ。
グリフォンの名の由来は、諸説ある。ヨーロッパでは、もしゃもしゃのワイヤーヘアの猟犬のことを総じてグリフォンと呼び、日本で見かけることができるのは、プチ・バセット・グリフォン・バンデーン(フランス原産)などだ。
何人かの犬学者によると、Greffierとはフランス語でもともと王家の秘書を指す言葉。彼らが飼っていた白いブラッド・ハウンド×イタリアン・ブラッケ(ハウンドやポインターのような形の猟犬)の犬が、歴史の流れとともにGreffierからGriffon(グリフォン)に変わったとされる。この説がよく知られている。
かたや、とあるサイト(http://jagd.de/p/magazin/jagdhunde?id=20051&cmd=Anzeigen)によると、スペイン語のgrifoは「ぼさぼさの髪、くしゃくしゃでもつれた髪をした者」を指し、これがグリフォンの語源の可能性もあるという。イメージ的には想像しやすい。たしかにグリフォン達はみなぼさぼさでくしゃくしゃのワイヤーヘアだ。
そのほか、フランス語でgriffeは「爪」を意味し、転じてgriffonerは「いたずら書き」、そしてgriffenは「身なりの汚いがさつな奴」を意味するらしい。これもなんとなく想像の範疇である。はたして本当の名前の由来がなんだったのか、興味は尽きない。
日本で見かけるようになったのは、おそらく平成に入ってから。映画「スター・ウォーズ」のキャラクターのモデルだという噂も聞こえ、一部に熱狂的な愛好家がいる。2012年のJKC登録頭数では、136犬種中54位。昔からいる犬種や、公園で遠くからでもそれと分かる大型犬種ほど目立たないかもしれないが、着実にこっそり日本に増えている。ちなみにベルジアン・グリフォンは75位、プチ・ブラバンソンは103位である。
外見
体重3.5〜6kgの小型犬。体高の犬種スタンダード表記はないが、おおよそ20cm程度。
チワワ の体高は15〜23cmほどなので、グリフォンの体高はチワワ並みに小さい。ただしチワワの標準体重は1〜2kgなので、グリフォンは背こそ低いが、チワワよりボリュームがある。
ちなみにパグは体重6〜8kg、体高は25〜28cmなので、グリフォンのスムースヘアであるプチ・バランソンは、写真だけで見ると少し首や足の長めのパグに見える犬だ。しかし実際に目の前で見ると、全体的なボリューム感としてはパグよりもひとまわり小さい。
パグや
シー・ズー より小さく、ミニチュア・シュナウザーよりかなり小さく、ジャック・ラッセル・テリアと体重は同じくらいだが背は小さい。ブリッセル・グリフォンは、長い歴史の中、ヨーロッパのいろいろな犬の血が入っているせいか、テリアにもシュナウザーにも中国原産の鼻のつぶれた犬にも属さぬ特殊なサイズであり、それも魅力の1つといえる。
体高と体長は1:1が望ましく、体つきはほぼスクエア型。超小型犬でありながら割とがっしりしており、骨も丈夫そう。ヨーキーや
パピヨン のような華奢な骨ではない。
頭部が最も特徴的で印象的。体に比べて頭がかなり大きく、顔は平面的で、目の付き方も人間的。「人間のような表情をする」と言われ、それがファンシャーが愛すべき最大のツボであろう。鼻の上部が目の下のラインよりも下にあるのは、表情が乏しく見え、重大な欠点とされる。この犬の最大の魅力は、表情豊かな、人間くさい顔なのかもしれない。
耳は、アメリカや日本のショードッグは未だに断耳され、小さく尖った直立耳にされるが、断耳しない耳は、半垂れ耳。日本では、愛くるしい半垂れ耳をしているグリフォンが多い。
尾も同様に、3分の1の長さを残して断尾されている個体もいるが、断尾しなければ、すくっと起立したしっぽになる。背中に触れたり、カールすることはない。生まれつき短い尾、曲がった尾、背上にカールした尾は、スタンダード上の重大な欠点となる。
毛の色は、ブリュッセル・グリフォンはレッド(赤みがかった色)。頭部の飾り毛には、わずかなブラックなら入ってもいい。でも全体が黒っぽい個体はブリュッセル・グリフォンではなく、ベルジアン・グリフォンとなる。
被毛は、下毛のある粗剛毛。生まれつき硬い毛。わずかにウェービーであるが、カールはしていない。柔らかいシルキーな毛(絹糸状)やウーリーな毛(羊毛状)は重大な欠点となる。
トリミング犬種なので、原則的に1〜2か月に一度、プロのトリマーに依頼する。顎ひげと口ひげを残すのがショークリップで、グリフォンらしい顔になる。ただペットクリップはこの限りではなく、顎ひげのない、丸い顔にカットしている犬もいる。トリマー代は、ペットクリップで5000円くらいから。ショー用に、テリアと同じくプラッキングなどして毛を抜き取る技術でトリミングするときは、1万円以上かかることが多い。
ただ下毛はそれほど多くはないし、硬い毛なのでからみやすいこともない。ブラッシングは2日おきくらいでよい。テリアのような毛なので、抜け毛が多いわけでもないので、部屋が毛だらけになる心配も少ない。しかし、鼻ぺちゃ犬なので、目や口の周りのしわは、湿っていて臭くなりがち。ウエットティッシュや綿棒などで、こまめに拭き取りをしてあげよう。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
膝蓋骨脱臼(パテラ)
股関節形成不全
進行性網膜萎縮
角膜ジストロフィー
先天性
その他
魅力的なところ
独特の顔つきと表情が人間的で、たまらなく可愛い。
小ぶりだが華奢ではない、他犬種にないサイズ。
ほかの小型愛玩犬とは違う、独特の個性がある。
おとなしく、ほんわかした性質の犬がいる一方で、テリア的に活発な子もいる。
気まぐれなところもあるが、反抗的ではなく、ビギナーでも扱いやすいかも。
活発な犬も多いが、サイズが小さいので、散歩の距離はそれほど多くなくて大丈夫。
喜びの表現が可愛い。お散歩も楽しそうで、散歩のお伴に最適。
超小型犬なので公共交通移動ができる。ただし夏場の飛行機はNG。
大変なところ
気まぐれで頑固でマイペースなので、しつけは根気が必要かも。
テリア気質の強い子はけっこうヤンチャ。イタズラ好き。吠え癖がある子もいる。
鼻ぺちゃ犬な超小型犬なので、暑さに弱い。熱中症に要注意。
テリアのような毛はあるが、鼻ぺちゃ犬は寒さに弱い。個体に応じて寒さ対策も必要。
癒し系な見た目とは裏腹に、ものすごいスピードで逃げることもある。
性格には血統差が大きい模様。好みのタイプを探す努力が必要。
難産や新生児致死率が高い。そのため、子犬の値段が高額になりがち。
まとめ
ユニークな風貌がファンシャーをメロメロに
パグでもない、テリアでもない、独特の個性がある犬。
フレンチ・ブルドッグ やパグが好きな人が2頭目に迎えたという話も聞く。短頭種は、ヘアメイクアーティストやデザイナー、カフェのオーナーなど「おしゃれな職業」の人に愛されるケースが割と多いが、ブリュッセル・グリフォンもちょっとおしゃれ系の大人に好まれる傾向にある。やはりこの個性的な風貌に惹かれてしまうのだろう。
また、「スター・ウォーズ」のあのキャラに似ているとのことで、ファンに注目を浴びている犬である。ただ、そのような記述の公式発表は見当たらないので、本当にブリュッセル・グリフォンが、例のキャラクターのモデルなのかどうかはよく分からない。でもたしかに雰囲気は似ている。個性的な毛むくじゃらの顔、そして人間のように平面的な顔と離れた目などが表情豊かで、想像力をかきたててくれる。
まだ日本で歴史が浅い。国内の遺伝子も乏しいので、ブリーダー選びは慎重に
まだ日本では珍しい犬種だし、歴史も浅いので、国内の遺伝子プールも広くない。そのためか、外国の文献では「活発で、よく吠える、遊び好きな犬」と書かれているのに、日本にいる犬の中には、おっとりさんもいるし、日本のサイトでは「無駄吠えは一切ない」と書かれているものもある。血統により、活動性、過敏性、警戒咆哮、頑固さなどの差が大きいようだ。
たしかに昔の仕事を考えればテリア気質の犬なので、活発で、よく吠えて、遊び好きというのはそのとおりだろう。かたや19世紀以降のおっとりしていてほとんど吠えないパグやキング・チャールズ・スパニエルらの気質が強い系統ならば、番犬の役割を期待するのは無理だ。対極ともいえる個性が混じり合っている犬なので、「この犬は吠えません。マンションでも問題になりません。お年寄りが飼っても大丈夫です」とも「この犬はとても活発で、元気で、アウトドアに連れていっても喜びます。番犬としても役に立ちます」とも断言ができない。
やはりグリフォンを心から愛し、いい犬を日本で増やしていこうという心意気のある真面目なブリーダーを探すことをオススメする。両親犬に会わせてくれたり、その血統の真実の姿や飼育方法のアドバイスや毛の手入れ法などを教えてくれるだろう。
さらに本犬種は、改良を重ねるうちに、繁殖に問題を多く抱えることとなった。難産が多く、新生児致死率が高い犬種である。子犬が正常に生まれにくいために、もれなく犬の値段が高めになることが多い。
でもだからといって、価格が安いということでインターネット販売やショップ販売に飛びつくのは、あまりにリスキーである。ただでさえ超小型犬・短頭種というのは、難産になりやすい。それなのに値段が安いというのはどういうことか。その子犬は本当に健康なのか、長生きできる子なのか、入念に調べることが不可欠だ。
コーミングは週2〜3回行い、愛らしさをキープ
粗くて硬いラフヘアーなので、それほどからみやすくはないし、ホコリを吸い寄せるタイプの毛ではない。でも一応下毛もあるから、2日おきくらいにピンブラシかスリッカーでとかそう。また、口の周りの顎ひげや口ひげを伸ばしている場合は、できればそこだけは毎日櫛でとかして整えよう。ひげには、食べ物や水などの汚れも付着しやすいので、こまめに拭いて清潔さを保つことも大切だ。
また、鼻の周りに細かい皺がある。湿っているので臭くなったり、菌が繁殖することもある。こまめにウェットティッシュや綿棒などで拭いてあげるとよい。さらに涙やけしないように、目の下の涙もこまめに拭く。
このページ情報は,2014/10/30時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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