図鑑
ダックスフント
日本では愛玩犬扱いだが、ドイツでは現役の実猟犬。
タフで運動欲求量も声も大きい
英名
Dachshund (ダックスフンド)
原産国名
Dachshund、Dackel、Teckel
FCIグルーピング
4G ダックスフント
FCI-No.
148
サイズ
原産国
特徴
歴史
Dachshundというスペリングは、英語読みで「ダックスフンド」、ドイツ語読みでは「ダックスフント」。ドイツ語で、ダックス=アナグマ、フント=犬、を意味する。ドイツでは「Dackel(ダッケル)」「Teckel(テッケル)」の愛称でも呼ばれる。とくに「テッケル」は猟師が使う呼び名だ。
日本では、ミニチュア・ダックスフントが流行したのも記憶に新しい。JKCのWebサイトで原稿執筆時点(2014年10月)で確認できる
公開データ によると、ダックスフントは1999〜2007年まで犬籍登録頭数(つまり子犬が産まれて血統書を発行した数)が連続して1位。2008年に
プードル にトップの座を明け渡したが、その後の2008〜2013年はずっと3位にとどまり、やはりいまも日本では多く繁殖されている。ちなみに2位は
チワワ だ。
1999年のときの2位は
シー・ズー で、3位は
ゴールデン・レトリーバー 、4位は
ラブラドール・レトリーバー だったので、当時はまだ大型犬の人気があったが、2000年代はミニチュア・ダックス、チワワ、プードルが不動の人気3犬種。しかし残念ながら同時に、繁殖業者による多数の繁殖犬の遺棄や、一般飼い主に捨てられることも多い犬種でもある。
さて、いまの日本ではミニチュア・ダックスばかりがあふれているので、それ以外のサイズを知らない人もいるかもしれないので整理したい。
ダックスフントには3サイズある。サイズは超小型犬〜こぶりの中型犬と幅があるが、同一犬種である。
・スタンダード:胸囲35cm以上。体重上限9kg
・ミニチュア:胸囲30〜35cm(生後15か月を経過した時点で測定)
・カニーンヘン(ラビット):胸囲30cm以下(生後15か月を経過した時点で測定)
スタンダードは「基準」「標準」の英語の意味のとおり、もともとのダックスの基本サイズ。JKCの犬種標準書にはわざわざスタンダードとは書かず、「ダックスフンド」と書いているところからしても、元来のダックスは大きいサイズのものだと見てとれる。
ミニチュアは言葉どおりのミニチュアサイズ。カニーンヘンはミニチュアよりもさらに小さく、ドイツ語で「うさぎ」の意である。
FCIでは、カニーンヘン・ダックスフントは「ラビット・ダックスフント」の表記になっているが、JKCではカニーンヘン・ダックスフンドになっている。名称が混在しているのでややこしいが、同じものだ。またドイツ語発音だと「カニーンヘン」に近いが、日本では一般に「カニンヘン」と言われることが多いので、本サイトでは以降「カニンヘン」と表記することにする。
スタンダード・ダックスは、アナグマ狩り用。アナグマは鶏小屋を襲うので、農家にとって困った存在だった。そのためダックスは害獣駆除係として重宝された。食肉目イタチ科のアナグマは、体長60〜80cm、尾の長さ15〜20cm、大きいもので体重は15kgほどあり、けっこう大きく、肉食獣なので性格も荒い。それに負けない気丈さがダックスにはないといけない。
現在のスタンダード・ダックスは、原産国ドイツではもっぱらキツネ狩り用に活躍している。またセント・ハウンド(嗅覚ハウンド)としてシカやイノシシのトラッキング(追跡)にも使われている。
スタンダード・ダックスは古く中世の時代より知られており、1735年にはこの犬の最古の記録がある。またドイツで専門の犬種クラブである「Deutscher Teckelklub 1888 e.V.」は、その名の通り1888年に創立された。
その後、ウサギなどの小型の獲物を追う仕事をさせるために、数十年間をかけて、ミニチュア・サイズとカニンヘン・サイズがつくられた。スタンダード・ダックスでは、ウサギの巣穴に入るには大きすぎたからだ。
ただし、ミニチュアとカニンヘンと分類されているのは、FCIとそれの加盟国である日本(JKC)、ドイツなど。英語圏であるイギリスやアメリカではカニンヘンはミニチュアと同じくくりになっている。世界共通のルールでないのでややこしい。
ちなみに日本のペットショップでは、生後2〜3か月くらいの子犬が「カニンヘン・ダックス」として売られているのを見るが、あれはまったく正しくない。生後15か月を経過した時点で胸囲を測ってみて、そこで初めてカニンヘンかどうかが確定する。両親犬がカニンヘン・サイズだったとしても、その子供がミニチュア・サイズに成長することはよくある話。「カニンヘンだと説明されて高い子犬を買ったのに、大きくなってしまった」というトラブルを聞くので、買う方も十分ダックスについて事前に勉強しておくことが大切だ。
さらに言えば、ミニチュア・サイズは胸囲30〜35cmまでが犬種標準である。生後15か月の段階の身体測定で、胸囲が35cm以上に成長した犬は、スタンダード・サイズのダックスということになる。
日本は、パピーミルや繁殖業者がペットブームに乗っかって乱繁殖させたので、大きさがバラバラだったり、足と胴体の長さのバランスが妙だったり、虚弱だったり、性格がシャイだったりする問題が多々起きている。個人できちんと可愛がって飼養している家庭犬なら、姿形が少し違うくらいはなんの問題もないが、骨関節など病気が発症しやすいとなると心配なので、歩き方に変化がないか、触ったら嫌がらないかなど日頃からよく観察し、病気の早期発見に努めてほしい。また臆病な性格を急に直すことはできないので無理強いはしないでほしいが、でも毎日少しずつ社会化トレーニングをすることによって、外の世界への恐怖心が減る可能性は十分にある。心を強くする練習を、ちょっとずつすることもまた大事である。
またこれからダックスの飼い主になりたいと思っている人は、本来の健康な正しい骨格、ダックスらしい正しい性質、とにかく心も体も健全な犬が日本でも繁殖されるように、子犬の入手先をきちんと吟味して選んでほしい。どの犬種でも同じだが、その犬種をこよなく愛し、勉強し続けるブリーダーを応援することは、ダックスという犬種の未来を守ることにつながるし、飼い主自身のためでもある。
近年の日本では、愛玩犬としてロングヘアのミニチュア・ダックスが爆発的に増えたが、30〜40年前の日本ではスムースヘアのスタンダード・ダックスが多かった(最近ではスタンダード・ダックスにはなかなか会えない)。本場ドイツでは、やはりスタンダードのサイズが多く飼育されており、猟野でタフに動けるワイヤーヘアが多いと聞く。
ドイツでは、いまもダックスは現役の実猟犬として、ハンターに愛好されている。ミニチュア・ダックスやカニンヘン・ダックスも、泥にまみれたくましく働いているから驚く。日本のダックスは、ここ10数年のブームの間に、華奢で垂れ目の日本人が好きそうなタイプが増えている気がするが(ついでに言うと性格もマイルド、繊細、臆病な犬が多い)、本来のダックスは、猟欲旺盛、野性味が残り、肉体も精神も頑強な犬である。
ちなみに、ダックスフントはセント・ハウンド(嗅覚ハウンド)の仲間であるが、キツネやアナグマ、ウサギなどを、地下にある巣穴まで追い詰めることから「Erdhund」(エルドフント。Erdは土、hundは犬。地中で猟をする犬)とも呼ばれる。
FCIの定義では、Erdhundとは
・FCIの使役能力試験規定に該当し、第3グループ(テリア・グループ)および第4グループ(ダックスフント)に属する犬種
・テリア犬種で、国内各犬種クラブの申請により使役能力試験規定に包括される犬種
・さらに人工地下巣あるいは自然地下巣において、アナグマまたはキツネの猟を効果的に行う能力を備えた犬種
とある。
よってErdhundのくくりには、ダックスフント以外に、ボーダー・テリア、フォックス・テリア、ウェルシュ・テリア、ジャーマン・ハンティング・テリア、パーソン・ラッセル・テリア、ジャック・ラッセル・テリアの6犬種が含まれる。これらのテリアは、英語圏ではEarth DogまたはWorking Terrierと呼ばれている。
ダックスフントとテリアの成り立ちは血統的にはまったく別物だが、「地中で猟をする犬」という役目として同じ仕事をしていたテリアもいたことから、「ダックスはテリアの仲間」と誤解されている記述もある。
ともあれ、なぜダックスフントが、第5グループ(セント・ハウンド)のくくりとは別に単独で第4グループとして分けられているのか、実はよく分からなかった。
ダックスはテリアではないが、Erdhundである。そしてErdhundの仕事は、ビーグルなどのセント・ハウンドは行わない。それでダックスフントは、1つの犬種だけで独立したグループになっているのかもしれない。
外見
日本のJKCと、国際畜犬連盟のFCI(原産国ドイツも含まれる)、アメリカのAKCなどで各国のサイズ基準や被毛色の認可が異なるが、ここではJKCの犬種標準をベースに紹介する。
サイズについては歴史のところで書いたが、もう一度記すと、以下の3サイズ。
・スタンダード :胸囲35cm以上。体重上限9kg
・ミニチュア :胸囲30〜35cm(生後15か月を経過した時点で測定)
・カニンヘン(ラビット) :胸囲30cm以下(生後15か月を経過した時点で測定)
そして、毛質も3種類ある。
・スムースヘア (滑毛)
・ロングヘア (長毛)
・ワイアーヘア (粗毛)
つまり、サイズ3種×毛質3種=合計9バラエティのダックスが存在する。大きさも毛もいろいろあるのに、ダックスフントという同じ1つの犬種である。
見た目はバラバラだが、では何が同じなのかというと、性質や仕事内容。日本では普通に小型愛玩犬として扱われているが、ドイツでは実猟犬として当たり前に思われている。正しいダックスは、大きさや毛並みに関係なく猟犬なわけで、活動的でタフ、いっぱい歩くのが好き、野山が好き、クンクンとニオイを追跡するのが好き、地面の穴のようなところに潜るのが好き、大きな声で吠えるのが得意。中味は同じなのである。ミニチュア・ダックスでも「10kmのハイキングコースを一緒に歩いてもまったくヘバらないので驚いた」という飼い主さんの声もある。ダックスの体力や根性を軽視してはいけない。
さらに言うと、サイズは違えど、全体のバランス、ボディの重要な比率、頭蓋骨の形や目の形、骨格、足の関節の角度……などは同じである。スタンダード・ダックスの写真をそのまま縮小コピーすればカニンヘンになる。そしてロングヘアやワイアーヘアのダックスを仮に丸刈りにしたら、スムースヘアと同じ体型なのだ。
ではまずボディの特徴について。以下は、スタンダード、ミニチュア、カニンヘン、すべて同じルールである。
一般外貌は、地低く(体が低く)、短脚で、体長は長い。重要な比率は、胸の深さが体高の3分の2であること。短足の黄金比だ。また体高:体長=10:17〜18とされている。短足かつ胴長。ホットドッグ犬らしく、長いボディに対して短足であるのがこの犬種の最大の特徴だ。
しかし短足であっても、歩き方がモタモタしたり、歩様が制限されるような不具合(不健全さ)はない。つまり、短足でもどんくさくはなく、非常に機敏で活動的である。実猟犬の身体能力があってこそのダックスなのだ。
また「頭部は、向こう気強そうに高く掲げ、警戒心に富んだ表情を見せる」と犬種スタンダードに明記してある。ひ弱そうな、おどおどした瞳のダックスはNG。ダックスは、私たち日本人が思っているよりも、強く、たくましいのが正しい国際基準である。
頭部は細長く、鼻の端に向かって均一に先細っていくが、とがらない。眉のリッジ(逆毛)ははっきりしている。目は中くらいの大きさでオーバル(卵形)。耳は付け根が高く、十分な長さがあるが、極端には長くない(バセット・ハウンドのようには長くない)。
ボディのトップライン(犬を横からみたときの上側のライン)は、首から尻にかけてわずかに傾斜していて、バランスがいい。腰は、筋骨たくましい。尾は、付け根は高すぎず、トップラインの延長線上にある。先端の3分の1部分がわずかにカーブしているのは許容される。
四肢は筋骨たくましく、頑丈。前から見ると、前肢は頑丈な骨を持ち、まっすぐ。足(足先)はまっすぐ前を向く(内股やがに股はNG)。ダックスの特徴である四肢に関しては、骨関節の角度などについて細かな規定がある。
では次に、毛のバラエティについて説明しよう。毛質が変われば、日々のメンテナンス方法は異なる。
毛色については国によってスタンダードが異なるが、ここではJKCのスタンダードを紹介する。
<スムースヘア(滑毛)>
短く密生し、ぴったりと滑らかで硬く、光沢がある。しっぽの毛は細かく、多すぎない。下部に多少長めの保護毛があっても、それは欠点にはならない。
スムースヘアはトリミングも必要なく、自宅でシャンプーも簡単である。ただ、短いが硬い針のような毛がけっこう抜ける。皮膚の血行促進やスキンシップ、被毛や皮膚の状態の健康チェックを兼ねて、ラバーブラシや豚毛ブラシでブラッシングを週2〜3回くらい行うとよい。
耳たぶやほかの部分に毛が抜けた部分があるもの、粗すぎる被毛、毛量が多すぎる被毛は好ましくない。また毛のあるブラシのような尾、または部分的・全体的に毛がない尾もよくない。
配色には、「単色」「2色」「その他の色」の3パターンがある。
単色:
レッド、レディッシュ・イエロー、イエロー(クリーム):最もよいとされるのはレッド。レディッシュ・ブラウンは、許容されるが望ましくはない。どの色でも、黒毛(シェーデッド)が散在しているものとそうでないものがいるが、黒毛が混じっていても単色に分類される。
胸に小さな白ぶちがあるのは失格にはならないが、白ぶちは望ましくない。鼻と爪はブラック。
2色:
ブラック&タンまたはチョコレート&タン(ブラウン&タン):つまりドーベルマンのような色。目の上の麻呂眉のような黄色っぽい色は、タン(黄褐色)またはイエローのマーキング。目の上だけでなく、マズルと下唇の側面、耳たぶのふちの内側、前胸部、足の内側と後ろ側、肛門の周り、そこから尾の下側の3分の1〜2分の1まで黄色っぽいマーキングが入る。黄色っぽいマーキングが非常に広範囲に広がっているのは好ましくない。
胸の小斑は失格にはならないが、白ぶちは望ましくない。ブラック&タンの犬は、鼻と爪の色はブラック。
チョコレート&タンの犬の鼻と爪の色はブラウン。タンのない黒毛の犬は失格となる。
その他の色(ダップル、ブリンドル、タイガー・ブリンドル):
・ダップル (1つの色が優勢ではなく、いろんな毛色がぶちをつくるもの):基本色は必ずダーク(ブラック、レッド、グレーなどの濃い色)。地色によってブラック・ダップル、レッド・ダップル、グレー・ダップルなどに分けられる。地色に不規則なグレーやベージュの小さめのまだら模様が入る。大きいぶちはNG。濃い色も明るい色も優勢であってはならない。
・ブリンドル、タイガー・ブリンドル :褐色、黒の混じった色。レッドやイエローに濃い色の縞が入る。ブリンドルは少し太めの縞で、縞同士が重なっていることもある。タイガー・ブリンドルは縞が細めで、それぞれが重ならず、縞がくっきり分かる。
ダップル、ブリンドル、タイガー・ブリンドルの鼻と爪の色は単色、2色の犬と同じ。
<ロングヘア(長毛)>
滑らかで光沢のある長毛。下毛があり、ボディにぴったりと接している。喉の部分と、ボディの下部の毛は、ほかの部分よりも長い。耳たぶの毛は、耳の下端の毛を超えて伸びている。足の後部に豊かな飾り毛があるが、しっぽの下側の毛が最も長く、旗のようなフラッグ・テイルをしている。
ボディ全体の被毛が全部同じ長さなのはよくない。波打ったウェービーな毛やシェギーな毛(オールド・イングリッシュ・シープドッグのようなムク毛)もダメ。フラッグ・テイルがないもの、耳の飾り毛がないもの、背の被毛がはっきり分かれているものも好ましくない。
トリミング犬種ではないので毛のカットは必要なく、自宅でシャンプーもできるが、足の裏の毛のカットや、飾り毛を整えたりするためにトリマーに依頼する家庭も多い。依頼内容にもよるが、だいたい4000〜8000円くらいだろう。愛らしくこぎれいなロングヘアーを保つのには美容代がかかる。
また、柔らかい被毛の犬種ほど毛玉になりやすいわけではないものの、長毛なので、毎日か2日に1度はブラッシングをする。足が短いので地面が近く、足回りやおなかの毛に落ち葉やホコリがからみやすく、汚れがつきやすいということもあるので毎日のメンテナンスは必要。
でも、ダックスは決して愛玩犬ではなく、タフな活動的な猟犬なので、汚れたくないから土の上は歩かせない、などは虐待と同じ。毛の管理をしたくない人はスムースヘアを選んだ方がいい。
毛色については、スムースヘアの犬と同じ。
<ワイアーヘア(粗毛)>
テリアのようなモシャモシャした針金状の硬い、密生したトップコート(上毛)を持つ。下毛もあるので悪天候にも強く、スムースヘアのように寒がりではないし、ロングヘアのように毛がからみやすくもない。そのかわり1〜2か月に1度、トリマーにお願いしないといけないので、3つの毛のタイプの中でいちばん美容代がかかる。テリアに似た毛なので、1回のトリミング代もロングヘアより少し高額で、5000〜10000円くらいかもしれない。またワイアーヘアのダックスは日本でそう多くないので、本犬種のトリミングに慣れたトリマーが近所にいない可能性はある。
日々のブラッシングは汚れを払い落とす程度でよい。
粗毛は、マズルと眉、耳たぶを除き、全身を密着して覆う。マズルにははっきりしたひげがあり、眉はもしゃもしゃと茂っていて、マニッシュな(男性的な)魅力がある。耳たぶの毛はボディの毛より短く、滑らか。しっぽは密生した毛で覆われている。
長めや短めにかかわらず、柔らかい被毛はダメ。頭部の毛が柔らかいのもNG。ワイアーヘアはゴワゴワの毛が良いのだ。ヒゲや下毛のないもの、ロングヘアーのようなフラッグテイルも好ましくない。カーリー(巻き毛)やウェービー(波打った毛)もNG。
毛色は、スムースヘアおよびロングヘアの犬と同じものに加えて、追加の2色がある。
・ワイルド・ボア (イノシシ色)
・枯葉色 (ドライ・リーフまたはデッド・リーフ)
失格事由は、どのサイズ、どの毛のタイプでも同じで、真っ先に「落ち着きがない、または攻撃的な性格」ということが挙げられている。日本のダックスは残念ながら、落ち着きがなく、シャイなものが増えている。つまりあえて厳しい表現で言うと、ダックスらしさが欠けており、純血種として認められないということだ。そのほか、噛み合わせ、歯などにも細かなルールが決められている。
また、前述した毛色以外はスタンダードとして認められない。ビーグルに似た、白地に茶色や黒の大きめのぶちがあるバイポールドや白毛の犬も失格である。レア・カラーなどといって高額で売られているのを見るが、今から迎えるのであれば、毛色よりも心と体の健全性を優先することを勧める。ただしスタンダード外の犬であっても、繁殖に使ったりショーに出したりせずに、家庭犬として大事にするのには何の問題もない。そこは間違えないでほしい。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
遺伝性てんかん症
膝蓋骨脱臼(パテラ)
進行性網膜萎縮
若年性白内障
レッグペルテス症
慢性僧帽弁不全
シスチン尿症
糖尿病
カラーミュータント脱毛症
角膜ジストロフィー
停留睾丸
ナルコレプシー
先天性
その他
マール症候群
軟骨発育不全
肉芽腫性随膜脳炎
歯の疾患
クッシング症候群
甲状腺機能低下症
アレルギー各種
白内障
緑内障
角膜腫瘍
チェリーアイ
椎間板疾患ハンセンI型
膵腺房細胞萎縮
パターン脱毛症
魅力的なところ
胴長短足のファニーな体型。
本来のダックスは生まれつき友好的で、落ち着きがある。
あるときは甘ったれ、あるときはひょうきん。一緒に暮らしてて楽しい相棒。
毛質のバリエーションが豊富。好きなタイプの毛質が選べる。
ロングヘアは、可愛らしい。
スムースヘアは筋肉質がよく分かり、手入れが簡単。
ワイアーヘアは、テリアっぽく印象的。
正しいダックスなら攻撃性は低い。
足は短いがとてもタフ。健脚な人のお散歩の友に最適。
足は短いので、人間の歩くスピードや歩幅にマッチ。
もともと山野で活躍する犬。アウトドア、登山、キャンプの相棒によい。
大変なところ
流行犬種になったため、性質や体格が不健全な犬が多くなった。子犬選びは慎重に。
日本では、神経質だったりシャイな犬が多く、咬んだり吠えたりの問題が起こりやすい。
体の大きさの割に声が野太い。吠え声が問題になりやすい。
もともと猟犬だからタフ。運動欲求量は高い。
毎日たくさん散歩が必要。よって散歩する時間も必要。
マイペースで頑固なところもある。しつけには忍耐力が必要。
タフで遊び好きな分、ストレスが溜まると無駄吠えなどの問題を起こしやすい。
太りやすいので、運動管理と食事管理をしっかりやる。
背骨が長いので、脊椎の病気になりやすい。
滑る床、階段・段差は厳禁。住環境の整備が必要。
まとめ
日本で大人気犬種。ホットドッグ犬は性格もいい
日本では、ミニチュア・ダックスフントが大人気。とくに優しい雰囲気のあるロングヘアが好まれる。
猟犬気質の強さがあり、少々押しが強いところもあるが、もともとフレンドリーで、やんちゃで、ひょうきんで、ときに甘えん坊の一面もあり、飽きさせない。原産国ドイツではいまも現役の猟犬で驚くほど多才多芸で賢く、日本やアメリカなどでは家庭犬として長く人気を維持しているのは、ホットドッグのようなファニーな体型の愛らしさだけでなく、やはり性格の良さのおかげだろう。
たくさんの運動量と、猟の代わりとなるような知的欲求を満たすゲームなどをしっかり与えれば、とてもいい家庭犬になる。
ぬいぐるみではない。現役の獣猟犬
女性でもコントロールできるサイズとパワーだし、正しい血統と飼い方ならば普通は攻撃性の見られない友好的な犬で、本来は家庭犬としてもうまくやっていける問題のない犬種のはずなのだが、日本では流行犬種になってしまった経緯から、問題行動のある犬が多く、残念ながら捨てられてしまうことが多い。
犬側(繁殖者側、販売側)の問題としては、乱繁殖された結果、性質が荒れ、骨格などに異常がある個体が少なくなく、病弱な犬がいる。つまり、ゆくゆく獣医療費がかかる。また販売時に「ダックスは足が短いから外へ毎日の散歩・運動に連れ出す必要はない」と、子犬を売りたいばかりに都合のいい虚偽の説明をするペットショップが未だにあることもまったく問題である。
一方、飼い主側の問題としては、ダックスの本質を勉強せずに抱っこ犬の感覚で飼ってしまう人が多いことが挙げられる。ダックスは猟犬だという認識がないために、適正な運動や社会化トレーニング、そして知的欲求を満たすトレーニングなどを犬に与えない。そのために犬のストレスが溜まったり、社会化不足のために神経質でシャイな性質が強化され、「神経質で咬む」「臆病で誰にでも吠えつく」「留守番中に吠えて、近所からクレームがくる」などの問題行動を引き起こしてしまう。
抱っこばかりして背骨が曲がっているダックスや、ロングヘアが汚れるといって犬用キャリーでの散歩が当たり前になっているダックスも見かけるが、犬としてあまりにも不幸すぎる。ダックスにとって必要なのは、フリルのひらひらレースのついたお洋服などではなく、泥んこで野山を駆け回り、葉っぱのニオイを嗅ぐことだ。
日本でドッグ・トレーナーに相談が多いのは、ダックスフント、トイ・プードル、チワワといった人気小型犬である。飼育頭数に比例しているから相談数が多いというのも理由だが、そもそも「まさかこんなことになるとは」と手を焼いてしまうケースが多い。
たとえばラブラドール・レトリーバーなどの大型犬の場合は、体も大きいし、悪いことをしたら大問題になるかもしれないという危機意識や責任感が飼い主にあるために、まだ問題行動が起きていないうちから、トレーナーに相談して犬も飼い主も先に学ぶケースが多い。一方ダックスを始めとする小型犬は、問題行動が習慣化し、どうにもならなくなってから相談されるケースの方が多いと聞く。
ダックスであっても犬は犬。しかも、トイ・プードルのように愛玩用に小さく改良された犬ではなく、猟の獲物が住む巣穴のサイズに合わせて小型化された生粋の猟犬であるということを忘れないでほしい。
トレーニングは、飼い主に根気が必要
ダックスは、セント・ハウンド(嗅覚ハウンド)なので、自分の判断力で獲物を追う仕事をしていた分、自主性があり、マイペースで頑固な一面がある。そのため、しつけやトレーニングには根気が必要だ。しかし飼い主に反抗心や攻撃心があるわけではないので、咬傷事故などの大きな問題は起きにくく、また小さすぎず大きすぎずのサイズとパワーなので、そういう点ではビギナーでも扱える犬といえる。トレーニングは、何度も繰り返してやればいつかは覚えてくれる。
可愛いミニチュア・ダックスやカニンヘンでも、ダックスのやる気のある実力と、犬との共同作業の楽しさを分かっている飼い主さんは、きちんとトレーニングし、素晴らしい賢いコンパニオンに育てている。
ダックスは流行犬になりすぎたために「よく吠える」「ヘルニアになりやすい」など悪評も聞こえてくるが、ダックスが悪いのではなく、あくまでも飼う側と売る側の問題。ダックスの良さをどんどん伸ばす育て方が、日本でも広まることを願う。
小型犬だけど「声」が大きい。マンションでは要注意
ダックスは、カニンヘンでもミニチュアでもスタンダードでも、みな猟犬。そのため体の大きさの割に、山野に響き渡るようなよく通る野太い声をしている。これは猟犬として重要な要素なのだが、これが日本の住宅地だと、残念ながら短所となってしまう。
ましてや本来は、1日中野山を歩いても大丈夫なタフな犬。そして本当は、クンクンとニオイを追跡する嗅覚を使った脳の刺激を欲している。それなのに、毎日留守番でかまってもらえず、散歩時間も短く、刺激の少ない生活を送っていれば、無駄吠えなどの問題行動を起こしてしまうのも無理もない。
集合住宅に住み、仕事や人間の子育てなどで忙しく、運動をさせる時間がたっぷりとれない人は、本当にダックスを満足させられる運動や刺激を与えることができるのかをよく検討してから、この犬種を選んでよいのかどうかを決めてほしい。
脊椎の病気予防のため、住環境の整備を
ダックスに限らず、どの犬でも、フローリングやタイル、大理石などの滑る床は骨関節に負担を与えるので好ましくない。また日常的に繰り返し使う階段や段差はない方がいい。猫の脊椎(背骨)はしなやかで、木や塀に飛び乗るような上下運動が得意なのだが、犬の脊椎は猫のように柔軟ではなく、平面で暮らすことに向いている。上下運動やジャンプだってもちろんやればできるが、1日に何度も何度もしていると体に負担がある。
とくにダックスやコーギーは背骨が長い犬なので、ほかの犬種以上に負担が大きい。椎間板ヘルニアなどの脊椎神経を傷つける病気は、四肢の麻痺、歩行困難にとどまらず、重症化すると排泄のコントロールができなくなる。歩けない、走れない、オシッコやウンチが垂れ流しでオムツが必要というのは、飼い主も見ていて辛いだけでなく、介護も大変である。
なるべくそうならないように、フローリング床には、犬がいつも歩く部分だけでもいいのでタイルやカーペットを敷いて滑らないようにしたり、ソファや玄関の段差にはスロープをつけたりするなどの住環境の整備を行おう。リビングが2階という場合などは、階段だけはいつも抱っこして移動することを心がけるとよい。
また、若く元気なときからたっぷり運動を行い、よい筋肉を鍛錬しておくことも、健康な老後を過ごすために役に立つ。
ちなみに運動不足なうえに、つい可愛さに負けておやつを与えすぎると、あっという間に肥満になる。短足なうえにおなかが地面にこすれそうなダックスを見かけたことがあるが、肥満は脊椎への負担を大きくさせる。太らせないように、運動管理とともに栄養管理も気をつけよう。
このページ情報は,2014/11/08時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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