dogplus.meのドッグフード図鑑をみると、現在日本で販売されているドライフードが実に1400種を超えていることが分かる(しかも担当編集者によれば、まだ把握していない製品もあるだろうとのこと)。国内外で作られたドライフードがこれほど多く販売されている国なんて、もしかしたら日本以外にないんじゃないかと思うくらいの数だ。こんなに種類が多いのだから、フード選びに迷ってしまうのは仕方がないことなのかもしれない。
細かい話はいったん置いておくとして、いまマーケットにどのようなドライフードが出回っているのか、一般的なドライフードとはどのようなモノなのか、原材料から見てみよう。
動物性タンパク質のトップ原材料
まず、ドッグフードの中心的原材料ともいえる動物性タンパク質を見てみると、最も多く使われている原材料はなんと魚である。ニシンやイワシなどの青魚とタラ系の白身魚は生や乾燥ミールなどの形で、そしてサケやマグロ・カツオなどの高級魚は多くはそのまま生でドライフードに加えられ、これらを合わせた魚類は第2位の鶏を大きく引き離し、実に多くのドライフードに原材料として使われていることになる。
魚は牛や鶏などの家畜とは異なり自然なイメージがあるうえ、DHAやEPAなど不飽和脂肪酸が多く含まれる魚油も健康に良いことから、このところ多くのメーカーがこぞって原料として取り上げているのは、なんとなく気づいていたが、一昔前までのドッグフードといえば、肉ーーとくに“牛肉”をイメージさせるモノが多かったのに、今では魚類が人気原材料として最上位に食い込んでいるのは正直意外である。
魚の次に多く使われている動物性タンパク質は「鶏」だ。鶏は、肉類の中では出荷までの肥育期間が短いことなどから牛や豚などほかの肉類に比べ単価が安く、メーカーにとっては仕入れやすい原材料なのである。
もちろん、生の正肉と乾燥物であるミール、そして副産物を比べると、栄養価や素材の新鮮さなど質はピンキリであるけれど、鶏系の原材料の入っていないフードを探すことの方が難しいのではないかと思われるくらい、ドッグフード定番の原材料といっていいだろう。
目立たないけど重宝されている原材料
犬の体としては、もちろん動物性タンパク質の方が利用しやすいのだが、タンパク質源を肉・魚類ばかりに頼ってしまうとコストがかかるということで(おそらくはそういう理由であろう)、タンパク質を適度に含み、さらには炭水化物としてカロリーを供給し、おまけに食物繊維まで含んでいるという大豆やえんどう豆(グリーンピース)などが、フード原材料として重宝されている。原材料表示の最初のほうに表示されることなく(最初のほう=含有量が多い)適量であるならば、それもありだろう。
少量でもこだわりにつながる原材料
鶏・魚・大豆と、それだけでフードの大部分を占めるような原材料ばかりが続いたので、今度は少なめに、でも意図を持って加えられる原材料を見てみると、身近な素材である酵母と昆布も人気の原材料であることに気付く。酵母は、天然のビタミン源であると同時に消化を助けてくれる微生物だが、消化を助ける微生物といえば、乳酸菌や米麹菌などのプロバイオティックをドライフードに加えることはもはやダントツのブームといってもいい。そう断言できるくらいさまざまな菌の名前が、多くのフードパッケージに見られる。これらはみな、腸内で善玉菌としてよい仕事をしてくれることを前提に加えられるものである。
フードを音楽に例えると、原材料は音譜であり、1つ1つの原材料を組み合わせて一つの曲が作られる。それぞれのフードにはコンセプトがあり、ある程度の決まりのようなモノがあり、そしてこだわりもある。時には心地の悪い音(原材料)だって入っているけれど、結局はそれを受け止める側によってその善し悪しが決められ、「絶対によい」とされるモノはなかなか見つけにくい。フードのレシピも日進月歩でどんどん進化・改良されていることを考えると、とりあえず今主流のフードがどのようなモノか知っておくことはきっと損にはならないと思う。