犬のお腹の調子を見るとき、まず気になるのがウンチの状態。
どんな状態が健康的であるのか、もちろんみなさん分かっていることと思うが、今一度ここで確認すると、「節(ふし)が明確で、つまんでも形が崩れることがなく、あとが残らず、かつ固すぎず、軽い力でやんわり折れるもの」という状態のものが最も健康的なものである。色はフードの色にも影響されるが、濃い黄色からこげ茶色のものが一般的。
今食べているフードが体に合っているかどうかの見極めは、“出てくるもの”を見ればだいたい分かるといってもいいほどだから、毎日のウンチ観察は、飼い主としては欠かせない。
子犬のころ頻繁にフードを変えてはいけない
そして犬の中でも、特に子犬はお腹を壊しやすい。
成犬に比べて免疫力が低いというのも理由の1つだが、そもそも子犬は(人もだが)無菌状態でこの世に生まれてくるため、お腹の中にも腸内細菌がいない。生まれてから母乳を飲み、離乳して固形物を口にするという過程を通して、体の中に健康な腸内細菌を取り込み、増やしていかなければならない。犬の体は、私たち人間と同じように、健康な腸内細菌のバリアによって守られているのである。
生まれて数週間、母乳を飲んでいる間に乳酸菌を腸内で養い、そして無理のない離乳を行うことで徐々に乳酸菌が安定してくるが、子犬が親から離されて環境が変わると、周辺環境に存在する細菌も変わるため、腸内細菌バランスが不安定になりがちである。
しかも子犬がやってくると、飼い主としてはかわいくて仕方がない。ついいろんなものを食べさせてみたり、子犬のためによかれと思いフードをとっかえひっかえ試してみたり、あるいは子犬自身の興味でいろんなものを口にしたり、初めての経験にびっくりしたり、興奮したり、(飼い主に)触りまくられたり、とにかく子犬のお腹は落ち着くことが少ない。
健康な腸内細菌バランスは、犬の一生を通して健康な体を作る大事な財産となるけれど、健康な腸内細菌は一日にしてならず。当たり前だが、腸内細菌だって生き物だ。犬のお腹に「細菌」という生き物を育てるには、とにかく無理をさせないこと、そして時間をかけること。子犬のお腹を大事にしたいなら、まず念頭に置くべきは「子犬のお腹はデリケートである」ということだ。
そのデリケートなお腹のために、フードは頻繁に変えないこと。フードが変わり、フードに使われている素材がコロコロ変わると、そのぶんだけ子犬のお腹はびっくりしてしまう。だから、フードを変えるなら、ゆっくり時間をかけるべし。ある日突然新しいフードに丸ごと変えてしまうのではなく、前のフードに毎日1割ずつ新しいフードを混ぜなから、10日間かけて切り替えるくらいの気持ちでやるべきだ。
おなかがゆるくなったら与えるべきは「リンゴ」か「ニンジン」
では、そこまでやってもウンチがゆるい場合は?
そもそも子犬のうちは、若干ウンチがゆるいのはごく当たり前といってもよく、腸内細菌がしっかりしている成犬のように固いウンチは、子犬ではなかなか出てこない。でも、見た目に明らかにトロリとしたウンチはさすがにNGだし、それ以上に軟らかいウンチはNGではなく「アウト」。急いで手を打つべきだ。成犬であっても、これは同じ。
こんなときには、まずドライフードは控えよう。ドライフードを控える代わりに食べさせたいものは、すり下ろしたリンゴやニンジンだ。子供の頃、お腹を壊したときにすり下ろしたリンゴを食べさせてもらった経験はないだろうか。リンゴには、ペクチンという成分が含まれるのだが、ペクチンは食物繊維の一種で腸内細菌のエサとなる。つまり、下痢で体外に流れ出てしまった腸内細菌を早急に増殖させるために、まず細菌のエサとなるペクチンを子犬に食べさせるのである。
そしてこれと同じことは、あまり知られていないことだがニンジンでもできる。ニンジンにも実はリンゴと同じくらいのペクチンが含まれ、すり下ろしたり、ゆでて潰したりして食べさせると、リンゴと同様の効果が期待できる。
リンゴやニンジンのほかにビート類(甜菜やビートルート)なども腸内細菌を育てるペクチンが豊富な素材なので、整腸効果があるこれらの素材が原材料に入っているフードを選ぶのもよいし、毎日少しだけフードにトッピングしてやるのもよい。さらにフードだけではなく、すり下ろしたリンゴやニンジンとオートミールでクッキーを作って、おやつにしても楽しそうだ。
ただし、もし子犬が形のないウンチを立て続けにしたり、水のような激しい下痢をしたときは、考えることなく即時病院に連れて行くことをお忘れなく。
水のような下痢は体の水分も多く失うため、子犬の場合は脱水症状に陥り、事態が悪化しやすい。また激しい下痢や血便は、何かの感染症にかかった可能性もあるので、ちゃんと診断と対処をしてもらわないと(脅すわけではないが)、場合によっては命取りにもなる。そしてなぜだかそういうときに限って週末だったり夜中だったりするので、普段から救急病院をチェックしておくのも大事なことだ。