今回は、犬に使える身近な日用品の例を、有名どころから3つほど紹介しよう。
ワセリン
最初に思い浮かべるのはおそらく保湿クリームなどだと思うが、犬の皮膚は人の皮膚と若干異なっていて、汗はかかないのだが皮脂分泌が多い。なので本当に犬の皮膚を保護したいなら、実は保湿よりも脂質を多く含むクリームが有効だ(とくに界面活性剤などを含まない純粋なクリーム)。あるいは、単に皮膚表面を覆ってバリアを作り、乾燥して角質がごわごわした皮膚の内部から、自然の治癒力で皮膚を回復させるにはワセリンがいい。
「ワセリンは石油からできている」と聞くと一瞬顔をゆがめてしまうが、精製脱色され、クリームのように皮膚に吸収されることがないので、ただ単純に皮膚のバリアとして使うことができる。ワセリンは洗い流すこともできるし、時間が経てば角質とともに落ちてゆく。医薬品として使われる白色ワセリンは特に純度が高く、外傷の上につけるとラップで巻くような効果があり、傷口が乾燥せずに湿潤療のように皮膚の内側から治癒していくというわけだ。かといって大きな傷口に塗り込むのには向かないので、せいぜいタコや擦り傷に使う程度だが。
ところで「ワセリンはハゲ(=脱毛)に効く」と聞いたことがある人も多いと思う。自ら試してみたことはないのだが、割と多く聞く話なので、条件が揃えば効果があるのかもしれない。しかし、もしあなたがハゲてしまった愛犬に使いたいと思った場合、脱毛している箇所が真菌など感染性のものである可能性を考え、獣医さんで確認してからの方がよいだろう。
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片栗粉
爪切りのとき、うっかり深く切りすぎて血が出てしまった経験はないだろうか。白い爪なら血管の位置が透けて見えるけれど、黒い爪だと見極めが付かない。「このへんだろっ」と威勢良く切ってみたら、爪の中を通る血管まで切ってしまって出血……という事態に。犬がギャンと叫んで、爪の先から赤い血がぷっくりと盛り上がり、しずくになってしたたり落ちる。割と焦る。
そんなときに役立ってくれるのは、マキロンでもなく絆創膏でもなく、実は台所にある「片栗粉」だ。スティック式の止血剤なども市販されているが、常備していない場合には片栗粉が代わりに止血をしてくれる。1人暮らしの男性ではちょっと厳しいが、一般の家庭であれば片栗粉ならある可能性は高い。覚えておこう。
なお小麦粉でも代用できるが、片栗粉はほぼデンプンでできているので、アレルギーの可能性などを考えると、片栗粉の方がより向いている。
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ビオフェルミン(乳酸菌入り整腸剤)
*余談だが、犬用ビオフェルミンという製品はなく、“犬用”として処方されるビオフェルミンは、本来の用途としては子豚用(=動物用)だ。この動物用と人用はまったく同じモノだと思われがちだが、含まれている菌に差がある(人用のほうが1種類多い)。
ところで乳酸菌といえばヨーグルトを思い浮かべる人も多いと思うが、もちろんヨーグルトだって整腸に役立つ。しかし、基本的に成犬は乳糖不耐症のため、ヨーグルトの原料に使われている牛乳の乳糖が多く残っていると十分な整腸効果を発揮することができない場合もある。よく分からない場合には、素直にビオフェルミンなど錠剤タイプの乳酸菌入り整腸剤を使うのが手っ取り早い。
錠剤を飲ませることが難しい場合は、ヤクルトなど乳糖の少ない液体タイプのものだと犬は好んで飲むので与えやすいだろう。ただしこの手の乳酸菌飲料には、乳糖以外の糖分がかなり含まれているので、歯への影響やカロリーのことを考えるとあまり頻繁に与えるのもよろしくない。お腹の具合が悪いときだけに限定しておくのが無難だろう。
ところで、乳酸菌入り整腸剤が効果を発揮する症状にはむろん限界がある。「明らかに普通の下痢ではない」と思ったら、キチンと動物病院に行くことをまず心がけたい。
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犬の体は人の体とは違うのだから、「犬には必ず犬用のものを使わなければならない」と思い込んではいなかっただろうか。たしかに医薬品などは犬用のほうがよいことも多いし、それどころか犬用でなければならないものだってある。
なので医薬品ばかりは気軽に人間用をお勧めするわけにはいかないが、しかし日用品においては、犬と人の体の共通点が分かれば、人間用のものを犬に使うことはできる。食べ物然り、日用品然り、犬との暮らしを一段階引き上げるための助けとなる情報を、今後も提供していきたい。