年に一度、チョコレートがバカ売れする季節がまたやってきた。街中どこをみてもハートマークとチョコレート。昨今は、自分へのご褒美や友達同士での交換など、とにかくチョコをテーマに盛り上がりたい(盛り上げたい)雰囲気が満載だ。そして愛犬にも贈るというのは、バースデーケーキに並びもう何年も前から犬好き達の間では当たり前のようになっている。
しかし、ここで改めて注意したいのは、そこかしこで言われている半ば一般常識のようなものだが「チョコレートは犬に与えてはいけない食材の一つ」ということだ。もしもどこかで愛犬のためにバレンタインチョコを買いたいと思っても、まずは素材をよくよく確かめてほしい。でなければ、せっかくの愛情も犬を苦しめる結果となってしまうからだ。
なぜチョコレートが犬によくないのか、それはチョコレートの主成分カカオに含まれるテオブロミンという成分のせいだ。テオブロミンはざっくりいうとカフェインに似た物質で、カフェインと同じように神経を興奮させる作用がある。犬の体は人間の体に比べてこのテオブロミンの分解が遅く、人間よりも少量のチョコレートを食べただけで中毒症状を起こしてしまう危険性がある。
チョコレートを食べた犬の体にみられる中毒症状とは、血圧の上昇をはじめ、脈拍の亢進(脈拍数が多くなる)、脳内血管の収縮、落ち着きがなくなる、筋肉の痙攣、嘔吐、下痢など。最悪の場合は、心拍が乱れ、筋肉の痙攣から体温が上昇したり、呼吸停止などによって死亡する可能性もある。
チョコレートに含まれるテオブロミンの量はカカオの量によって違い、普通のミルクチョコレート1枚(板チョコ1枚=約60g)には約140mg、ビターチョコレート1枚にはその倍の280mgほどのテオブロミンが含まれている。犬は、体重1kgあたり20mgのテオブロミンを食べるとすでに嘔吐や下痢などの症状が出るとされ、例えば体重10kgの犬がミルクチョコレートを1枚半食べるともう症状が現れるということになる。体重5kgの犬だと、板チョコ3/4くらいだけど、もしそれがビターチョコだったりしたら、1枚の半分で症状が出てもおかしくないという計算になる。
症状が見られるのは、食べてからだいたい2〜4時間後。犬によってどのくらいの量で中毒症状が出るかはむろん個体差があるが、飼い主の見ていないところで盗み食いをする犬がいる場合は、チョコレートは絶対に口の届かないところに置いておくのがよい。食べた量が多く、また犬がチョコを食べたことに飼い主が気がつかなければ、12〜36時間以内に死ぬケースもある。
なので、いくらバレンタインデーだからといっても、犬にチョコレートはまず避けること。犬にはバレンタインデーなんて何の意味もないお祭り騒ぎでしかないのだから。
それでもどうしてもチョコを!という場合、カカオの代わりにキャロブ(別名:イナゴマメ)が使われているものをオススメしたい。キャロブはマメ科の植物で、実を粉砕してカカオの代用品として使うが、カカオのようにテオブロミンを含まず、またコーヒーのようにカフェインも含まないため、安心して犬に与えることができる。キャロブ粉末を使えば、見た目はカカオ同様にチョコレートのような色合いとなり、また香りもカカオに近いことから、犬のおやつを作るメーカーなら使って当然の素材だ。必ずパッケージの裏書きを見たり、お店の人に確認したりしよう。
人間用に売られているチョコレートは、絶対に犬には与えてはいけないし、盗み食いもされないよう、特にこの時期気をつけたい。