図鑑
ボストン・テリア
人なつこさはトップクラス。
明るく、楽しく、ボールが好きな快活犬
英名
Boston Terrier
原産国名
Boston Terrier
FCIグルーピング
9G 愛玩犬
FCI-No.
140
サイズ
原産国
特徴
歴史
ボストン・テリアのことをより深く知りたい方は、本記事と共に、Bellecrest Boston Terriers(
http://bellecrestbostonterriers.web.fc2.com/ )というサイトを熟読することをオススメする。本場である“BTCA”(ボストン・テリア クラブ・オブ・アメリカ)の会員として日本人で唯一認定されている方のサイトであり、非常に参考になることは間違いない。
ボストン・テリアは、名前こそテリアと付いているがテリアのグループではない。FCIの分類で「Companion and Toy Dogs」(小型愛玩犬)グループ(9G:
プードル や
マルチーズ 、
チワワ 、
パピヨン 、
狆 、
ペキニーズ など)の中に「Small Molossian type Dogs」(小さなマスティフタイプの犬)というくくりがあり、そのグループにいるのがこのボストン・テリア。ほかに似た犬として、
フレンチ・ブルドッグ と
パグ がいる。
でもAKC(アメリカン・ケネル・クラブ)のグループ分けだと、パグは「トイ」(小型愛玩犬)のグループだが、ボストン・テリアとフレンチ・ブルドッグはそのグループではなく、「ノン・スポーティング」グループに属している。AKCのノン・スポーティングは、すべてのグループの中でいちばん多様性があり、
柴 、
ダルメシアン 、プードル、チャウ・チャウ、アメリカン・エスキモー・ドッグなども入っている。要は、どこに分類してよいか分からない「その他いろいろ」グループといった感じだ。
さて、今でこそアメリカは、ショードッグを始め、世界の犬業界の中で大きな力を持っている国だが、アメリカ発祥の土地犬というのは元々はいなかった。そもそもイヌという種そのものは太古の昔のユーラシア大陸出身だったから、地続きである中央アジアや西アジア、欧州あたりでヒトと暮らし始めたのだろう。だから北米・南米大陸には土地犬が存在しなくて、ヒトと共に新大陸に渡ったと考えられる。そのため古い犬種というのがいない(でもなぜかメキシコとペルーには、チワワやメキシカン・ヘアレス・ドッグ、ペルービアン・ヘアレス・ドッグなどがいる。謎であり、ロマンである。いつ彼の地に犬が誕生したのだろう? どう海を渡ったのだろう?)
土地の犬をベースにより人間の生活の役に立つようにしたり、好みの姿に作り変えたりするのが得意な国といえば、犬種改良の本場イギリスだが、アメリカ人も最初はイギリスから渡ってきた人が多かったわけだから、犬種改良が得意な国民性なのだろう。近代になって、新しい犬種がぞくぞくと登場している。
アメリカン・コッカー・スパニエル 、アメリカン・フォックス・ハウンド、アメリカン・アキタ、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、アメリカン・イングリッシュ・クーンハウンド(アメリカとイギリスの両方が名前に付いているややこしい犬種。ただしこの犬種は、AKCでは公認犬種だがFCIでは未公認)など、犬種名の頭に「アメリカン」とつく犬種だけでなく、アメリカではない国の名が付いているオーストラリアン・シェパードや
アラスカン・マラミュート 、シベリアン・ハスキーも、アメリカ原産の犬種である。実にややこしい。そのほか国名のついてないブラック・アンド・タン・クーンハウンドやチェサピーク・ベイ・レトリーバーなどもいる。
その中でもボストン・テリアは、アメリカ原産の犬としては歴史が古い。チェサピーク・ベイ・レトリーバー、アメリカン・フォックス・ハウンドに次いで三番目に古いアメリカ原産の犬なのである。
JKCのスタンダード表記によると、ボストン・テリアは「1870年代にボストン市とその周辺に住む人により、ブルドッグとブル・テリアによって作出された」とある。しかしほかの書物を紐解くと、その2犬種に加えて、いまは絶滅したホワイト・イングリッシュ・テリア、そして犬種の固定のためにフレンチ・ブルドッグも関係していたと考えられる。
ボストン・テリアの最初の頃の別名は、「Hooper's Judge」。カタカナで「ホッパーズ・ジャッジ」と書かれている文献も複数あり、最初、hop(跳ねる、飛び回る)という快活なボストン・テリアの印象からの名前の由来かと勘違いしかかったが「でも一体何をジャッジするんだろう?」と思ってさらに調べると、1865年にイギリスから輸入し、Robert C. Hooper氏(フーパー氏)が手に入れた「ジャッジ」という名前の犬のことらしい。
つまりカタカナで書くなら「フーパーズ・ジャッジ」が正しいのではないかと思う。フーパーさんちのジャッジ君は、イングリッシュ・ブルドッグとイングリッシュ・ホワイト・テリアの交配種で、白いブレーズ(目と目の間の白いライン)と白い喉、濃いブリンドルの被毛、断耳した耳、ねじれた尾の、約14kgのブルドッグ・タイプの犬だったという。
JKCのスタンダードを見ても、ボストン・テリアは当初は約23kgあるもっと大型の犬だったとあり、当時は「ボストン・ブル」と呼ばれていた。古い写真を見ると、ピットブルっぽい体型や顔つきに見える。現状のボクサーほど体高はないが、フレンチ・ブルドッグよりは体高がある。ボクサーや現在のボストン・テリアよりもっとごつい筋肉質の、ごろっとした体型だ。
1878年、ボストン市が開催したドッグショーにて「(アメリカン)ブル・テリア」として出陳。さらに1888年、「ラウンド・ヘッディド・ブル・テリア」(丸い頭をしたブルテリア)、「あらゆる毛色」というクラスに出陳し、別名「ボストン・ラウンド・ヘッド」と呼ばれた。たしかにブル・テリアの頭は卵形だし、ピットブルだと頭はもっとごつくて四角い。丸い頭部というのがボストン・テリアの分かりやすい特徴だったのかもしれない。
その翌年の1889年に、ボストン市にThe American Bull Terrier Clubが設立する。しかしそのあとブル・テリアとしての特徴がないとの理由で「アメリカン・ブル・テリア」としての登録を否認された。そのためクラブ名もThe Boston Terrier Club Of Americaに改名。愛好家の地道な努力が伺われる。そうした道のりを経て、1893年、ついにAKCに晴れてボストン・テリアが登録されることとなり、約75頭が血統台帳に承認された。この75頭が、現在のボストン・テリアの祖先である。
途中にブル・テリアとの差別化の問題など紆余曲折は多少あったものの、この承認までのスピードはほかの犬種に比べてずいぶん速かったといってよい。ボストン・テリアは、アメリカ人が好みそうな姿と性格だったので、議論するまでもなくみんなに早くに受け入れられたのかもしれない。コントラストのはっきりしたボディカラー、シュッとした体型、陽気で快活な性格。たしかにアメリカ好みな気がする。
ちなみに他犬種の話だが、現在の
ボクサー はドイツ系とアメリカ系と体型やサイズが分かれつつあるが(ドイツ系がどっしり型、アメリカ系がスマート型)、アメリカ系のボクサーを縮小コピーしたら、ボストン・テリアの体型に近くなるといってもあながち間違いではないだろう。けれどもボクサーとボストン・テリアの改良に使われた犬種は異なる。まったく違うラインなのに、結果的に小型化された似たような外貌にたどりついたというのが興味深い。
ついでにいうと、アメリカ系のボクサーとボストン・テリアの性格も割と似ている。陽気で、フレンドリーで、面白くて、いつまでも子どもっぽい無邪気さがあり、そして環境順応性が高い(少々落ち着きがなく、チャラチャラしていて、お調子者だったり、分離不安になりやすい面が出ることはあるけれど)。でも基本的には家庭犬として、飼いやすくてチャーミングな魅力を備えており、これもアメリカ好みなのかもしれないなあと推察する。ただし、ボクサー・ファンシャーからみると、やはりボストン・テリアの顔には皺がなく、リップス(唇)のたるみもなく、マスティフ系とは系統がずいぶん異なることがひと目で分かるようである。
ともあれ、そうしてボストン・テリアはアメリカで人気者となり、1927年にイギリスとフランスに紹介されたのを機に、世界的に知られることとなったとスタンダードブックにある。
日本に最初に来日したのは大正時代との記録もあるが、大正時代は1912〜1926年なので、イギリスやフランスよりも早く日本に上陸していたというのはちょっと信憑性が薄い。昭和に入ってからと考えるのが妥当だろう。
ちなみに、日本で1931年(昭和6年)から連載された漫画「のらくろ」のモデルはボストン・テリアだと言われる都市伝説がある。確かに、ブラック&ホワイトの色、立ち耳、短頭種っぽい白いマズルなどはボストン・テリアっぽく見える。でもこの犬は、作者の田河水泡氏が以前住んでいた牛込(現在の東京都新宿区の北東部付近)の書室の縁の下で、野良犬が出産した黒白の犬がモデルとのこと。戸籍名である「のら山黒吉」を省略して名前の由来らしい。
ただ、この漫画には、太った白いブルドッグの「ブル聯隊長」やテリアの「モール中隊長」、ブルドッグと別犬種のハーフの「ハンブル」(半分ブルドッグ!?)など、偶然かもしれないがブルやテリアっぽい犬が多く登場している。のらくろの漫画は、外国の犬が日本に導入された時期と重なるということもあり、ブルやテリアに似た犬は新鮮でハイカラな存在だったのかもしれない。また今と違って東京でも犬がフラフラと自由にしていた時代だったので、和犬との雑種がうっかり産まれやすかったとも想像できる。思いを馳せるだけで楽しい。
外見
短頭の頭部、コンパクトな体格、短い尾といった特殊なバランスを保つ犬。一般外貌の評価の際にとくに重要視されるのは「バランス、表情、主体色とホワイト・マーキング」とある。
ボディの重要な比率のポイントは、脚の長さ。ボディと釣り合いが取れており、ボストン・テリアらしい特徴的なスクエアな外貌を作り出すことが重要視されている。つまりフレンチ・ブルドッグのように脚が短くてもいけないし、アンバランスにひょろりと長すぎてもいけない。横から見たときに、背骨と脚の長さが正方形になる比率がよい。
スタンダードには「ボストン・テリアはがっしりした犬」とあり、か弱かったり、粗野でもいけない。ただ「がっしり」といっても、フレンチ・ブルドッグやアメリカン・スタッフォードシャー・テリアのようなごろっとしたボリューム感のあるがっしりさではなく、シュッとスマートな「細マッチョ」な筋肉質なボディ。スラッとしていても、草食系のようなひょろひょろしたか弱いのもNGである。ボストン・テリアの骨と筋肉は、体重と体躯構成の関係と同じく、釣り合いがとれていないといけない。
ボストン・テリアは、サイズが3段階に分類されている。
・6.8kg(15ポンド)未満
・6.8〜9kg(15〜20ポンド)未満
・9〜11.35kg(20〜25ポンド)
ちなみに、ご存じプードルも体高差で分かれており、彼らはそれぞれにトイ・プードル、ミニチュア・プードル、ミディアム・プードル、スタンダード・プードルと名称があるが、ボストン・テリアにはそういう名前はついていない。
正しいブリーダー(やプロの販売員)であれば、こういうサイズ分類があることを理解しているはずだが、日本でこの説明を受けてボストン・テリアを買った人がどれだけいるのかは不明だ(というかそもそも、そういう管理をしているのだろうか)。
ともあれ、ボストン・テリアは、6kgくらい(ミニチュア・シュナウザーほど)から、11kg(
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク ほど)くらいまでの体重差がある犬種ということ。日本には小さい個体が多いが、ボストン・テリアは筋肉質なので、見た目よりもぎっしり中味が詰まっていて、抱きあげると想像以上にずしりと重たい。キャリーバッグで移動するには少々厳しいサイズだ。
さらにきっと本場アメリカなら、がっちりした筋肉質でかつ体重差のバラエティがあるボストン・テリアがもっといろいろいるのだろう。ボストン・テリアのファンシャーなら、アメリカのショーを見に行くと、また新しい世界が広がるに違いない。
ではパーツの紹介をしよう。
スカルはスクエア、頭頂は平らで皺はない。これはフレンチ・ブルドッグやパグ、ボクサーとは違うポイントだ。
耳は小さく、真っ直ぐ直立しているのがよい。バット・イヤー(コウモリの耳)の異名を持つフレンチ・ブルドッグほど大きくない。でもそのせいもあるのか、大きめの耳を断耳して直立させる慣習もある。ただ欧州では動物福祉の観点より断耳・断尾は禁止されている国が増えていることもあるし、アメリカ国内でもそういう気運は高まっているので、近年のアメリカでも、断耳しないで済むよう適度なサイズの耳の犬を作出する努力がなされている。
目は広く離れ、大きくて丸く、ダークな暗色。目の表情は、この犬種にとって最も重要な特徴。目玉は真っ黒がよく、白目が見えるのはよくないし、斜視のようになっているのもよくない。赤い瞬膜が見えすぎるのも好ましくない。まん丸な黒いガラス玉(白目なし。瞬膜も見えない)のような目が理想的だ。
鼻も真っ黒。ピンク色の斑が入っているのはよくない、色素が欠乏した肉色の鼻であるダッドリィ・ノーズは失格となる。また、鼻と鼻の間にはっきりした線が入っており、鼻の穴はしっかりと開いているのがよい。短頭種にありがちな、つぶれた鼻孔は呼吸困難の原因となることもある。
マズルは短く、スクエアで幅広く厚みがある。皺はない。短頭種なのに皺がないというのは興味深い。唇(口の周りのぱふぱふしたところ)は、マスティフ系の犬のように垂れ下がらない。つまり基本的にヨダレが垂れることは少ないはずだ。ライ・マウス(ねじれてゆがんだ口)や、口を閉じた状態で、舌や歯が見えるものは重大な欠点となる。咬み合わせは切端咬合(レベルバイト。上の前歯と下の前歯がぴったり合う咬み合わせ)か、マズルがスクエアに保たれるアンダーショット(下顎が前に出る咬み合わせ)である。
背のトップラインは水平。ボディは短く見える。ローチ・バック(鯉背。ブルドッグのような背が湾曲した背)やスウェイ・バック(凹背。背線がたるんだ背)は重大な欠点。つまり、腰が高くなっていたり、真ん中がへこんでいるラインはよろしくなく、真っ直ぐ水平がよい。
尾の付き方は、低く、短く、細く、先細りで、真っ直ぐかスクリュー型。背中のラインより高く保持してはならない。好ましい尾の長さは、付け根から飛節までの長さの4分の1を超えてはならないとある。しかし断尾した尾は失格となる。
被毛は滑らかで、ツヤツヤしたきめ細かい滑毛。
毛色は、タキシードのようなはっきりとしたツートンカラー。黒白が基本だと思い込んでいたが、そうではなかった。
・ブリンドル&ホワイト・マーキング :ブリンドルは、黒や褐色に地色より濃い差し毛が入るカラー&ホワイトのマーキング
・シール&ホワイト・マーキング :シールは、黒褐色や日光や明るい光の下で見たときに赤みがかって見える、黒っぽいカラー&ホワイトのマーキング
・ブラック・マーキング :ブラック&ホワイトのマーキング
仮に色以外のクオリティが等しい場合、最も好ましい色はブリンドル&ホワイト・マーキングである。確かに言われてみると、一見黒に見えるが、よく見ると濃いブリンドルの犬が多い気がする。ちなみに黒と白のイメージの「タキシード・カラー」や「ボストン・カラー」という言い方はスタンダードはおろか、本場アメリカでも使われていない。日本人がイメージで使っている単なる和製英語のようだ。
さて、ボストン・テリアは暗色(ダーク)に必ずホワイト・マーキングが入るのがお決まり。白いマーキングの必須条件は以下の3つ。
1)マズル・バンド:マズル周りを一周する白
2)目と目の間のブレーズ:目と目の間を走る白斑
3)前胸は白
さらに、ペナルティを課すべきではないが、あるとよいとされるホワイト・マーキングがある。それが以下だ。
4)目の間からさらに頭部にのびた均一(左右対称)なブレーズ
5)ホワイト・カラー(白い襟巻きが一周している)
6)前肢の一部または全部がホワイト(前肢の白い長靴下)(胸のエプロンと一体式でもOK)
7)後肢のホックから下がホワイト(後肢は白い短めの靴下)
確かに「望ましいホワイト・マーキング」がある方がショー映えするせいか、ドッグショー会場で見かけるのは、ホワイト・マーキングが多い犬だ。でも、1〜3だけでもスタンダードである。また、ショー映えするホワイト優勢の犬ばかりを繁殖に使うと弊害も起きやすくなるので、慎重かつ動物福祉にかなったブリーダーのもとで生まれた子犬を譲り受ける方が安心だ。
とにかく健康がいちばんである。家庭犬として迎えるのなら、ホワイトの入り方が左右対称でなくても、ホワイトの面積が少なくても、頭のてっぺんにパッチがあってもなんら問題はない。十分可愛く、愛すべきボストン・テリアである。ただし繁殖犬の役目を担ってもらうなら、スタンダードに沿った犬を使うことは欠かせない。
スタンダードを無視した、珍しい犬を求める風潮や、そのための営利目的の繁殖は賛成できない。アメリカでも日本でも「レアカラー」と珍しがって売り買いされている現実があるが、そうした犬はスタンダード外である。つまり本当なら血統書は出ないはずだし、正しいブリーダーなら血統書は申請しない。それでもボストン・テリアとして売る繁殖屋は、ブリーダーとは言えない。犬種の未来や健全性を守る気持ちを疑う。
ボクサーに出るようなレッド&ホワイト、フォーン&ホワイト、全身真っ白、またボクサーにもいないグレー&ホワイト、レバー&ホワイト、フレンチ・ブルドッグの「パイド」の色のようなスプラッシュ(白地に大きめ黒斑。牛柄)などのボストン・テリアは認められていない。ただ珍しいからとか、人が飼っていないからと欲しがるのはやめよう。ボストン・テリア・ファンシャーの心意気に反するし、健康面での心配もある。
そしてブルーの目、またはブルーがかった目の色は失格。また、色素の薄い黄色がかった目の色の犬もよくない。前述のとおり、目の色は真っ黒が健全だ。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
股関節形成不全
レッグペルテス病
角膜ジストロフィー
頭蓋下顎骨症
若年性白内障
先天性
その他
クッシング症候群
心嚢疾患
心臓腫瘍
難産
耳介脱毛
パターン脱毛症
アトピー性皮膚炎
魅力的なところ
明るく、楽しく、チャーミングな性格。
環境適応能力もあり、動じない朗らかさん。
どんな悪ふざけにも参加する遊び好き。
人なつこくフレンドリー。
飼い主だけにべったりな甘えん坊さんの一面も可愛い。
テリア・タイプは好奇心や向上心も高く、ゲームのようにいろいろ覚える。
感受性こまやか。飼い主の声によく反応してくれる。
小さいけれど番犬(アラームドッグ)向き。
小さいけれどけっこうパワフル。ジョギングのお伴もできる。
ボール遊びが大好き。
早期から慣らせれば、子どもや犬と仲良くなれることが多い。
短い毛はよく抜けるけれど、手入れは簡単。
大変なところ
系統や生い立ちにより性格の差にばらつきがあって、見極めが難しい。
日本ではパピーミル出身が多いせいか、繊細で依存心が強く、適応力の低いタイプもいる。
テリアの血が強いタイプは興奮しやすく、落ち着きがない。
ブルの血が強いタイプは落ち着きはあるが、頑固っぽい。
テリア・タイプは、音や動きに敏感でアラーム・ドッグになる分、集合住宅では無駄吠えが問題になりやすい。
日本には虚弱タイプもいる。よいブリーダーを探すことを頑張る必要がある。
本来の本犬種はパワフルでエネルギーいっぱい。インドア派の飼い主には不向き。
感受性豊かなので厳しすぎるトレーニングもNGだが、かといって優しすぎる飼い主も主導権を握られる。
遺伝性疾患は割と多い。
キャリーバッグで公共交通機関に乗るのはちょっと厳しい重さ。
暑さに弱いので熱中症に注意。夏期の散歩は早起き必須。
寒いのも苦手。
まとめ
歴史がまだ浅い犬種。血統差、個体差があり、性質が一定ではない
なにしろボストン・テリアは性格がいい。人なつこくフレンドリーで、明るく天真爛漫で面白い。遊び好きで、悪ふざけも好きでなんとも楽しい。そして環境適応能力も高い。物事に動じない大らかな脳天気な犬。そういうキャラクター(性質)は飼いやすい。
パピーミル→ペットショップなど劣悪な環境の生い立ちでない限り、本来のボストン・テリアは虚弱でもなく、過敏でもなく、飼いやすいコンパニオンの鑑(かがみ)のような犬種である。だから子犬の入手先を間違えなければ、それほど飼育が困難な犬ではない(あくまでもほかのもっと厄介な犬種と比べてである)。
ただ、ボストン・テリアという犬種ができて120年ほど。ほかの古い犬種に比べれば、固定化されてまだそれほど時間は経っていない。そのためか、血統や個体により性質に違いが見られる。ブルドッグの名残が強いタイプは落ち着きがあり、子どもにも寛容。かたやテリアの血が強く残るタイプは、機敏でハチャハチャしていて(=落ち着きがない)興奮度合いが高く、遊び好きで楽しいけれど、気が強くて優しい飼い主だと噛み付くワルになることもある。テリア・タイプは子どもにも手厳しいので、咬傷事故が起きる危険もある。
そのため優しい穏和な飼い主さんの場合、ブル・タイプならそこそこうまく共存できると思うが、テリア・タイプだと犬に主導権を握られる可能性がある。そう考えると、家系を見ないうちから「ビギナーにも飼いやすい」とは言うわけにはいかない。そこは注意が必要である。初めて犬を飼う人や、小さなお子様のいる家庭、体育会系ではない人などは、母犬、父犬、親戚犬とも面会し、しっかりとその血統の性格の特徴を見せてくれるようなブリーダーから犬を入手した方がよい。
ちなみに、ブル・タイプであってもテリア・タイプであっても、頑固な一面があることと、小型でもエネルギッシュな活動欲求があることは共通の特徴である。トレーニングは犬が飽きないように上手に教えること、そして毎日の散歩で十分エネルギーを発散させてあげることが重要だ。たっぷり遊んで満足したボストン・テリアなら、家で問題行動を起こすことはそうそうないだろう。もしイタズラや破壊行動、無駄吠えなどの問題行動があるようなときは、運動が足りているか、刺激が足りているかを再検討してみよう。
日本と世界の状況が違う
ボストン・テリアはAKCで「親しみやすくて、明るくて、面白くて、順応性がある」と太鼓判を押されているコンパニオンにもかかわらず、日本のボストン・テリアは、「神経質、繊細、気が強くて咬む、依存心が高く、留守番も苦手。虚弱体質」というケースが聞かれることも少なくない。これは血統差だけでなく、生い立ち(社会化不足、スタンダードを無視した繁殖など)も大きく関係していると思われる。そのため、本来の良い気質が活かされていない個体が多い。
これは、パピーミルや商業的な繁殖業者、バッグヤード・ブリーダー(小遣い稼ぎのために繁殖をさせている人)経由でペットショップ、ホームセンター、イベント販売などで売られることの多い小型愛玩犬種に共通の問題ではあるが、とくにボストン・テリアはその傾向が強い気がする。ボストン・テリアは感受性細やかという本来の気質があるので、それが反応してしまったのかもしれないし、あるいはまだ歴史が120年ほどしか経っていない犬種でかつ日本に渡ってきた数少ないボストン・テリアの乏しい遺伝子プールの中で繁殖を繰り返してきた結果なのかもしれない。本当のところは分からないが、性質面でも、外見的にも、そして健康面でも、スタンダードが目指すボストン・テリアから外れている犬が多い。
ボストン・テリアは、本来コンパクトなサイズで、環境適応能力も高く、朗らかで、コンパニオン(家庭犬)として日本でも飼いやすい犬種の1つとして成立すべきよい犬である。見かけの割には運動好きだし、ふざけすぎだし、暑さ寒さに弱いし、ドアベルに反応することもあるが、トレーニングはきちんとできる犬だし、飼い主の言うことをきちんと聞ける犬だし、引っ張られて骨を折るようなサイズでもない。よき家庭犬となる資質を十二分に持った犬である。だからこそ、日本でも世界に肩を並べる健全なボストン・テリアが増えることを心から願う。そのためには、真面目なブリーダーが増えるよう応援することも、ボストン・テリア好きの大事な使命である。
暑さ、寒さに弱いのは鼻ぺちゃ犬の宿命
短頭種は、ボストン・テリアでもパグでもフレブルでもボクサーでも、犬種的に気管が狭窄していたり閉塞気味な個体も多く、体内の熱を外へ送り出すラジエーター機能の効率が悪い。そのため暑さにめっぽう弱い。あれよあれよという間に熱中症になり、急に絶命するケースもあるので油断できない。
ボストン・テリアの飼い主は、夏場は夜明けのまだ涼しい時間帯に朝の散歩に行き、夜はアスファルトの熱も冷めた遅い時間に散歩に行くように頑張れる人でないといけない。また夏場は飛行機にも乗れないので、ゴールデン・ウィークやお盆休み、夏休みなどの暑い季節に、飛行機で帰省や旅行に行きたい人は不適。
またキャリーバッグやバギー(犬用乳母車)の中も案外熱がこもるものなので注意が必要だ。さらに外出時だけでなく、留守番時も温度・湿度管理には細心の注意を払うこと。とくに近年のマンションや家屋は気密性が高いので、家だからと安心していると、会社から帰ってみると自宅内で熱中症になっている例もある。
ましてや外出時にクルマの車内に犬だけ残すようなことは絶対にやめてほしい。ほかの犬種でももちろん熱中症の危険はあるが、ボストン・テリアなどの短頭種、そして気管や心臓に持病のある犬はとくに熱中症になるスピードが速いのでクリティカルだ。
そのうえ短頭種たちは、寒いのもとても苦手。スムースヘアだということもあるが、同じようなスムースヘアの犬種の中でもどうやらとくに寒がりのようである。冬場でも夏場でも、室温管理は気を遣う。また冷暖房をつけていても、サークルやバリケンの中には入れず、犬が自分で快適温度の場所へ自由に移動できる空間を用意してあげてほしい。
このページ情報は,2015/04/25時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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