図鑑
ジャック・ラッセル・テリア
小型犬だと思って甘く見るのは厳禁。
大型犬並みにパワフルなわんぱくテリア
英名
Jack Russell Terrier
原産国名
Jack Russell Terrier
FCIグルーピング
3G テリア
FCI-No.
345
サイズ
原産国
特徴
歴史
1994年制作の
アメリカ映画「マスク」 で、ジム・キャリー演じるスタンリー・イプキスの相棒として登場したジャック・ラッセル・テリア(以下、ジャック)のマイロ。この映画で急に知名度をあげたのが、本犬種である。ただ、映画に登場するマイロは、ジャックであるのは間違いないが、日本でいまよく見かけるジャックとはいささか風貌が異なる。マイロはサイズが大きいし、顔の形も巷で見かけるジャックの顔とは少々違った。
当時、ジャックは「永遠の雑種」と言われるくらい姿形に差があった。それもそのはずで、マイロが映画に出た頃は、まだFCI(国際畜犬連盟)で純血種として公認されていない。暫定公認されたのは2000年のことだ。つまり、意外にも21世紀になってやっと純血種として認められた新しい犬種なのである。純血種と認定されると、犬種スタンダードがどうあるべきかのルールが必要で、外貌も性質も規定ができる。
とはいえ、AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)でのジャックはまだ未公認のままである。これほど日本でよく見かける犬なのに、アメリカでは純血種として認められていないというのはちょっと驚き。ただし、ジャックの犬種改良中に分岐したパーソン・ジャック・ラッセル・テリアは、現在AKCで公認されている。
このように、純血種として認められたのは最近のことだが、犬種自体は新しく作られたというわけではない。1800年代にイギリスのジョン・ラッセル牧師によって作出された。牧師様が作り出した割にはずいぶん血気盛んな犬だなぁと思って調べると、ラッセル牧師は「射撃、釣り、狩猟、ボート、喧嘩、お酒を飲んで歌うこと」がお好きな方だったらしい。彼は、マーストンという村近くで牛乳屋が連れていた珍しいテリアに一目惚れし、すぐ牛乳屋を説得してその場で購入した。そのメス犬は「トランプ」と名付けられ、この犬こそが、牧師の名前を後世に残すベースとなった犬だ。
トランプは、ワイアー・フォックス・テリア(その名のとおりキツネ狩りの犬)とブラック・アンド・タン・テリア(いまは絶滅。マンチェスター・テリアの祖先とされる古いテリアで、ネズミ退治用の作業犬)のミックスと思われる風貌だった。そこでラッセル牧師は、ワイアー・フォックス・テリアより足が少し短く、頭部も幅広なトランプをベースに、狩りに使うときにフォックス・テリアと同じくらい走れる脚力をつけるために少し足を長めにして、同時にキツネを追い出すためにキツネの穴に潜れるような小型のテリアをつくることを目指した。少し足が長めで体高がある体型というと、パーソン・ジャック・ラッセル・テリアの方が、本来の彼の望んだ姿なのではないかと想像する。
犬種改良の結果、血気盛んで強い猟欲を備える性質は同じのまま、体高とプロポーションが異なる2つのバラエティーに発展した。片方が、体高が低くわずかに体長が長い本犬種ジャック・ラッセル・テリア、そしてもう片方が、体高が高く横から見たらスクエアな形(体高:体長が1:1)のパーソン・ジャック・ラッセル・テリアだ。
犬種スタンダードに載っている沿革はここまで。でも原産国はイギリスで、改良国としてオーストラリアと記載があるのにそれについては触れていない。調べると、オーストラリアで改良されたジャックがいて、イギリス系に比べると少し足が短めで性質が少しマイルドになっているという。いま日本に入ってきているジャックはオーストラリアの血統が多いとのこと。たしかに日本にいるジャックは、足が短めで、ころんとした体型の犬が多い。通常日本はアメリカ経由で入る犬が多いけれど、ジャックはAKCで公認されていない(=血統書がでない)関係上、オーストラリアから輸入される個体が多いのかもしれない。
でも、オーストラリアで性格を多少マイルドに改良したといわれても、あくまでもジャックはジャック。キツネなどの小動物を狩る猟犬であり、小さくてもどの犬種より最も気の強いテリアである。キツネというのは肉食動物で、それなりに強い。それにも負けない勇猛さ、気の強さ、負けず嫌いな犬であることが必須条件なのだ。
ジャックは体重5〜8kgくらいの抱っこできる小型犬で、顔も可愛いせいで、もしかしたら日本でいちばん勘違いされている犬種といっていいかもしれない。「小さくて、可愛い」「つぶらな黒めがちな瞳と、テリアらしい、もしゃもしゃヘアが愛くるしい」「ちょっと短足で愛嬌のある姿」ゆえに誤解され、うっかりペットショップで衝動買いし、そして飼い主が咬まれ、手におえなくなって、悲しいことに手放されてることの多い上位の犬種である。
そうはいってもマイロのブームから約20年。日本人も、ジャックの本性に気がついてきた。ファンシャーが愛を込めて「ジャック・ラッセル・テロリスト」と冗談まじりに命名しているのを聞くが、それだけジャックの真の姿を理解する人が増えた証といえるだろう。
外見
コンパクトボディではあるが、力強いワーキング・テリア(作業用のテリア)。体高より体長が長い(つまり少し胴長)。しかしケアーン・テリアや
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア のような短脚テリアではない。かたやワイアー・フォックス・テリアやウェルシュ・テリアのような足長テリアほど足は長くない。どちらにも属さない、テリアの中で特殊な体型といえる。
胸の深さ:前肢の肘下〜地面=1:1。胸が厚く、深いしっかりした胸板なので、そのために足が短めに見えるということもある。ひ弱そうな胸はジャックらしくない。
肘から後ろの胴回りは約40〜43cm。意外とごろっとしていて、たくましい。
パピヨン や
ヨーキー などの華奢な小型愛玩犬のボディの作りとは根本から違う。どう見ても屈強なハンターの体つきだ。
力強さだけでなく、しなやかで柔軟性のあるボディも特徴の1つ。小さな穴の中でも巧みに方向転換できることが、大事なポイントらしい。キツネを追った狭い穴の中でも器用にUターンできる、柔らかさとしなやかさを併せ持つ。
スカルは平らで適度な幅があり、目に向かって次第に狭くなりさらに幅の広いマズルに向かって先細る。目は小さくてダーク。目の縁は黒。目の形はまん丸ではなく、アーモンド型で鋭い表情。やはりジャックに愛らしさを求めるのはちょっと違う。生粋のハンターらしい目をしてこそジャックであり、愛玩犬とは似て非なるものである。鼻の色は黒。
アゴの頑丈さも、ジャックの特筆すべき点だ。「顎(あご)はたいへん強く、厚みがあり、幅広く、力強い」とスタンダードにあるが、ジャックはボディサイズに比べてアゴが大きい。そのうえ、歯は強く、シザーズ・バイト(口を閉じたとき、上顎の切歯<前歯>が下顎の切歯の前にわずかに触れる、ハサミのような咬み合わせ)で咬み合う。ネズミやスズメ、ハトを瞬殺することがあるとも聞くし、トレーニングできぬまま問題児に育ててしまい、飼い主を咬み、手を血だらけにしてしまう事件も聞く。
ジャックの手ごわい点は、強い性格に加えて、このアゴの強さのせいもある。動物病院で保定が難しく、診察の際に咬まれる事件が起きやすいので、厄介な存在となっていることも少なくない(もちろんトレーニングをきちんとされたジャックは、他人を咬むようなことはしない)。
理想体高は、25〜30cm。そして体重は、体高5cmにつき1kg相当とされる。つまり体高が25cmの犬ならば約5kg、体高30cmの犬ならば約6kgということ。すなわちジャックの理想体重は、体高から考えて約5〜6kgということになる。
しかし日本でも外国でも、規格外に大きい犬はよく見られる。日本のファンシャーの話によると、国内では約4〜10kgの個体が見られ、幅があるという。また日本で繁殖を繰り返すうちに、小さめの個体が増えているという話もある。ペットショップ用のパピーミルや繁殖業者が行う商業的な繁殖ではなく、本物のファンシャーの手によるスタンダードを追求するブリーディングを継続しないと、日本の中でふたたび「永遠の雑種」に逆戻りしかねないので、キチンと見守っていく必要がある。
被毛は、3種類が存在する。
・スムース(滑毛) :密生した、なめらかでツルツルしたごく短い毛
・ブロークン :スムースとあまり変わらないが、頭部に口ひげや眉毛があり、ときにあごひげもある
・ラフ(粗毛) :テリアらしい毛。頭部を含む全身を、堅くて粗い、密生した毛が覆っている
同じ両親犬から生まれた、同胎のきょうだい犬の中でも、この3種が混在することがある。また素人目には、ブロークンとラフの差がはっきりわからないこともある。でもスタンダードにわざわざ「スムースまたはブロークンにするために被毛を抜き取ってはならない」と明記されているところを見ると、ショーに出すときに、本来の毛を抜いて出陳する例もあったのだろう。抜き取れば一時的にスムースやブロークンに見えるくらい、差が少ない個体もいるのかもしれない。ともあれ家庭犬でそんなことをわざわざする人はいないとは思うが、自然に反した方法で毛のタイプを変えるのはよくない。
ただ、どの毛質であっても、猟犬らしく、厳しい風雨に耐えられるウォータープルーフの毛であることが必須。柔らかい毛、密生していない薄い毛はNG。雨にも負けず、藪や泥にも負けない堅い毛であることが、テリアであるジャックのプライドだ。
毛色は、すべてにおいてホワイトが優勢(白地が基本)であること。ホワイト&ブラウン斑、ホワイト&ブラック斑、ホワイト&ブラック&タンなど。茶色のマーキングは、ごく明るい茶から、チェスナットのような濃いタンまである。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
若年性白内障
てんかん
レッグペルテス病
肥大型心筋症
先天性
その他
魅力的なところ
大型犬と暮らすようなパワフルな暮らしが楽しめる。
バリバリのアウトドア・アスリート系。登山、マラソンなど1日中連れ回しても笑顔でついてくる。
小型犬の生活費で、大型犬と暮らすようなもの。
テリアらしく元気いっぱい、勝気で活発な性格。
心が強く、物事に動じない。環境適応能力もある。
どんな悪ふざけにも参加する遊び好き。
トレーニング性能は高い。
運動性能も非常に高い。
ベタベタはしないが、ほどよく甘えてくる可愛さ。
番犬(アラームドッグ)になる。
ボール遊び、大好き。サッカーボールにくらいついたら離さない。
ドッグスポーツをしたい人向き。
犬にトレーニングするのが趣味の人向き。
大変なところ
タフさ、気の強さは犬種の中でもトップクラス。
大型犬をコントロールできる技量と精神力と体力が飼い主に必要。
ガウガウ犬が多い。流血戦も日常茶飯事。
オンオフが激しい。興奮しやすい。
テリトリー意識、警戒心、自己主張の強いタイプが多い。
ドッグトレーナーに育て方を学ぶのが当たり前。
インドア派の飼い主には不適。
ビギナーの飼い主にも無理。
家系により、体格差、性格差がある。かなり大きくなる子もいる。
どの毛のタイプでも密生した毛なので抜け毛は多い方。
ラフヘアやブロークンヘアはトリミング代がかかる。
敏感でテリトリー意識が高いので、他者の気配によく反応する。吠え声が問題となる住宅では要検討。
まとめ
小粒だけれど破壊力抜群。賢く芸達者な手強いテリア
映画「マスク」 のマイロから約20年。そこで火がつき、すっかり日本でもおなじみになったジャック・ラッセル・テリア。当時、公園やドッグランで出会った子たちは「マイロ」という名前が多かった。またそのほかの映画やテレビCMでもジャックはよく登場している。最近ではアカデミー賞作品賞を受賞した
フランス映画「アーティスト」 (2011年)に出た名優犬アギーが有名。同映画で、カンヌ国際映画祭で、
「パルム・ドッグ(Palm Dog)賞」 を授賞している。アメリカ・ロサンゼルスのチャイニーズ・シアターに、マリリン・モンローやクラーク・ゲイブルなどの名だたる名優と同様に、アギーの「足型」が2012年に残された(そして2002年生まれのアギーは2015年8月没)。
日本のテレビCMなどでも、ジャックはよく見かける。これほど芸能界に引っ張りだこなのは、可愛い風貌のおかげもあるが、それだけ訓練性能の高い犬だからである。ジャックはとても賢く、正しく訓育すればグングン伸びる、非常にやりがいのある、おもしろい犬である。そのためか、普段仕事で
ジャーマン・シェパード・ドッグ や
ドーベルマン を訓練している、警察犬訓練士など腕利きのトレーナーたちが、プライベートで1頭目はシェパード、2頭目にジャックを選んでいるケースを何度も見てきた。つまりトレーニングを生業とする、訓練のプロを満足させるトレーニング性能と体力のある犬ということだ。
裏を返せば、素人が簡単に手を出せる犬ではない。
頭のいい犬は、よく切れるナイフと同じで、使い方を間違えると飼い主がケガをする。そのうえジャックは賢いうえに、血気盛んな気の強いテリアの血が標準装備。小動物やスズメなどに対する狩猟本能も強い。サイズは小さいけれど、性質面では非常に手ごわい犬種である。ファンシャーが愛を込めて言う、「ジャック・ラッセル・テロリスト」は、まんざら嘘ではないと思う。そしてサイズが小さいくせに、疲れ知らずでものすごくタフ。これまたファンシャーが言うところの「戦闘機のエンジンを積んだ軽自動車」という表現も的を射ており素晴らしい。日本でもジャックの本当の姿を理解したうえで、この犬種の魅力にはまっている人が定着している証しである。
ただ、それでもまだまだ、捨てられるジャックは少なくない。素朴な愛らしい風貌や小型サイズゆえに衝動買いされることは、ジャックにとって実に不幸なことである。
この犬種を選ぶ前に塾考すべきことは多い。とにかく小型犬を飼うつもりで手をだすのはやめるべき。ハイパーで活発な大型犬を飼いたいのだが(=飼うだけの体力も精神力も技量もある)、住環境やその他の条件のため、大型犬を飼養することが叶わないという人には、ジャックほど適切な犬はいない。小型犬の食費・生活費しかかからないのに、日本アルプス級の登山のお供もできる体力がある。キャリーバッグに入れて電車や新幹線にも乗れるコンパクトさなのに、フルマラソンの伴走もしてくれる。ここまでタフな小型犬は、ジャックぐらいなものだ。
ジャックの体は小さいが、あの小粒なボディに詰め込んだパワーは底知れない。それだけハイパワー、ハイパフォーマンス。その活動性や賢さを魅力と感じるか、「扱い切れない」と嘆くかは、飼い主次第。どの犬でも選ぶ前によく考えてほしいのは同じだが、とくにジャックはよく考えてから迎えてほしい犬種だ。
流血戦でも驚かないくらいの飼い主であってほしい
ときどき穏和なタイプもいるので、血統差が大きい犬種だなぁと感じるが、もともと小動物や小鳥を咬み殺すDNAを持つ犬。血の気の多い、活動的すぎる犬は困るという人は、最初からジャックは選ばない方がよい。「ドッグランでほかのワンちゃんと遊ばせるのが夢」という人も、基本的にはやめておこう。ジャックはガウガウ犬が多く、みんなと仲良く遊べるタイプは少ない(少なくともちゃんとしたトレーニングは必要だ)。犬同士の上下関係にも厳しく、無礼者は許せないタイプ。誰とでも仲良く遊んでほしいというなら、
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル や
ビーグル 、
ゴールデン・レトリーバー 、
ラブラドール・レトリーバー など、穏和で平和主義の犬種を選ぶのが近道。
ジャックの飼い主さんに話を聞くと「流血しても驚かないくらいの飼い主同士じゃないと集まれないし、一緒に遊ばない」とのこと。すなわち飼い主も、ジャック並みに心の強い、肝のすわった人が適任。ジャックはテリアなので、興奮のスイッチも入りやすい。何かトラブルが起きたときに、飼い主がキャーキャー騒いでしまうと、ますます犬の興奮が強まり、事態が悪化しかねない。ジャックの興奮スイッチを、ピシリとオフすることができる、強い精神力、淡々としたオーラのある人が飼い主であることが望ましい。優しい人、温和な人、優柔不断な人だと、ジャックの方が主導権を握る可能性が大。
小さな子供がいるおうちでは、子供のテンションに犬も同調してしまい、落ち着きのない興奮の高い犬になる可能性も考えられるので要注意だ。テリアはプライドも高いので、子供が無作法に犬を抱っこしようとしたりすれば、咬みつく可能性もある。親がきちんと、子供も犬も監視・指導できないのであれば、ジャックを迎えるのは勧められない。
ただ何度も言うように、ジャックはとてもトレーニング性能の高い犬である。よい飼い主に恵まれ、よいトレーニングとたっぷりの運動をさせてもらっているジャックなら、誰彼構わず咬みつくようなことはしない。ジャックの明るさ、好奇心の強さ、ボール遊び好きなどの楽しいキャラクターと小ぶりなサイズは、子供のよき遊び相手になれる可能性も秘めている。分からないこと、困ったことがあれば、プロのトレーナーに相談するようにすれば、子供とジャックの同居が絶対に無理ということではないように思う。やはりそこは飼い主の技量、判断力などが試される点である。
しかし、ご老人にジャックをプレゼントするのはやはり賛成できない。雑種っぽい素朴な外貌、手頃なサイズゆえに、老夫婦や一人暮らしの高齢者に、息子夫婦などから「寂しいだろうから犬でも飼ってみたら」と、ジャックをプレゼントするケースを何回か見てきた。よりにもよってジャックを贈るなど、言語道断なのだが……。
ジャックは膨大な運動量が必要な犬であり、精神的な刺激も必要なハイパーな犬である。それらが満たされないと、無駄吠え、咬み癖、破壊行動などどんな問題行動に転じるかわからない。結果、手に負えなくなってしまい、手放す(=殺処分)。近所のおじいちゃんが連れていた、いつも往来で吠えながら伸縮性ロングリードで縦横無尽に散歩していたジャックは、1年もしないうちにいなくなったけど、いったいあの子はどこへ行ったのだろう……。こうした話はほかでも聞いた。
登山やジョギングの相棒もOKの強靭な体力があるうえ、ジャックは小型犬ゆえ体高も低く、すばしこいので、腰をかがめて捕まえたり、リードをつなげるのも一苦労ということもある。今までテリアや大型犬飼育の経験豊かなご老人ならともかく、そうでない高齢者の伴侶犬としてはジャックはまったくオススメできない。
遺伝性疾患はそれほど多くないが、病気の少ない家系を探す努力を
テリア全般は比較的頑強な健康体が多く、遺伝性疾患も多くない。ジャックも同様で、犬種改良の歴史の長い他犬種に比べると、かかりやすい病気は少ない方。
しかし映画などで有名になり、アメリカで急に頭数を増やした犬であるため、一時は正常で健全な繁殖が危ぶまれていたようだ。それは日本でも同様だと考えてまず間違いない。またそもそも日本国内の遺伝子プールが少ないので、ますますその心配は高まる。遺伝性のてんかん、骨関節の病気であるレッグペルテス症などもあるし、遺伝性ではないとされるが聴覚障害の犬もでている。ジャックを迎えたいと決めたなら、両親犬の健康チェックをきちんと行い、遺伝性疾患の淘汰を考えている正しいブリーダーから迎えることを勧める。
毛の手入れは、毛のタイプにより違う
スムースヘアなら週に1〜2回のブラッシングをして、抜け毛を取るくらい。シャンプーも自宅で出来るので、トリミング代はかからない。ただスムースであっても、ブロークンやラフであっても、ジャックたるもの、冷たい雨にも負けない全天候型の耐水性のある被毛を備えてないといけないから、毛はみっしりと密生している。そのため、思いのほか抜け毛は多いとファンシャーは強調していた。もしもペットショップで「スムースヘアだから毛は抜けません」と言われても、その言葉は信じないほうがいい。
テリアと同じラフヘアのタイプは、プロのトリマーに依頼することが普通。そのため1〜2か月ほどに一度、トリミング代がかかる。正式にはテリアのラフヘアは「ストリッピング」といって、毛をカットするのではなく、毛を抜き取る作業をする。これは熟練したプロがやれば犬に痛みはなく、テリアらしい堅い毛を育てるために必要なことである。ただ、この技術のあるトリマーが近所にいるかどうかは難しいところだ。またストリッピングは、通常のカット代より技術料が高い。子犬を入手する前に、近所にテリアを得意とするトリミングサロンがあるか、日々の毛の手入れはどうすればよいかなど、ブリーダーなどからアドバイスを受けておこう。
ブロークンのタイプは、家庭犬として飼っている場合、自宅でシャンプーし、顔の口ひげや眉毛を自分で簡単にカットしている家庭も少なくないが、ラフヘア同様にプロに毎月お願いする家庭もある。年に数回、おめかししたいときだけトリマーさんにお願いすることもあるようだ。
総じて、毛の手入れにかかる手間やコストは、スムース<ブロークン<ラフ の順に高くなる。
毎月かかる手間やコストなので、そうしたことも踏まえて、毛のタイプを選ぶようにしたい。ちなみにスタンダード的には、毛の種類が違えど、中身の性質は同じとされる。一説では「スムースヘアは気が強い」と噂されることもあるが、犬関連施設で働き、多くの犬を見てきて、かつご本人もジャックと12年来生活を共にしているファンシャーの話では「毛のタイプにより性格の差はそう感じられない。だいたいみんな一緒の気がします」とのこと。血統差、環境差、トレーニング差などはあれど、毛質の差はそうないと思われる。
このページ情報は,2015/10/15時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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