図鑑
ミニチュア・シュナウザー
英名
Miniature Schnauzer
原産国名
Zwergschnauzer
FCIグルーピング
2G 使役犬
FCI-No.
183
サイズ
原産国
特徴
歴史
本犬種はテリアの仲間と混同されていることが多く、複数の資料を読めば読むほど情報が錯綜している。最初にそこを整理したい。
まず本犬種は、FCIやJKCでは、第2グループ「ピンシャー&シュナウザーほか」の作業犬グループに分類されている。原産国ドイツでも同様。すなわちシュナウザーは、第3グループの「テリア」には含まれていない。シュナウザーと名のつく犬種は、このミニチュア・シュナウザーのほかにスタンダード・シュナウザーとジャイアント・シュナウザーがいるが、彼らもみな第2グループである。
しかし、アメリカのAKC(アメリカン・ケネル・クラブ)で、ミニチュア・シュナウザーは「テリア」グループに分類されている。これが日本で情報が錯綜する原因ではないかと思う。ちなみにスタンダード・シュナウザーとジャイアント・シュナウザーは、AKCでも「ワーキング」(作業犬)グループに分類されているのだが、なぜかミニチュア・シュナウザーだけがテリア扱いなのだ。
本犬種は、原産国ドイツではZwergschnauzer(ツべルグシュナウザー)と呼ばれている。ツべルグとは「矮小、ミニチュア」の意。そして、シュナウツとはドイツ語で「あごひげ」、シュナウザーは「あごひげを生やしたやつ」の意味だ。テリアもたいがい顔がもしゃもしゃした毛で覆われているが、ドイツのシュナウザーとは成り立ちが違う。
ドーベルマン の項目でも書いたが、シュナウザーは、テリアではなく、ピンシャーと近い。
一方「ピンシャー(ドイツ産)=テリア(イギリス産)」と書かれていることもあるが、これも違う。そもそもピンシャーという名称は、一定の形や犬種グループを呼んだのではなく、毛質を指した言葉だった。当時はフランス語の「グリフォン」と同じく、ボサボサ毛のラフヘアのことをピンシャーと呼んだという。しかしその後ドイツ語圏では、ピンシャーは、ボサボサ毛のアーフェン・ピンシャーを除いて、みんなツルツルした滑毛種(スムースヘア)の犬のことを指すようになった。ドーベルマン・ピンシャー(=ドーベルマン)やミニチュア・ピンシャーなどだ。
かたや、ボサボサのラフヘアやワイヤーヘアだったワイヤー(ラフ)ヘア・ステーブル・ピンシャー(訳すると「ボサボサ毛の農家のピンシャー」)は、今ではスタンダード・シュナウザー(ドイツ原産。体重14〜20kg。日本ではほぼ見ない)と呼ばれ、ワイヤー(ラフ)ヘア・ミニチュア・ピンシャー(訳すると「ボサボサ毛の小さなピンシャー」)は日本でもよく見かけるミニチュア・シュナウザー(ドイツ原産・体重4〜8kg)と、名前が変わっていった。
そうした歴史のせいか、シュナウザーは体躯構成や頭蓋骨の形がピンシャーと類似している。シュナウザーを丸刈りにすると、若干のプロポーションの差はあれど、顔の形や体つきが見事にピンシャーになるという。
よってミニチュア・シュナウザー(以下、M・シュナ)は、テリアの仲間ではなく、ピンシャーの親戚だということをまずご理解いただきたい。小型のシュナウザーの犬種改良は、ドイツのフランクフルトで19世紀末から始まったようだが、その頃は「粗毛のミニチュア・ピンシャー」と説明されていた。
スタンダード・シュナウザーより小型のM・シュナをつくるために、スタンダード・シュナウザーやボサボサ毛の小型犬アーフェン・ピンシャーが交配に使われた。また小型化のため、ほかの犬種の血も導入したという説があるが信憑性はない。犬種スタンダードにも記述はない。
ただ、ボサボサ毛同士のアーフェン・ピンシャーとM・シュナは、最初は同じ犬種扱いをされており、1903年に別犬種に分かれたという。すなわちM・シュナと最も血が近い犬は、アーフェン・ピンシャーだということだ。
でもスタンダード・シュナウザーもM・シュナも、ドイツの農場の犬として、ネズミ捕りの仕事をしていた。イギリスのテリアの仕事と同じだ。そして遊び好きで、利口で、頑固で、怖いもの知らずという性格や、アクティブでタフで敏捷性が高い運動能力も、テリアと似ているところはある。海を隔てたイギリスとドイツで、優秀なネズミ捕り犬は同じような性質のものが生き残ったのか、それともやはりどこかで混血があったのか、その資料は見つからなかった。
とはいえ、シュナウザーの方がテリアよりは性格がマイルドで、飼い主とのコンタクトをより望み、しつけしやすいと一般に言われる(あくまでもテリアとの比較。
キャバリア などのスパニエル系や、
プードル 系、ガンドッグ系の方が、素直で従順なのでしつけはしやすい)。
アメリカには、まず戦前に、スタンダード・シュナウザーやジャイアント・シュナウザーがヨーロッパから入り、遅れてM・シュナが入った。でも第二次世界大戦の数年後には、M・シュナの人気が爆発し、一時はトップ3に入っていたという。
日本にいつM・シュナが輸入されたのか確かな記録は発見できなかったが、すでにM・シュナ人気が高かったアメリカ軍関係者が(自分のペットとして)戦後の日本に連れてきたという説がある。しかし当時の日本にはトリミングサロンが今のようになかったため、シュナウザーやテリアのような特別なカット技術が必要な犬より、
マルチーズ や
ヨーキー などカットの必要がなく自分で手入れができるロングヘアの洋犬の方が先に受け入れられたようだ(今でこそマルチーズやヨーキー、
シー・ズー などは、ペットクリップといって手入れしやすく短めにカットする家庭も多いが、本来はそのままロングヘアを保つのがスタンダードだ)。M・シュナが現在のように大衆化したのは、トリマーという職業がポピュラーになった、ごく最近のことである。
外見
あごひげをたくわえて思慮深い顔にも見え、味わい深いダンディな表情で人気があるM・シュナ。小型犬サイズでこの渋いあごひげ、というのがよけいに可愛い。オスメスともに、体高30〜35cm、体重4〜8kg。性差はあまりない。体高は1cm以内の誤差だと「欠点」となり、1〜2cm以内の誤差だと「重大欠点」、そして2cm以上の誤差だと「失格」。
最近の日本では、スタンダードで認められていないティーカップ・プードルや豆柴と同様に、どうやらM・シュナ界でもレアなぬいぐるみを欲しがるかごとく、矮小化された犬を売り出しているところもある。体高25cmなどの極小シュナを小ぶりで飼いやすいなどと宣伝しているが、それは純血種として認められていないサイズである(=雑種と同じ扱いで、繁殖に使ってはいけない)ばかりか、骨格や内臓の奇形など身体の健全性に影響を及ぼす危険があるので、「小さくて可愛い」などの誘惑に負けて安易に手を出さない方がいい。
これから一緒に暮らすなら、小さいことよりもできるだけ健康な方がお互いがハッピー。健康優良児なら獣医療費はかからないし、具合の悪い犬の面倒を一生見守るというのは時間や手間や心労がかかって相当の覚悟が必要だ。また当たり前だが、サイズが固定されているわけではないので、高いお金を出して珍しい矮小シュナを買っても、普通サイズのM・シュナに成長することも多いと想像できる(ティーカップ・プードルや豆柴と同様の問題だ)。
さて健全なM・シュナは、力強くてがっしりしている。弱々しい華奢なタイプではない。ボディは丸太のようにごろっとたくましく、けっこう頑丈である。また、見た目よりも中身が詰まっている感じで、抱きかかえるとずしりと重たい。小型愛玩犬だからといって、抱っこ犬と勘違いしないように。日本ではスタンダード・シュナウザー(体高45〜50cm、体重14〜20kg)に会えるチャンスはそうそうないけれど、M・シュナは、スタンダード・シュナウザーをそのまま縮小コピーしたような体格である。
体高:体長=1:1の、横から見たらほぼスクエアな体型。首は力強く筋肉質で、見事なアーチを描く。喉の皮膚に皺はなく、ピンと張っている。デューラップ(たるたるした喉の下のたるみ)は欠点となる。
頭部の長さ(鼻の先端〜オクシパット<後頭部の骨のでたところ>):トップライン(キ甲部<両肩の間にある背中の隆起>〜尾の付け根)=1:2。……文字で書くと分かりづらいが、ボディとの割合を考えるとけっこう顔が大きめだということだ。そのうえあごひげや眉毛がもしゃもしゃしているので、よけいに顔が大きく見える。頭部が大きめというのは、乳幼児と同じく可愛らしい印象を強めるものなので、これもM・シュナの個性的なキュートさを醸し出すポイントなのかもしれない。
ダーク(暗色)な色をした目は、中くらいの大きさでオーバル(卵形)。前方に向かって付いている。耳はドロップ・イヤー(垂れ耳)で、付け根が高く、V字形。こめかみに向かって前向きに付いている。両耳の折れ目は、スカルの頭頂を越えてはならない。
しっぽは、サーベル状もしくは鎌状に保持するのが自然な形。ただ、ショードッグはじめシャープさを好む日本やアメリカの飼い主の間では、断耳や断尾をする習慣がまだ残っており、切り取ることそのものは違法ではない。しかしヨーロッパの多くの国では、動物福祉の観点からすでに断耳・断尾は禁止されており、街中でもショー会場でも見かけるのは垂れ耳、背中に向かってかかげた自然な尾の犬ばかりである。日本でも垂れ耳のM・シュナは増えているように感じる。
被毛は、密なワイヤー(粗毛)。密生した下毛と、短すぎない上毛の二重構造(ダブルコート)。剛毛でもウェービーでもない。でも四肢の毛は背中の毛より柔らかめでフワフワしており、そのため足が太めに見えて、いっそう可愛らしい。
前頭部や耳の被毛は短い。耳の中にも毛が密生していて外耳炎になりやすいため、トリミングの際に耳の中の毛を抜いてもらい、蒸れないように手入れする。
シュナウザーの最もご自慢の、柔らかすぎないヒゲと、ふさふさ眉毛のお手入れも大事。口の周りは、ごはんや水で汚れやすくて変色しやすいので、食後には拭き取ってコーミング(櫛入れ)すると、清潔さと美しさが保てる。また四肢の毛も、散歩のあとにでもサッとスリッカーでとかすと、ふわふわしてきれいになる。内股や腋(わき)はこすれてもつれやすいので、毎日行おう。何もしないで、可愛くて清潔感あふれるM・シュナでいられるわけではない。毎日の毛の手入れができる人向きの犬。
さらにシュナウザーは、1〜2か月に1回トリミングやバリカンで刈るクリッピングが必要。地域性もあるが、トリミング代は5000〜8000円ほど。もしかしたら飼い主の美容院代よりかかるかもしれないおしゃれさんなので、そのつもりで。お金をかけずに、ダンディで愛らしいM・シュナは維持できない。
また、ショードッグのような正式なスタイルにしたい場合は、本来の堅い毛を維持するためにバリカンではない「ストリッピング」という毛を抜き取る独特の方法で整える。こちらは費用がよりかさむし、その技術を持つサロンを探す必要がある。ちなみにバリカンで刈ると、ソルト&ペッパーでもブラックの個体でも背中の毛が退色(脱色)しやすく、またシュナウザーらしからぬ柔らかい毛になってしまう。そのため家庭犬でも、年2〜3回ストリッピングをプロにお願いしている犬もいる。
毎日の毛の手入れや、毎月のシャンプー/トリミングを行うことができる人だけが、ワイヤーヘアの犬を飼う資格がある。ペットショップなどで、購入後の必要経費(トリミング代など)の説明がない場合もあるが、きちんと確認してからよく検討してほしい。
FCI、JKCなどで認められる毛色は4つ。
・漆黒 (下毛もブラック)
・ソルト&ペッパー (濃い鉄灰色からシルバーに近い色までのさまざまなグレーの混色。下毛はグレーが理想)
・ブラック&シルバー (下毛は基本ブラック。目の上、頰、ヒゲ、喉、胸の全部の2つの三角形、フロント・パスターン<前足の中手。地面より少し上にある肉球より下の部分>、足、後肢の内側、肛門まわりはホワイト・マーキング)
・純白 (下毛もホワイト)
ちなみにAKCでは、ホワイトのM・シュナは認められていない。
ソルト&ペッパーでも、子犬の頃はブラック&シルバーのように濃かったり、年をとるにつれ退色してシルバーのようになったりすることも多いようだ。
また、レバー(肝臓色のような赤褐色)、レバー&タン、レバー&ペッパー、パーティカラー(地色に1色または2色のぶちがあるもの)などの変わった色の犬を売り出しているところもあるようだが、こうした色は認められていない。遺伝疾患を引き起こす事態も想定されるので、スタンダードで認められた健全なカラーの犬を選ぼう。
毛色
なりやすい病気
遺伝性
若年性腎疾患
レッグペルテス病
糖尿病
ファンコーニ症候群
フォン・ヴィレブランド病
停留睾丸
若年性白内障
先天性
その他
高脂血症
膵炎
眼の感染症
シュナウザー面皰症候群
慢性僧帽弁不全
椎間板疾患ハンセンI型
巨大食道
アトピー性皮膚炎
尿結石
魅力的なところ
明るく、快活。チャーミングな性格。
小型なのにダンディな風貌で、また軽快な動きも可愛らしい。
テリアの仲間よりは訓練しやすく、また悪さは少なめ。
飼い主とコンタクトをとるのが大好き。
飼い主との関係性が強く、飼い主から遠く離れることは少ない。
知らない人にはそっけなく、飼い主だけに忠実なところもたまらない。
活動的で遊び好きなので、ドッグスポーツも得意。
日本初の小型犬の警察犬になった犬もいる。それだけ賢く、やればできる犬。
ヨーロッパタイプは落ち着きがあり、肝がすわっているらしい。
小型犬でもアラームドッグ(番犬)になる。
大変なところ
系統や生い立ちにより、性格の差にばらつきがある。
日本には神経質、びびり、過敏、興奮が高いタイプもいる。このタイプは飼いにくい。
前足をバタバタさせて要求したり、落ち着きのない犬もいる。
日本ではパピーミル出身が多いせいか、繊細で依存心が強く、適応力の低いタイプもいる。
アメリカの本によると、子どものいる家庭では不適とある。
領土防衛、警戒吠えがあるので、集合住宅では要検討。
遊び好き、超活発のため、高齢者の伴侶には難しいかも。インドア派の飼い主にも不向き。
トレーニング性能はよいが、優しすぎる飼い主だと主導権を握られる。
キャリーバッグで公共交通機関に乗るのはちょっと厳しい重さ。
遺伝性疾患は多い。親戚一同の病気の有無の確認が必要。
まとめ
チャームポイントはダンディなあごひげ。きちんと手入れが必要
JKCの犬籍登録頭数で、ここ10年(2014年末現在)ほどの間、ずっと10位前後(8位〜12位)をキープしている、日本でポピュラーな小型愛玩犬。街で散歩する姿をよく見かける犬だ。
ただ、ペットショップできちんと説明を受けぬまま買ってしまったのかもしれないが、残念ながらあまり手入れをされず、ボサボサの薄汚れた姿を見かけることの方が多い気がする。基本的に体臭も強く皮膚疾患も多いとされるので、湿度の高い日本で飼うなら皮膚病予防のためにも清潔さを保つことは大事なことだ。
「M・シュナと暮らしたい!」と望むなら、ぜひ事前にドッグショーへ見学に行き(一般人ももちろん見学可能)、成犬の美しい姿を見てほしい。とてもダンディでかっこよく、キリッとした立ち姿、自信に満ちてごきげんそうに歩く姿を見ると、本当にきれいでチャーミングな犬だと感じる。アメリカで人気が高いのも分かる気がする。M・シュナは、「何もしなくても、犬種図鑑で見たようなシュッとしたスマートな姿になる」と思うのは大間違い。手入れの大切さや、手間やお金がかかることを理解したうえで、迎える決断をしてほしい。
ちなみに、ショップで並んでいる頃の子犬の時期は、毛が柔らかく、もつれにくい。でも成犬になるにつれ(生後半年以降の頃)、毛量が増えるだけでなく、毛質も堅く変わり、いっそう手入れが必要になる。毛の手入れについて正しい知識を与えてくれる、良心的なブリーダーから説明を受ける方がよい。
おそらくM・シュナを欲しいと思う多くの日本人は、性質からではなく、まずあの個性的な風貌に魅せられてしまうと思うので、この意見は無粋かもしれないが、毎日の毛の手入れが面倒な人、毎月お金をかけるのが難しい人は、スムースヘアのミニチュア・ピンシャーも視野に入れて検討してはどうだろう。中身(性格や骨格)は近いものがある。
自己主張が強く、忙しがり屋。利口で手強い
M・シュナはテリアではないが、もしゃもしゃの毛も、そしてネズミ捕りだった仕事も似ている。そして性質も割と似ている。ちょっと頑固で、興奮しやすく、よく吠え、自己主張し、好き嫌いがはっきりしていて、同性相手にケンカ腰になりやすい。
アメリカの動物行動学の高名な専門家の著作によると、「過敏性」「一般的な活動性」「子どもを咬む」「無駄吠え」「領土防衛」「警戒咆哮」「他犬への攻撃性」「反抗性」「遊び好き」の項目が最高値の10デシル(つまり満点)。掲載されている56犬種のうち、攻撃性の4特性は5位以内で、なかでも「警戒咆哮」と「他犬への攻撃性」は56犬種中1位。「それ本当ですか!?」と言いたくなるような、高ランクの攻撃性の強さが記されている。ドイツの専門家の著作でも「怖いもの知らずのがむしゃら犬。いつ見ても絶大な自信にあふれ、大きな犬たちにハッタリをかますコツも心得ている。生来の忙しがり屋」「一定のしつけをして抑えなければ家庭の暴君になる」と書いてある。けっこう厳しい。
そういう資料と実態を鑑みるに、どう甘く見積もっても「初心者に飼いやすい犬です」とは言えない。また、神経の繊細な飼い主向けではない。犬との関係性を、規律を持ってピシリとコントロールできる欧米人ならいざ知らず、優しくて態度が優柔不断な日本人には難しい犬種といえる。また、領土防衛(テリトリー意識が強い)、過敏(小さな物音にもすぐ反応)、警戒咆哮(怪しいとすぐ吠える)という特性上、マンションなどの集合住宅や、住宅密集地で飼育するのは一考した方がよい。
それでも、多くのテリアの仲間よりは落ち着いた性質で、テリアを選ぶよりはマイルドであるとされる。初めて犬を飼う初心者にはどうにもオススメしづらいが、それでもM・シュナを希望するなら、相応の覚悟と、最初からしっかりドッグトレーナーに学ぶつもりで迎える心づもりと塾代(訓練費用)も予算に入れておこう。
決して頭が悪いわけではない。むしろ利口で、明朗活発、やる気のある犬である。飼い主が主導権をしっかり握り、けじめのある教え方をすれば、打てば響いてくれる犬だ。実際、2010年1月に、日本一小さい警察犬として、和歌山県警の嘱託警察犬に登録された例がある。犯人の遺留品のにおいをかぎ分ける警察犬として合格できるくらいトレーニング性能はいい。「なかなか言うことを聞いてくれない元気な子」は、警察犬訓練士にしつけを依頼することにより、才能を開花させたという。
それだけ賢く、集中力があり、実力のある犬である。また、知らない人に愛想は振りまかないが、その分飼い主に一途。そういうワンオーナーで忠実なところも、ファンシャーにはたまらない。アメリカや日本で、これだけ長年継続して人気が安定しているということは、家庭犬としての素質、魅力もいっぱいあるということ。飼い主の頑張りと、M・シュナの性質に関する理解があれば、決して飼いにくい犬ではないはずだ。
元気でエネルギッシュな犬なので、ドッグスポーツ、飼い主のジョギングのお伴、ハイキング、キャンプなどのアウトドアの参加なども喜んでこなす。そういうアクティブな飼い主向き。ただし小動物には反応しやすいので、ハムスターや小鳥との同居はやめておこう。
遺伝性疾患は多い。血統管理をきちんとしているブリーダーから迎える
残念なことに、ほかの犬種と比べると、遺伝性の病気が多い。若年性腎疾患、レッグペルテス症(骨関節の病気)、若年性白内障など。こうした遺伝性疾患は、その病気の犬を繁殖に使わないように血統管理すれば淘汰に近い状態に持っていけるはずだが、ペットショップ用に子犬を卸しているパピーミルや繁殖業者はお金儲け優先で、そうした犬の健康や福祉を考えた管理をしていない。そのため、日本で人気のある小型愛玩犬種の遺伝性疾患は減らず、病弱な犬が増える原因となっている。
また、遺伝性とは判明していない、慢性僧帽弁不全(心臓の病気)、膵炎、目の病気など、なりやすい病気も多い。なるべくそうした病気が発症しないように繁殖に使う両親犬を厳選して、健全な犬を後生に残すべく努力と勉強をしている正しいブリーダーから子犬を譲ってもらうことを勧める。M・シュナはペットショップでも普通に販売されている犬だが、少しでも元気で、健康体で、長生きしてくれる子と出会うように、子犬を手に入れる前から、病気の勉強や、よいブリーダー探しなどの努力することが欠かせない。
このページ情報は,2015/10/15時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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