図鑑
ウィペット
グレーハウンドの小型版として庶民に愛された。
速くて、美しくて、サイト・ハウンドの中では素直で従順
英名
Whippet
原産国名
Whippet
FCIグルーピング
10G サイト・ハウンド
FCI-No.
162
サイズ
原産国
特徴
歴史
サイト・ハウンド(視覚ハウンド)の仲間の中で、
イタリアン・グレーハウンド (略称:イタグレ)より大きく、グレーハウンドより小さいのがウィペット。グレーハウンドを小型化した犬だ。グレーハウンドは、いまはイギリス原産とされているが、もとはエジプト界隈にいた犬で、極めて古い犬種。紀元前3000年くらい前から存在し、古代エジプト王朝の墓石にも刻まれていたくらいの犬である。イタグレはグレーハウンドを小型化したものだが、歴史はウィペットよりはるかに古く、詳細な記録はないものの、すでに古代文明の絵や彫刻、レリーフに登場している。
それに対してウイペットが作られたのは、19世紀後半のヴィクトリア朝の時代。当時、原産国イギリスでは、上流社会の紳士達が広大な私有領地でグレーハウンドを使った猟を楽しんでいた。グレーハウンドは高嶺の花であり、実際、平民は14世紀中頃からグレーハウンドを使った狩猟は禁止されていたという。
そこで平民によって作出されたのがウィペットだ。作ったのは、イギリスのダーハムやニューカッスルなどの鉱山地帯の鉱山労働者。伯爵たちの領地近くでこっそりウィペットを使ってウサギを捕まえたり(貴族の娯楽としての狩猟ではなく、自分たちが食べるための狩猟)、はたまた初期のウィペットを使ってウサギ殺しのギャンブル遊びをした。囲いのある場所で、ウサギを放し、複数の犬を囲いの中に入れて、いちばん早くウサギを仕留めた犬が勝ち。やがてこのゲームは残酷だとされ、非難を浴びたので、ウサギを噛み殺すのではなく、ウサギの代わりにボロ布か毛のついたルアー(疑似餌。魚釣りで使われることの多い単語だが、ドッグ・スポーツでも使う。動きや色、ニオイなどで、直接魚や犬を誘惑するモノのこと)を追わせる、スピードを競うレースに変化していった。路地裏などの直線コースで、労働者の賭け事として人気があった。
ウィペットの名前の由来は、レースに使われた犬ということから「whip it (鞭打つ)」、あるいは疾走するときの犬のしっぽが鞭(whip)のような形をしているから、などと文献にあるが、そのほかにもいくつかの説があるようだ。
また、庶民に愛されたウィペットにはさまざまなあだ名があった。「貧しい者のグレーハウンド」「小さき者(名もなき者、貧しき者)の競走馬」「稲妻のように速いボロ布犬」「鞭のようにしなやかな素早い犬」「スナップ・ドッグ」(snapとは、パクリと噛む。噛み切る、などの意。ウサギやネズミに噛みつく力が強いから)などだ。
もともとサイト・ハウンドは、猟犬の中でも、ポインターやレトリーバーなどのガンドッグと違い、猟銃のない時代から狩りの相棒として人間に力を貸してくれていた。目(視覚)で獲物を発見し、ものすごい加速力と機敏な動きで獲物に追いつき、歯で仕留めてくる古典的な猟の仕方をする。獲物の種類は、それぞれのサイト・ハウンドの種類や原産地にすんでいる動物の種類により異なり、ウサギからガゼルなど、小動物まで大動物までいろいろな獲物がターゲットとなり得る。いずれにせよウィペットは、イタグレの次にサイト・ハウンドの中では小さいサイズだが、小動物に対してパクリと噛みつく習性はあったはずだ。
さらに当時の改良の時代に、マンチェスター・テリア、ベトリントン・テリア、ホワイト・テリアなどのテリアの血を入れて、小型化したとされる。もしかしたらそれによって、ますます小動物を追いかける興奮性や、噛みつく衝動もプラスされたかもしれない。
蛇足だが、ひと昔の日本の犬種図鑑では、ウィペットのことを「ホイペット」と表記されていることが多かったように思う。同じ犬である。英語スペルは、当時も今もwhippetなので、日本語の発音というかカタカナ表記の誤差かと思われる。第一次世界大戦時のイギリス陸軍の戦車のMedium Mark A Whippetは、カタカナ表記では「マーク A ホイペット中戦車」と書かれている。戦車はホイペットのままだ。ちなみにウィペットがいつ日本に初上陸したのか、詳細な記録は見つけられなかったが、大正時代に日本で撮影されたウィペットの写真は存在した。
現代でもサイト・ハウンドの独特な魅力にとりつかれている日本のファンシャーは少なくない。近年のイタグレの人気の高まりもあり、ウィペットもたまに東京でも散歩をする姿を見かける。けれども、まだ全国的にそれほどメジャーな犬種ではないと言えるだろう。しかしながら、ペットショップで「珍しい犬」として小さなケージの中で売られている姿も散見され、心配は募る。珍しい犬だからといって欲しがるのは、どの犬であってもNG。見た目だけでなく、本犬種の本質と、爆発的な運動性能がある犬だということを理解したうえで、自分がそれだけの飼養環境(思う存分自由運動ができる場所を提供できるか、そのために毎日、毎週のように出かける時間や体力が自分にあるかなど)を覚悟してから迎えてほしい。
外見
彫刻のような、機能的な美しさと筋肉の力強さのある姿。シュッとしたボディだが、スタンダードでは「スピードと働くために作られた体躯」と書かれており、決して虚弱そうな細身ではない。また体躯構成において、いきすぎた形での誇張(胸の張りすぎやウエストの細すぎなどを指しているのだろうか)は避けるべきであると記されている。ショードッグとしても素晴らしいビューティさを持つが、あくまでも疾走することが命の機能美が重要だ。
スタンダードの体高は、オスが47〜51cm、メスが44〜47cm。スタンダードに体重記載はないが、だいたい小ぶりのメスで9kgから、大きめのオスで15kgくらいだ。
中型犬の中でも小さい方。この小さすぎず、大きすぎない体格は、あまりほかの犬種ではいないユニークなサイズである。紀州犬の体高がオス52cm、メス49cmなので、体高としては紀州よりちょっと小さいくらいだが、紀州の体重は15〜23kgなので、細身のウィペットの方が全然ボリュームが小さい。ちなみに体重が近いのは
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク か。でもコーギーよりウィペットの方がだんぜん体高が高い。ウィペットは、小顔でスラッとした痩せ形モデル体型なのである。
頭部は、長く、細く、頭頂は平ら。ストップ(両目の間にある、スカルとマズルの接続部のくぼみ)はわずかにある。目の形はオーバル(楕円形)。耳はローズ・イヤー(耳を後方に寝かせ、折り畳む小さな垂れ耳)で、小さくて手触りがいい。
首は長く筋肉質で、アーチを描く。ボディのトップラインは、腰の上からアーチを描くが、こぶがあるようなラインではない。背も腰も力強く筋肉質で、パワーを感じさせる外貌。筋肉のない、へろへろしたウィペットはNG。胸は、強靱な瞬発力をうむ心臓が入るスペースが十分にあり、大変深く、下胸も深く、明瞭に張り出す。あばらもよく張っており、腹はきゅーと巻き上がっている。そして四肢も当然よく筋肉が発達し、強力な推進力を生む力強さに満ちている。また、足先の指趾は長く、よくアーチしていて、パッドは厚く、丈夫。爆発的な瞬発力を支える足先だ。
しっぽは、長く、徐々に細くなり、動いているときには上向きにカーブを描く。でも背中より高く掲げることはない。
歩様は、自由にのびのび。横から見ると、ストライド(1本の足が地面を離れて着地するまでの時間や距離)が長く、トップラインを維持。駆けるときは、前肢は地面を滑るように前に伸ばし、後肢はボディの真下に踏み込み、大きい力強い推進力を生み出す。こうした表記がスタンダードにしっかり記されているのも、“走り屋”のウィペットらしい特徴だ。また、通常の歩様は、竹馬歩様や、ハイ・ステッピング歩様、歩幅の狭い歩様であってはならない。
被毛はきめ細かいスムース・ヘアで、体にぴったりしている。尾にも飾り毛はない。毛の手入れは簡単だ。たまに血行促進や地肌のマッサージのために豚毛ブラシなどでブラッシングする程度。生き物なので細かい柔らかい毛は落ちるが、ごく短い毛だし、体格も小さいので量は少ない。シャンプーやドライヤーも簡単。総じて毛の手入れが悩みになることは少ない。体臭も少ないとされる。
ただし、ごく短い毛のために寒がりである。全力疾走する自由運動のときは、裸でよいが、街中をしゃなりしゃなりと歩いて散歩するときは、日本の冬の時期は、防寒着を着せた方がよいかもしれない。また犬だけの留守番中にも床暖房をつけるなど、室温管理が必要だ。ふかふかの毛布とベッドを用意することも忘れずに。
毛色は、あらゆる色が許可されている。色がミックスされていてもよい。斑やブリンドルもOK。すべての毛色が許可されている犬種は珍しい。どんな色や柄でもすべてOKというのが、なんとも労働者階級が作り上げた、たたき上げの感じがして、これまた潔い。
そのため、鼻の色は、基本はブラックだが、毛の色に応じて、鼻の色もいろんな色がOK。ブルーの毛色の犬ならブルーの鼻、レバーの毛色ならレバー色の鼻、イザベラやクリーム、あるいは色褪せたような毛色の犬の場合は、ピンク色以外のいかなる鼻の色でもよい。ホワイトやパーティー・カラーの犬に関してのみ、バタフライ・ノーズ(ダークな鼻色に肉色の斑や点があるもの)が許されるが、ただし完全に色素欠乏したものはNG。
このように毛色、鼻の色も基本なんでもよく、また失格事由もほとんどなく、自由度の高いスタンダードが設定されているが、後世の犬の健康および福祉に与える影響の大きさを考慮し、ショードッグ(繁殖犬)として使うなら審査される。健全な子孫(遺伝子)を残すためのルールは必要だ。
ちなみに失格事由は
・攻撃的なもの、過度にシャイなもの
・陰睾丸
だけである。陰睾丸はどの犬種でも同じく失格となる。ウィペットは、イタグレと違って、外貌に関する失格事由がはるかに少ない。
毛色
魅力的なところ
素晴らしい走りとスピード。とにかく美しい。
素晴らしい筋肉美と機能美。
犬とドッグ・スポーツを楽しみたい人向き。
小さすぎず、大きすぎずの中庸なサイズ。なかなかこのサイズの犬は純血種だと少ない。
外では爆走だが、運動が足りていれば家では物静か。猫のよう。
サイト・ハウンドの中では、素直で従順。わりと言うことを聞く。
ベタベタはしないが、家族にはなつこく穏やか。大人な関係や距離感が保てる。
多頭飼育散歩も可能な群れ意識。お互いでケンカしない性格。
無駄吠えや吠えて要求することが少ない。集合住宅でも比較的飼いやすい。
短毛で毛の手入れは楽。毛の手入れにお金はかからない。
丈夫で比較的病気が少ない。
大変なところ
とにかく動きが速い。走るのやジャンプが大好き。
毎日か毎週のように遠出して郊外の広いドッグランに行く時間と体力のある飼い主限定。
強烈な短距離ランナー。運動量はすこぶる高い。
繊細な部分があるので、ざっくばらんな飼い主より優しい飼い主がいい。
走るのが速いし、小動物などに反応すると、迷子や疾走の恐れ。
交通事故に注意。
寒いのは苦手。防寒着やふわふわ毛布の寝床が必須。
日本では遺伝子プールが乏しいので、志の高いブリーダーを探す努力が必要。
まとめ
サイト・ハウンドの中では素直で従順
イタグレ 同様に無駄吠えは少なく、要求も少なく、攻撃性も少なく、ビギナーでもなんとかなる犬種といえる。またサイト・ハウンドは、そもそも人間と共同作業で狩りをしていたのではなく、自分の意思と本能の赴くままに行動するタイプのため、頑固というか自主性が高く、我が道をゆくタイプが多いのだが、その中でウィペットは、割と素直で従順で、そこそこトレーニング性能もいい。呼び戻しも、ほかのサイト・ハウンドよりはできる方。また、家族にはなつこく、愛情深く、飼い主想いのところもいい。
ラブラドール・レトリーバー のような感情表現豊かなフレンドリーさとはまた違うが、うざったくない程度にこっそり情愛深いのがたまらない。ベタベタされるのは苦手だが、素直で忠実な犬が好き、という人に向いている。
全力疾走するのが生きがいなので、自由運動が絶対に必要だが、広いドッグランで遊ばせ、運動量を満たすことができていれば、家に戻ってきたら物静か。「カウチ・ハウンド」と呼ばれることもあるくらい、リビングでは猫のようにまったり静かに過ごす。ただし、ウィペットは成長するのがゆっくりだという意見もあるので、2歳くらいまでは子犬らしさが残り、室内でもバタバタと遊び回る可能性はある。もし集合住宅に住んでいるのであれば、吸音性のある厚めの絨毯を敷くなどの対策は必要かもしれない。
そしてウィペットは「群れ意識が高い犬なので、大勢といると精神的に安定する」ようだ。そのため「全員が同じ方向へ同じように神経を集中させるから、おのずと散歩の進行方向が一定する。よって、ウィペットとの集団散歩は見た目ほどに難しくない」と、ドッグ・ジャーナリストの
藤田りか子氏 は書いている。たしかにウィペットの2頭連れ、3頭連れの人を見かける。ウィペットは同犬種同士の多頭飼育が向いている犬種といってよいだろう。
魅力的かつユニークな、中庸サイズ。広大な爆走場所があればハッピー
小さすぎず、大きすぎず、という中庸なサイズも魅力だ。ヨーロッパなどでは、これくらいの中型犬の純血種はほかにも多数いるのだが(ハンガリー原産のプーミーやプーリー、ドイツ原産のクロムフォルレンダー、アイルランド原産のアイリッシュ・テリアなど)、ウィペットのサイズは、なかなか日本では見ないボリュームである。しいて言えば、中型の日本犬くらいであるが、中型日本犬はイノシシ狩りに適応した攻撃性を持っているので、ビギナーにはお勧めできない。でもウィペットは素直なので、想像以上にコンパニオン向きの犬である。
たとえばスウェーデンの人で、今まで
フラット・コーテッド・レトリーバー と暮らしていたが、自分が老いたときにガンドッグのトレーニングをしたり、山歩きをするのはもう厳しいからと、ウィペットに転向した人がいると聞いた。ちょっと意外。レトリーバーとサイト・ハウンドではジャンルが違いすぎると感じたからだ。でもそれくらいウィペットは、素直で、飼い主になつこく、そこそこトレーニングもでき、高齢者の腕力や体力でも散歩ができるサイズということなのだと思う。
ただし、近くにウィペットを爆走させることのできる広いドッグランや敷地があれば、という条件付き。日本のウィペット・ファンシャーの間では、走らせる場所が少ないことが悩みだという。イタグレであればそこそこの広さのドッグランがあればトップスピードが出せるが(とはいえ、イタグレであっても小型犬用ドッグラン程度の広さでは無理)、ウィペットはもっと広大なスペースが必要。そのため郊外の広大な敷地を有するドッグランまで自家用車で出かけないと、満足いく運動を与えられないそうだ。これはウィペット以上の大きさの、中・大型のサイト・ハウンド(サルーキ、アフガン・ハウンド、グレイハウンドなど)飼い主の共通の悩みである。
トップスピードでガーーーッと走れる場所(平たい原っぱを希望。林間ではない)へ頻繁に出向くことができれば、たいてい犬は満足し、あとはおうちでまったりするから、シニアやビギナーにも問題なく飼える可能性がある。たっぷり走らせておけば問題行動が発現しにくいというのは、攻撃性の強い怒りんぼ型の犬種や、探究心・好奇心・鼻を使ったゲームなどを欲するワーカホリック型の犬種よりも飼いやすい犬といえる。日本でももっとファンシャーが増えてもいい犬種ではないかと思う。
ただし国際基準で飼いやすい犬種とはいえ、日本では犬と暮らす伝統や文化の素地が違う。広大な私有地やドッグラン、安全な原っぱが身近にある環境でもない。フラットコーテッド・レトリーバーを今まで飼った経験があるような、アクティブで、アウトドア派で、犬への理解の深い人であれば、シニア層でもウィペットを扱うことはできるだろうが、誰でも簡単に飼える犬などはいない。くれぐれもそこは間違えないでほしい。
ちなみにウィペットは、テリアの血が入っているせいか、トレーニングは割と入りやすいらしい。呼び戻しについても、ほかのサイト・ハウンドよりはまだできる方だという声が多い。しかし、なにしろ彼らは俊足である。人間ごときが追いつけるスピードではない。またウサギかと勘違いするような白い布などがヒラリとしたら、全力で集中して追いかけてしまう可能性がある。失踪・迷子の危険があるので、囲いのあるところで自由運動をさせる方が安全だ。また万一に備えて、マイクロチップの挿入と、迷子札を肌身離さず身につけておくこと。
スポーツ・ドッグを育てたい人に
天才的なスプリンターであるウィペットは、犬とともにドッグ・スポーツを堪能したい人に最適な犬である。近年では、サイト・ハウンドを主な対象にした
ルアー・コーシング大会 (ウサギを模したルアーを電動モーターで高速で引っ張り、犬はそのルアーめがけて、ダッシュするレース)が日本でもファンシャーによって開催されている。同じサイト・ハウンドを愛する仲間が集まり、情報交換する場にもなっている。開催情報は、ネットで探してみるとよい。
爆発的な瞬発力、あっという間にトップギアに入り、駆け抜けるウィペット。その姿は本当に美しく、迫力もある。素直にカッコイイと思う。速すぎて、短距離レースのビデオを見ても、一瞬すぎてよくわからないほどだ。最近はスマホでもスローモーション撮影機能がついているので、そういうスローモーションで見て、やっと、あの美しい足運び、背骨のしなり、鞭のような細いしっぽの振り方などを観察することができる。「走るために生まれてきた肉体」である。ウィペットと暮らしたい!と望むなら、とにもかくにもこの犬の運動性能を素晴らしさを堪能したい、走る姿を見るのが幸せ、という人に限る。
ほかのサイト・ハウンドももちろん素晴らしい肉体と走りを見せてくれるが、大型のサイト・ハウンドを飼養するには環境的(広いドッグランが近くにないなど)、あるいは毛の手入れ的(
ボルゾイ やアフガンなど)に無理だと諦めようとしている人でも、ウィペットなら共に暮らせるかもしれない。
またルアー・コーシングは、ウサギを模したルアーを追いかける本能を刺激するスポーツであるが、ウィペットはそれだけでなくディスク・ドッグとしても活躍している。速く走るだけでなく、ジャンプしてキャッチして、リトリーブ(回収)して、飼い主に確実にそれを渡す、という一連の流れができなくてはいけない。すなわちウィペットは、ただの本能的なゲームではなく、飼い主との共同作業ができるということだ。さらにフリースタイルのディスク競技では、優れた身体能力だけでなく、飼い主との信頼関係、日々のトレーニングがもっと必要となる。こうしたドッグ・スポーツ競技の場で、プロのトレーナーが自分の相棒としてウィペットをあえて選んでいる場面にも遭遇した。
ボーダー・コリー でなく、オーストラリアン・シェパードでもなく、サイト・ハウンドの仲間のウィペットを選ぶとは、新鮮な驚きだった。それだけウィペットは、優れた運動性能だけでなく、トレーニング性能も高いということを示していると思う。
毛の手入れも簡単。病気も少ない健康優良児
毛の手入れも簡単。ブラッシングの手間もそれほどかからないし、自宅でシャンプーしても、すぐ乾く。トリミング代がかからないので、おめかし代はかからない犬だ。ただし、寒がりなので、真冬は防寒の犬服を買ってあげる必要はあるかも。体臭も少ないとされる。短い毛がパラパラと落ちるけれど、それほど掃除が厄介ということもない。
またイタグレほど小さくないので、骨折事故はそれほど聞かない。遺伝性疾患、かかりやすい病気としても、カラーミュータント脱毛症、パターン脱毛症、耳介脱毛といった、脱毛関連があげられているのみ。特筆すべき骨関節や内臓の病気はないというのは、素敵なことだ。健康がいちばん。ただ日本では、下痢しやすい犬が多いということは聞く。個体差なのか、食事管理で克服できるものなのか、あるいは日本では遺伝子プールが乏しいのでそういう犬が増えているのか、よくわからない。子犬を譲ってもらうときには、母犬、父犬、親戚犬の健康状況、既往症などについて、ブリーダーに直接尋ねてみよう。いいことも悪いことも正直に教えてくれるブリーダーは良心的であると思われる。
しなやかで強靱な筋肉をつくるために、肉や高タンパクな食事を与えた方がいいというファンシャーもいる。ルアー・コーシングなどの激しいドッグ・スポーツに参加するならなおのこと、ハイカロリーな栄養管理が必要だ。そうした情報は、信頼のおけるブリーダーや、ウィペットを愛し、ドッグ・スポーツを楽しんでいるファンシャーから情報を得るのがよいだろう。
このページ情報は,2015/11/09時点のものです。
本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。
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