人間ばかりでなく、犬においても死因の上位(データによってはトップ)は「ガン」だ。獣医療が発展して予防医療も浸透し、飼育環境もフードの品質も底上げされ、昔と違って寿命が大幅に伸びた分、ガンという病気が猛威をふるうようになってきた。
むろん獣医療の発展は、犬に対してもガン治療の選択肢を多く与えてくれるが、とはいえ罹患しないで済むのならそのほうがよい。おしなべて病気というものは、その理由は食生活からくるものも多く、誘惑多き生き物である人間の場合はなかなか見直しが難しい問題だと思うが、食べるものをすべて飼い主がハンドリングできる家庭犬においては、食生活からガンを防ぐという試みは素敵な結果が期待できる。
名付けて「家庭犬のがん予防プロジェクト」。各家庭に飼われている家庭犬を使って試験を行って新たなドッグフードを開発し、家庭犬のガン予防に貢献しようではないかという素敵な試みで、9月から効果検証のための実験が始まる。
そもそも家庭犬を使ってガン予防の試験検証すること自体が世界初の試みなわけだが、うまくいけば、世界で初めて、犬のガンを予防するためのドッグフードが商品化されることになるわけだ。
この研究を引っ張るのは、
・岐阜大学 応用生物科学部附属比較がんセンター
・公益社団法人岐阜県獣医師会
・シーシーアイ株式会社*
・ペットライン株式会社
の2団体・2社。産学官一体ならぬ、産学一体の研究だ。
(*)シーシーアイは、公式サイトを見るとなぜここに名前が挙がっているのか分かりづらいが、元々は車のブレーキオイルのメーカー。健康食品の開発も手がけていて、この試験においては、植物エキスの提供と基礎的検討の一部を担当しているとのこと。
そして最も重要なことは、「この試験に参加してくれる犬を,広く一般から募集中である」ということ。つまりみなさんの家庭の犬が、将来ガンで苦しむことになる犬を減らすための試験に参加できるというわけだ。
ただし、試験に参加できるのはゴールデン・レトリーバーで5〜6歳の個体のみ(性別不問)。ゴールデンは人気も高く、おだやかで飼いやすい性質ではあるが、残念ながら遺伝性疾患を始めとする病気が非常に多い犬種である(本サイトの犬種図鑑で「病気」のタブをチェックしてみてほしい)。しかも5、6歳を過ぎたあたりからガンの発生率が顕著に上がってくるので、それより前からフードを食べさせる必要がある。
3年にわたって行われる本格的な試験だが,飼い主の負担はそこまで多くない
予め書いておくと、この試験は3年にわたって行われる(予定)。“3年にもわたって試験に参加する”というと、とても仰々しく聞こえるが、飼い主がやらねばらならぬことは実はそう多くない。支給されるフードを毎日あげて、適度に運動させて、犬の健康診断を年2回程度実施するだけだ。
まず最初にやるべきことは、岐阜大学比較がんセンターに参加の意思を表明すること。そこで愛犬のかかりつけの獣医(ホームドクター)を知らせれば、がんセンターがその獣医に連絡を取ってくれ、以降はその2者がやり取りすることで試験が進んでいく。
がんセンターとホームドクターとの間で話がうまくまとまったら、各種検査(血液検査/尿検査/X線検査/エコー検査)を経てその個体が健康であることを確認し、それが済み次第、試験への参加が決定される。
3年にわたってそれを食べ続けることによってガンへの罹患率が顕著に下がれば、晴れて「ガン予防ドッグフード」の商品化となるわけだ(実際にはそんなに簡単なものではないかもしれないが)。
なんでもおいしくいただくゴールデンは、おやつのあげすぎに注意
この記事を書くにあたり、比較がんセンターの丸尾幸嗣教授に電話で話を伺ってみた。
dogplus.me(dpm):
試験の対象となるゴールデンには、どんな条件がありますか?
丸尾幸嗣教授:
まず5〜6歳であること。これは、ゴールデン・レトリーバーがガンを発症し始める年齢です。そしてできれば室内飼いが理想ですね。あと当たり前ですが、現時点で健康であること。
dpm:
ゴールデンですので、室内飼いであることはほぼ満たせそうですね。これはフードを食べて予防することが研究の主軸ですので、食べるものに対してもきっと何か条件のようなものがありますよね。
丸尾幸嗣教授:
やはり、オヤツはできるだけあげないことが望ましいと考えています。理想論で言うならば、支給するフードと水だけで過ごしてほしいところです。とはいえ、ご家庭の愛犬として飼育されてますので、そういうわけにもなかなかいかないでしょう。
オヤツをあげる場合は、できるだけ少量であることが望ましく、あとでデータを採取したときに参考になるように、何をどれくらいあげたのか紙などに書いて記録しておいていただければ嬉しいです。
dpm:
ほかには何か注意すべき点はありますか?
丸尾幸嗣教授:
人間もそうなんですが、運動量とガンのなりやすさには関連性があると言われています。ですので、1日1時間前後の散歩などキチンと運動していることが望ましいです。ただオヤツの件もそうですが、それを3年間みっちりとご家庭で続けるのは大変なことであることは承知しておりますので、あくまでも「できるだけそうであってほしい」というこちら側の理想です。
試験の対象となるゴールデンには、どんな条件がありますか?
丸尾幸嗣教授:
まず5〜6歳であること。これは、ゴールデン・レトリーバーがガンを発症し始める年齢です。そしてできれば室内飼いが理想ですね。あと当たり前ですが、現時点で健康であること。
dpm:
ゴールデンですので、室内飼いであることはほぼ満たせそうですね。これはフードを食べて予防することが研究の主軸ですので、食べるものに対してもきっと何か条件のようなものがありますよね。
丸尾幸嗣教授:
やはり、オヤツはできるだけあげないことが望ましいと考えています。理想論で言うならば、支給するフードと水だけで過ごしてほしいところです。とはいえ、ご家庭の愛犬として飼育されてますので、そういうわけにもなかなかいかないでしょう。
オヤツをあげる場合は、できるだけ少量であることが望ましく、あとでデータを採取したときに参考になるように、何をどれくらいあげたのか紙などに書いて記録しておいていただければ嬉しいです。
dpm:
ほかには何か注意すべき点はありますか?
丸尾幸嗣教授:
人間もそうなんですが、運動量とガンのなりやすさには関連性があると言われています。ですので、1日1時間前後の散歩などキチンと運動していることが望ましいです。ただオヤツの件もそうですが、それを3年間みっちりとご家庭で続けるのは大変なことであることは承知しておりますので、あくまでも「できるだけそうであってほしい」というこちら側の理想です。
200頭のゴールデンが必要。ファンシャーのみなさんは、ぜひ相互連絡を
気になる人もいるだろうから詳細を述べておくと、試験は2重盲検無作為化試験で行われる。ホームドクターである獣医師と参加してくれる飼い主にはフードの性質を知らせず、被験群にはフィトケミカル入りのフードを与え、対照群には通常のフードを与える。そして3年が経過した時点での、その2群のガン発症率などのデータを取得するという段取りだ。効果があるのであれば、被験群のガン発症率は大幅に抑えられているという結果が出るはずだ。
この試験で必要な頭数は200頭(!) ゴールデン・レトリーバーは、大型犬の中では相当数が多い犬種ではあるが(2014年のJKC登録数では11位。大型犬の中ではトップだ)、5〜6歳という条件付きなので、もしかしたら集めるのはなかなか大変かもしれない。
愛犬家には言わずもがなのことだが、犬のガンはかなり進行してから発見されることが多く、見つかったときにはすでに治療が難しい状態であることが多い。それを食事で予防できるのであれば、多くの犬を救えるはずだ。少しでも気になったら、ぜひ参加してほしい。自らの愛犬がガン予防に貢献でき、オマケとして3年分のフードが無料になるという役得(?)付きだ。
■家庭犬のがん予防プロジェクト
目的:がん予防のためのドッグフードの研究開発
期間:3年間
対象:ゴールデン・レトリーバー(性別不問/年齢5〜6歳)
内容:指定されたフードを3年間与え続け、年2回程度の健康診断を受ける
特記事項:犬は、現時点で健康体で、1日1時間程度の散歩などの運動をすることが望ましい。おやつは与えないか、与える場合はできるだけ少量であることが望ましい。フードは、3年間にわたって支給される。
目的:がん予防のためのドッグフードの研究開発
期間:3年間
対象:ゴールデン・レトリーバー(性別不問/年齢5〜6歳)
内容:指定されたフードを3年間与え続け、年2回程度の健康診断を受ける
特記事項:犬は、現時点で健康体で、1日1時間程度の散歩などの運動をすることが望ましい。おやつは与えないか、与える場合はできるだけ少量であることが望ましい。フードは、3年間にわたって支給される。
■問い合わせ先
岐阜大学 比較がんセンター TEL:058-293-2884 または sakaidaa@gifu-u.ac.jp(担当窓口:坂井田(さかいだ)氏)
メールでの連絡の場合は、
・飼い主氏名 / 飼い主の自宅の都道府県
・ゴールデンの名前 / 年齢 / 性別
・ホームドクターの氏名 / 病院名 / 病院のある都道府県
を明記のこと。
岐阜大学 比較がんセンター TEL:058-293-2884 または sakaidaa@gifu-u.ac.jp(担当窓口:坂井田(さかいだ)氏)
メールでの連絡の場合は、
・飼い主氏名 / 飼い主の自宅の都道府県
・ゴールデンの名前 / 年齢 / 性別
・ホームドクターの氏名 / 病院名 / 病院のある都道府県
を明記のこと。