ちょっと趣向を変えて、犬が見える色のお話。
愛犬のためにオモチャを選んでいるときに、「何色が一番見えるんだろう?」と思ったことはないだろうか。こんなにも色とりどりのオモチャがショップに並んでいると、大きさや形、材質や色のみならず、色だって気になってくる。どうせなら、愛犬が一番見つけやすい色を選びたい。
自分が見ているものを、愛犬も同じように見えていると思っている人には、「犬が見える色って何色?」というのは、おかしな質問に聞こえるかもしれない。しかし、私たち人間が見ている色は、愛犬にとっても同じように見えているわけではないのだ。じゃあ一体、犬は何色なら見えるんだろうか?
*この三原色を全部混ぜると白になり、この三原色の3つの色の濃淡を変えて混ぜ合わせることで、ほとんどすべての色を再現できる。TVやパソコンのディスプレイは、ほとんどがこの三原色で色を作っている。
「レセプターがない」と言ってもいま一つ分かりづらいが、例えば手のひらに光をあてたところで、手のひらには光を感知するレセプターがないから、(手のひらは)その光を認識できないということだ(ちょっと話を単純にしすぎているが)。つまり犬の目には、緑と青の光を感知するレセプターだけがあるわけで、緑から青の色調しか認識することができない。
ちなみに「色」は光の波長の違いによってできているもので、波長の短い順に
紫>青>水色>緑>黄色>オレンジ>赤
となるが、この配置はまさに「虹」だ。光が水に反射して、人間が見ることができる部分だけが見えているものが虹なのである。
さて犬の場合は、この虹の七色のうち、紫がかった青から黄色(緑色の一番端っこが黄色なのだ)までを認識できるとされている。とはいえ“色”としての認識はずいぶん違っていて、私たちには緑に見える色は、犬にとっては無色で、黄色は赤のように見えるといわれている(青は青として見える)。どうやら愛犬は、私たち人間の世界とはまったく異なる世界を見ているようだ。
さて、話を最初に戻そう。犬に見える色は主に青と黄色なので、犬にとってどんな色のおもちゃが見えやすいかというと、やはり「青」と「黄色」ということになる。愛犬に少しでも楽しく遊んでほしいのであれば、青か黄色のおもちゃを選ぶのがいいだろう。
例えば芝生や土の上で遊ぶとき、それは犬にとっては明暗しかないほぼモノトーンの世界であり、その中に青や黄色(黄色は、実際には犬にはやや赤っぽく見えているようだが)のおもちゃを投げ込めばとてもよく目立つであろうことは、多くの色を識別できる私達にも容易に想像できる。逆に犬にとっては、新緑まぶしい芝生の上の赤いボールを探すのはちょっと難しいことだ。
しかしオモチャから離れて考えてみると、もし室内のインテリアに青を多く使っていたら、犬はどう感じるんだろう? もしかしたら圧迫感すら感じてしまうんではないだろうかと少し心配になる。同様に、犬のベッドの色が青や黄色だったりすると、犬はそこで落ち着けるものなんだろうか?
犬にだってそれぞれ好みがあるだろうから一概にはいえないけれど、静かに寝るためのベッドは、犬の目にとって目立つ青や黄色のような“激しい色”よりも、なんとなく落ち着いた雰囲気を醸し出すモスグリーンや茶色の方が無難であるような気がする。
それにしても、なぜ犬は青と黄色を認識できる体に進化したのだろう。大昔には、もっとほかの色が見えていたのだろうか。それとも逆に、もっと少ない色しか見えていなかったのだろうか。青から黄色までの色が認識できることは、犬が生きていく上でどう有利だったのだろうか。そんなことまで考えてしまう。
もしかしたら、飼い主が青いTシャツを着て散歩に出たときと、赤いTシャツを着て散歩に出たときでは犬の行動が違ったりするんだろうか。色を使っていろいろ実験してみると、もしかすると犬の気持ちをもう少し深く分かるかもしれない。