詳しく書くまでもなく、子犬にとって8週齢までの時期はとてもとても大切な時期だ。ショップ出身の犬に落ち着きのない個体が多かったり、攻撃性の高い個体が多かったりするのは、状況から鑑みるに当然のことともいえる |
2月に犬好き界隈を賑わせていた、札幌市の“8週齢努力義務化条例”が、3月29日に無事に可決された。10月からの施行となる。「2月17日から始まる市議会に提案して10月からの施行を目指す」という当初の目論みどおりだ。詳しいことは前回の記事(こちら)に書いておいたが、この画期的な義務化条例は「始まり」でしかない。事情をよく知らない一般のメディアや、一緒になってお祭り騒ぎのように主張している一部の人達にとってはこれで万々歳かもしれないが、むろんみなさんご存じのように、まだまだ問題は山積みだ。
前回も書いたように、本来これは親犬とパピーの飼養環境とセットで議論して進められるべき問題だし(繰り返しになるが、つまりこれは劣悪なパピーミルの環境でさえも8週間置いておく義務があるということだ!)、数字ばかりが一人歩きして、世にそれを知らしめる一般メディアまでもがそこに力点が置かれていることは、とても危惧すべきだと思う。これは大いなる変化のための大いなる一歩であって、先はまだまだ長い。この条例案可決は、“ハッピーエンド”ではなくて“始まりの第一歩”なのだ。
札幌市の「8週齢努力義務」条例がもたらすもの
とはいえ、8週齢の努力義務が条例で明文化されたことは大いに意味がある。人だけでなく、動物にとっても優しい世の中に向けて動いているのだな、ということを実感できるし、なにより本件が世間の注目を集めることで、いろいろな場所でくすぶっていた様々なことが動き始めて、さらに世の中が良い方向に動いていくというスパイラルにも期待できる。そしてそれは、動物好きであれば誰もが望むことなのだ。そしてなにより忘れてならないのは、この条文が「審議」のテーブルに乗ること自体が、相当にすごいことだということ。条例を変更するというのはそういうことだ。この案を作って通した人達に心から感謝の意を表すると共に、ほかの自治体に波及していくことに期待したい。
一人の若者が起こしたアクションから、20か国ほどを巻き込んだ“アラブの春”が起こったように、これをきっかけとして動物を取り巻く環境が少しづつよくなりますように……。
ところでこの画期的条例を可決した札幌市だが、動物愛護関連については相当に熱心な人がいるように感じられる。
「札幌市動物の愛護及び管理に関する条例案」を見れば、8週齢規制はもとより地域猫に関する条文や多頭飼育に関する条文など「ほかの自治体のコピーじゃなくて、ちゃんと考えて作っているのだなぁ」というのが見てとれるし、「札幌市動物の愛護及び管理に関する条例・同条例施行規則(案)に対する市民意見の概要と札幌市の考え方」を見れば、“殺処分ゼロ”という耳に優しいバズワードに対する市のキチンとしたスタンスも表現されている。
今後しばらく、札幌市の動物愛護関連の動きからは目が離せそうにない。次はぜひ、業界団体からの反発がもっとも大きそうな「飼養環境の適正化」についてもよろしくお願いします!