私がわざわざここで主張するまでもなく、「動物愛護」という言葉に抵抗を覚える人は多いだろう。“愛護”という言葉は辞書によれば
・ かわいがって、大事にすること。「動物―週間」「余が女を―せざるはなし /花柳春話純一郎」
・その良さを損わずに保護すること。「自然―」「国語の―」
(スーパー大辞林3.0より)
・その良さを損わずに保護すること。「自然―」「国語の―」
(スーパー大辞林3.0より)
・大切なものだとして、大事にすること。
(明鏡国語辞典 第二版より)
とのことで、字義どおりであれば「かわいがって大事にすればよい」わけで、それは果たして生き物に向けられる言葉として適切なのだろうか。(明鏡国語辞典 第二版より)
……と思っているのかどうかは分からないが、識者の間では比較的多く「アニマル・ウェルフェア」という言葉が好んで使われる。ウェルフェアとは直訳で“福祉”のことで、つまりは「動物福祉」。動物が、自然な姿で行動できるように快適な環境を整えることを、総じてそのように呼ぶ。単なるかわいがりの“愛護”ではなく、動物を動物として、人間とは違う生き物の種として正しく認めて、彼らの幸福を損なわないように行動することが、アニマル・ウェルフェアだ(ちなみにこの概念は、屠殺や安楽死などにも適用される)。
そんなアニマル・ウェルフェアを標榜して活動する人は多いが、中でも最も著名な人が、滝川クリステル氏だろう。氏は、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルを率いてさまざまな活動を行っているが、このたび2016年8月26日、27日に東京で「アニマル・ウェルフェア サミット2016 〜どうぶつと人の笑顔のために〜」を開催することになった。
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル 公式サイト
アニマル・ウェルフェア サミット2016 〜どうぶつと人の笑顔のために〜 公式サイト
26日のプログラムの一部(公式サイトより)。 |
“芸能人が開催する愛護イベントかぁ……”と一瞬思ってしまいがちだが、2日間にわたる開催の中身は相当なもの。26日は「各界のリーダーと殺処分ゼロを考える」というテーマで、2つの会場を使って6つのセッションが行われる。
登壇者など詳細は公式サイトを見てほしいが、
・アニマル・ウェルフェア リーダーズ会議
・「殺処分ゼロ」を達成するために
・人と動物の共生する社会〜保護団体やフォスターの役割とは〜
・ペットと共に生きる効用を科学する
・ファンドレイジング講座*
・〜アニマルウェルフェアに基づく動物福祉・倫理について〜「気づきから本質へ」
など、いわゆる関係者向けのプログラムだ。
*ファンドレイジング:NPOなど非営利団体が、その活動のための資金を集めるアクションを総じてこう呼ぶ。NPOのキャッシュフローは常にギリギリであることが多いので、団体の人にとっては有意義なセッションになるのではないだろうか。
27日は、前日の真面目な雰囲気とは打って変わって、一般の人やこども向けのイベントがメインになっている。
・みゅーまる コンサート
・アニマル・ウェルフェア講座
・映画上映会「犬に名前をつける日」
・学生活動発表会
・コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)体験会
・お仕事犬デモンストレーション
・犬楽〜犬の五感を知ろう〜
・楽しみながら猫助け
・Foster ACADEMYセミナー
両日とも、登壇者/司会者が豪華な顔ぶれなので、ぜひ一度公式サイトをのぞいてみてほしい。
こちらは27日のイベントの一部。打って変わって一般向けのイベントが並ぶ |
ところで26日の「〜アニマルウェルフェアに基づく動物福祉・倫理について〜「気づきから本質へ」は、アニマル・ドネーションが協力するメディア向けの講座となっている(なので一般の人は入れない)。講師は、dogplus.meやdog actuallyでお馴染みアルシャー京子氏と、同じくdog actuallyでお馴染み藤田りか子氏。
アニマル・ドネーション公式サイト
幸いにも日本でも“動物愛護”(あえてこう書きます)への気運は高まってきており、殺処分や崩壊ブリーダーなど、いまの動物業界が抱える闇の部分にフォーカスした記事が、各種メディアに載ることも珍しくなくなってきている。
しかし、動物関係のメディアであればいざ知らず、一般のTVや雑誌、ほかのメディアの記事を集めるキュレーションメディアでは、動物業界やそれを取り巻く環境について記者や編集者があまり詳しくないことが多く、ときたま「え?」という内容の記事があがることもある。
メディアの――とくにマスメディアの――威力は大きい。あまり分かっていない人が書いた記事も、マスメディアの電波や誌面に載った時点でそれは正論となり、それを読んだあまり詳しくない読者が、その(不幸にも)偏った知識を蓄えていく。
これでは、負のスパイラルは切り離せない。日本の(そして世界の)動物に関わる問題は、殺処分だけではないし、生体販売のショップだけでもない。ブリーディングそのもののありようについても議論の必要はあるだろうし、生体販売におけるトレーサビリティについても、販売されている環境についても、手を入れる必要はある(それ以前に、生体販売の可否についての議論も必要だが)。そしてそもそも、飼い主の動物に対する知識が向上して全体が底上げされないことには、状況が改善されていくことは難しいだろう。
このメディア向け講座に限らず、多くの人の“アニマル・ウェルフェア”に対する考え方を磨くイベントが、この「アニマル・ウェルフェア サミット2016」なのだ。この問題について常日頃真面目に考えている人も、そこまで真剣じゃないけれども興味がある人も、8月最後の週末は、ぜひ会場となっている東京大学本郷キャンパスで、知識を蓄えてほしい。
アニマル・ウェルフェア サミット2016
■日時
2016年8月26日(金) 13:00〜17:30
2016年8月27日(土) 10:30〜17:00
■事前申し込み
不要
■参加費
8月26日 500円(資料代)
8月27日 無料(一部有料)
■会場
東京大学本郷キャンパス 福武ホール、弥生講堂アネックス(土曜のみ)
本郷キャンパス:東京都文京区本郷7-3-1
・福武ホール(東大赤門前入ってすぐ)
・弥生講堂アネックス(本郷弥生交差点近く、農正門入ってすぐ)
■日時
2016年8月26日(金) 13:00〜17:30
2016年8月27日(土) 10:30〜17:00
■事前申し込み
不要
■参加費
8月26日 500円(資料代)
8月27日 無料(一部有料)
■会場
東京大学本郷キャンパス 福武ホール、弥生講堂アネックス(土曜のみ)
本郷キャンパス:東京都文京区本郷7-3-1
・福武ホール(東大赤門前入ってすぐ)
・弥生講堂アネックス(本郷弥生交差点近く、農正門入ってすぐ)