2016年10月30日の朝日新聞の記事によれば、「飼養施設規制」の導入を目指し、環境省によって今年中に専門家などによる検討会を立ち上げる模様。これが順当に動けば、ついにケージなどの大きさを数値で具体的に規制できるようになる。
犬や猫の劣悪な飼育規制へ ケージの大きさなど数値で(朝日新聞デジタル)
振り返れば2015年10月末に、「年間繁殖回数の制限」をかける方向で環境省が調整に入ったと報じられてからちょうど1年。2017年に予定されている動物愛護法改正に向けて、積み残しとなっていたテーマの最後のものに、ようやくメスが入る形となる。何はともあれ、動き出したことについて素直に喜びたい。
昨年の記事でも触れたが、2011年の検討報告書(案)では
・深夜の生体展示規制
・移動販売の規制
・対面販売・対面説明・現物確認の義務化
・犬猫オークション市場の基準設定や監視システムの構築
・子犬/子猫を親から引き離す日齢
・犬猫の繁殖制限措置
・飼養施設の適正化
・動物取り扱い業の業種追加の検討
などさまざまな内容がテーマとして挙げられていた。そのうち「繁殖制限措置」と「飼養施設の適正化」については手つかずのまま残されていて、繁殖制限については昨年秋に委員会が立ち上がった……というのが前回までのあらすじだ。
「繁殖回数制限」と「飼養施設の適正化」が,ついに改正か?(dogplus.me)
これも繰り返しとなるが、飼養施設の適正化については、明確な数値で制限をかけることに大きな意味がある。“繁殖屋”(ブリーダー、などという言葉を彼らに対して使ってはいけない)や生体販売ショップなどに見られる極悪卑劣な飼育環境に対して、行政が正面から「NG」といえるからだ。現状の数値規制のない状況では、彼らにいくらでも言い逃れの道を与えてしまうし、それを強く是正させたり強制的な権限を発動させたりすることは、できない。
なので2012年改正のときの動物愛護部会(環境省の中央環境審議会内にある)が報告書の中で触れたように「現状より細かい規制の導入が必要」なのだ。なにせ現状の法だと、
「個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること。また、飼養期間が長期間にわたる場合にあっては、必要に応じて、走る、登る、泳ぐ、飛ぶ等の運動ができるように、より一層の広さ及び空間を有するものとすること。」
という、曖昧かつどうとでも取れる内容の表記しかないのだ。「自然な姿勢」とは何か、「日常的な動作」とは何か、「長期間」とはどれくらいなのか……私が生体販売ショップを始めたとしても、こんなのいくらでも言い逃れできるだろう。
ちなみにアメリカでは、犬のスペースは「(犬の長さ+6インチ[約15cm])×(犬の長さ+6インチ)」の正方形が「犬にとって必要な床面積」であることが、動物福祉法で定められている。ドイツにいたっては
犬の場合、体高50cmまでは6平方メートル、体高50〜60cmまでは8平方メートル、体高65cm以上は10平方メートルの広さがなくてはいけない。どの辺も2mより短くてはいけない。そして1つのオリ(ケージ)には1頭の犬しか飼ってはいけない。
と決められている。つまり、チワワ一頭でも2.5m×2.5mほどの広さがないとならないわけで、これを適用すると、実質的に日本の生体販売ショップは成立しないといってもよいだろう。これはもう、なんとしても数値規制は骨抜きにならないように導入していただきたい。しかも上記は「ほんの一部」に過ぎず、ほかにも山のように細かい規制が入れられている。
そういう最悪なスパイラルだけは早急に断ち切らなくていけない。そのためには、この数値規制は非常に大きな意味を持つ。
かつて騒がれ、多くの人がいまだ分かりやすい“目標”として掲げる「8週齢規制」については、業者サイドの議員の反対によって実質骨抜きにされたことは記憶に新しい(→こちら参照)。今度こそ、明確な数値規制を定め、劣悪な環境におかれる不幸な動物たちが、少しでも減ることに強く期待したい(余談だが、付則第七条の「49日規制」はすでに始まっている。いまなお平然と6週程度の個体が並ぶ生体販売ショップも多い)。