以前製品を紹介した「BOS」というビニール袋を覚えているだろうか。大阪に本社を置くクリロン化成というフィルムメーカーの製品だ。記事中でも書いたが、ウンチを拾って口を結ぶだけで、まったく臭いが漏れてこないという驚異のビニール袋で、しかも燃やしても問題のない材質で出来ているので、そのままゴミ箱に捨てられる。
ゴミ箱にそのままポイッと捨てるとはいえ、ゴミ袋を回収に出すときのあの「うっ」という臭いすらまったくしなくなるので、ウンチ袋の用途のみならず、大きめのサイズを買ってトイレシートとかを捨てるために入れている人もいると聞く。
私自身が大変お世話になっている製品なので、記事ではこれでもかと称えてしまったが、そのBOSの開発責任者の方が東京に出てくるというので、忙しいところを無理矢理時間をもらって、軽くお話を聞くことができた(ほかにも数々の取材が入っていた模様)。
クリロン化成の名前をGoogleで検索して会社のサイトに飛ぶと分かるが、BOSの文字はどこにも見当たらず、やたらに真面目な作りのページが目に止まる。食品加工の会社などに梱包フィルムを販売する会社であるがゆえに、とくに一般ユーザーに向けてアプローチする必要性はないのだが、そうであれば逆に、なぜこの会社からBOSが生まれたのかが気になるところ。そのあたりのことも踏まえつつ、BOSというフィルムの新たな展開なども聞いてみることにしよう。
犬の散歩は、基本的には毎日行くもののはずだ。毎日のことだからこそ、少しのストレス軽減が、大きなメリットになる。臭いビニール袋を持ってあるくことがイヤで(好きな人はいないと思うが)、なんとなく散歩がおっくうになってしまっているのであれば、ぜひBOSを試してみてほしい。
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BOS公式サイト
クリロン化成公式サイト
本日はよろしくお願いします。安原さんが東京に出てきているタイミングで(注:クリロン化成は本社が大阪)無理矢理お時間いただいちゃいました。ありがとうございます。
前回のインターペットの会場でも申し上げたんですが、実は個人的にずっとBOSにはお世話になっておりまして……。
安原綾乃氏(以下、安原氏):
ありがとうございます!
dpm:
会う人会う人に紹介してるんですが、割とみなさん知らないことが多いんです。もったいないですよね、こんなに便利な製品なのに。
安原氏:
まだまだ「知る人ぞ知る」といったレベルですのでもっとがんばらないといけないですねえ。
dpm:
何が嬉しいって、犬のウンチ袋をそのままカバンに入れてもまったく無臭なところです。
安原氏:
展示会なんかでも、みなさん「いますぐここで使いたいんですけど!」とおっしゃってくれます。カバンから出して「いまここにあるんです……」って(笑)。
dpm:
あぁ、それはまた切実な……。そのへんに捨てるわけにもいきませんし、カバンはどんどん臭くなるし。しかしいま「知る人ぞ知る」とおっしゃってましたが、さすがに最近はちょっと広がってきたんではないでしょうか。
安原氏:
インターペットなどで地道に知っていただく活動をしているせいか、最近ようやく「広がってきた……かな?」という手応えはありますね。夢は、臭いの問題で困っている世界中の方のお役に立つことです。
dpm:
確かにこれは国が変われど問題は変わりませんしね。最近は、何か特別な販促活動みたいなものってしてらっしゃいます?
安原氏:
私どもが何か特別に……というよりは、店舗さんが力を入れてくださるようになってきて、それがとても嬉しいですね。イオンペットさんなどは、この夏から全国の店舗に展開してくださったりですとか。
dpm:
実店舗全国展開ですか。
安原氏:
イオンペットさんは、幕張新都心の店舗だけはずいぶん長いこと置いてくださっていたんですけど、ついに全国に進出できました!
dpm:
最近ちょこちょこ店舗で見かけるなぁ、と思っておりました。
安原氏:
確かに今年は春から夏にかけて、ペット専門店さんを筆頭に、ホームセンターなどでもだいぶ広がってきていると思います。
新規事業として始まったBOSプロジェクト
dpm:
ところで話が前後しちゃうんですが、安原さんって、BOSにおいてはどういう仕事をしている人なんですか?
安原氏:
難しい質問ですね……。BOSプロジェクトの立ち上げ当初から関わっていて、営業活動やマーケティング、商品企画から広報活動までなんでもやってきました。「プロジェクト推進係」みたいな感じですかね?
dpm:
ずっとこの会社でやってこられて?
安原氏:
いえ、転職組なんですけど、割と早かったのでもうだいぶ長くクリロンにいます。
dpm:
元々何をしていた方なんですか。
安原氏:
私いわゆる理系というやつで、派遣社員としてメーカーで働いていたんですけど、ある日「21世紀になったし、私もこのままじゃダメだ」と思い立って……。
dpm:
21世紀って(笑)。
安原氏:
なんなんでしょうねホントに(笑)。でも当時ホントにそう思って、すぐ就職活動してここに入ったんです。
dpm:
カッチリした理系の方だったんですね。「理系」とか言う定義もどうかと思いますけど。
安原氏:
そうですね。元々は技術開発部門にいたんですけど、BOSプロジェクトが始まるくらいのタイミングで、開発営業部という新しい部署に異動しまして。クリロン化成でしか出来ないことを提案して、開発して、発信して……という。
dpm:
一種の新規事業部ですね。
安原氏:
でも私は技術畑出身なので、それまで電話すら取ったことがなくてですね(笑)。
dpm:
ホントにそういうものなんですね。
安原氏:
テレアポとか初めてやりました。敬語の使い方とか、本買ってきて勉強したりして。
dpm:
そこまで来るとなんか微笑ましいです。
安原氏:
メールなんかも外向けに書いたことないので、書きながら全部調べてました。「こういう言葉でいいんだろうか」「こういう表現でいいんだろうか」「こういう文面で出していいんだろうか」って。……って、いま自分で言ってて、なんて人だと思いますね(笑)。
dpm:
最初にお会いしたときには、すでにペットショーの会場でバッチリ営業さん的な雰囲気だったので、全然気付きませんでした……。人知れぬ努力(?)をしてきた理系の方だったんですね。
安原氏:
ようやく人並みになりました(笑)。
最初は自社で製品化して販売するつもりはなかった
dpm:
しかしプロジェクトリーダーなのであれば、お聞きしたいことがあるんです。御社のサイトを見ると、フィルム専門の会社ということで「梱包用フィルム」とかがメインなわけですが、BOSって“梱包”とはまたちょっと違った概念の製品ですよね。これってどういう経緯で生まれたものなんですか?
安原氏:
おっしゃるとおり、元々弊社は食品用のフィルムなどを作っている会社です。高機能な独自の機械を使って、大変高性能なフィルムを作っているわけですが、その中で一部、医療向けに作っている製品があるんですね。
dpm:
それは何を梱包するものなんでしょう?
安原氏:
大腸ガンを患われた方などが、大腸を切ったときに人工肛門を装着するのですが、そこには排泄物を受ける袋というものが必要になるんですね。その袋を付けた状態で日常生活を送られるんですが、やはりそこにはいろいろな問題があるんです。
dpm:
それはそうですよね……。
安原氏:
ニオイの問題もそうですが、袋の音がガサガサするのが気になるですとか、いろいろと難しい部分なんですね。
dpm:
なるほど、確かに音はそうですね。考えたこともなかったです。
安原氏:
やわらかくてニオイが漏れないフィルムって、すごく難しいんです。それを弊社が20年間ずっと作っているんですが、このすごい袋を何かほかにも、世の中の役に立つ形で利用できないものかと考えて、その結果出来たのが、この「BOS」なんです。
dpm:
医療用フィルムから犬のウンチ袋という、すごい方向転換に思えるんですが、企画会議とかに出したときに皆さんどんな反応だったんですか?
安原氏:
いや、実はBOS自体10年くらい前からあるので……。
dpm:
え。知りませんでした、すみません……。
安原氏:
あ、いえいえ。一般向け商品としては存在していなくて、BtoB*でしか扱ってなかったんですね。
*BtoB:Business to Businessの省略系で、企業が企業向けに行う事業のこと。企業が消費者向けに行う通常の事業はBtoC(Consumer)
dpm:
なるほど、それで全然存じ上げなかったわけですね。しかし、BOSはBtoB製品発祥だとおっしゃいましたが、その「toB」の「B」はどこだったんですか?
安原氏:
実は……いまとなってはある種競合製品なんですが、ウンチ袋を作っている会社さんですとか(笑)。
dpm:
えええええ(笑)。
安原氏:
「こんなにいい素材があるので使ってくれませんか!」って。なんか、いま考えるとすごくのどかですね(笑)。
dpm:
それは採用してもらえたんですか?
安原氏:
1年くらいずっと各社さんを回ってたんですが、皆さん口を揃えて「すごい!こんなにニオイがしないなんて!」とおっしゃってくださるんですが、「どうせ捨てる袋に、飼い主さんはお金なんか使わないでしょ?」と言われまして。
dpm:
それ犬飼ったことない人ですよ……。
安原氏:
どこでもそう言われて、このままじゃせっかくのこの素晴らしいフィルムが埋もれてしまうということで、自力でBtoC向けの製品を作り始めたんです。
dpm:
いつごろの話ですか?
安原氏:
それが3年前くらいです。……2012年10月から始まったと記憶してるので、うんそうですね、3年くらいですね。
dpm:
いくら元から素材があるとはいえ、すごく短期間で製品化までこぎ着けましたね。
安原氏:
でも最初の製品が出来ても、1個しか展開してない製品を、店舗さんは扱ってくれないんですよね。ですので、Amazonに自分達で出したのが、最初の大きな動きです。
dpm:
なるほど、そこでAmazonに。そのあたりで私が見つけて使い始めたわけですね。
安原氏:
あ、そうなんですね。Amazonに出したら、おかげさまでクチコミでどんどん広がっていって……。レビュー数292件で星4.8とかもらえてホントに光栄です。
dpm:
“あの”Amazonで292件の星4.8はすごいですね。
安原氏:
そうですよね。Amazonさんにも驚かれました。
dpm:
でも一度使ったら完全にノックアウトですよこれ。5点近いのも分かります。
袋の詰め込み方には特許が!
dpm:
しかもこれ、実は買わないと気付かないんですが、あんまり(値段が)高くないんですよね……。
安原氏:
そうなんです。知ってる方や、ほかの袋をいままで買ってた方なら気付くんですが、そうじゃないと「ウンチ袋にこんなにお金払うの?」と思ってしまうかもしれません。
dpm:
いわゆる一般的に広く売られている製品をAmazonで比較しても、同じ200枚入りが事実上同じ値段ですからね。
安原氏:
あとですね、ほかの袋に比べると非常にコンパクトでまったく邪魔にならないんです。
dpm:
……そういえばそうですね。言われてみれば、200枚入りでもサランラップの箱より小さい気がします。3箱買っても、ほかの製品の1箱分より小さいかも(注:200枚入りボックスのサイズは、横21.7cm×奥行き8cm×高さ5.6 cm)。
安原氏:
そうなんです! でも言われないとやっぱり気付かれないですよね(笑)。実はこの袋のしまい方はホントに苦労したところで、特許も申請中です。
dpm:
ええと、なんて言うんでしょう……この「詰め込み方」ですか?
安原氏:
はい。このコンパクトなスペースの中に200枚を詰め込んだものは、今までないんですよ。
dpm:
ある種の発明ですね。
安原氏:
製品化のときに追い詰められて、延々数時間ずっと紙工作してようやく行き着きました(笑)。
dpm:
それは安原さんが?
安原氏:
そうですね。私ともう一人の、最初は二人のチームだったので。夜な夜な二人でずっと紙を切った貼ったして。
取り出し方もこれ、結構考えられてますよね。最後のほうになっても、まだちゃんと1枚ずつ取れるのが結構すごいなぁ、と思います。
安原氏:
気付いていただけました? 嬉しいです(笑)。あそこもすごく苦労したところなんです。たまに数枚が一緒に取れちゃうことがあるかもしれませんが、キレイに1枚ずつ取れるはずです。
dpm:
あと先ほど「ガサガサうるさくない」という話がありましたが、ほかにも冬場であってもスッと袋の口が開くのが、大変素敵です。
安原氏:
そうなんです! そこもこだわってがんばりました!
dpm:
冬場にウンチ袋の口がなかなかあかないあのイライラは、たぶん犬の飼い主さんであればみんな経験済みだと思うんですよね……。取り出したBOSをそのままたたんでしまっておいても、一瞬で開くから、なにもストレスないですよね。
安原氏:
結構いろいろこだわってるんですよ。たかが袋なんですけど。
dpm:
ニオイがまったく漏れないで、薄くてやわらかくて、ガサガサ音がしないで、あけやすくて、そのまま燃えるゴミとして捨てられて、パッケージも小さくて、取り出すときも楽チン……と、だいたいこんな感じでしょうか。
安原氏:
それで全部です(笑)。
dpm:
しかし先ほど二人だとおっしゃってましたが、この規模の会社なので、もうちょっと大きいプロジェクトチームが結成されたものだと思い込んでました。
安原氏:
いやそんなに大きい会社じゃないんですよ。フィルムとかですと、ほかにも巨大企業さんがいっぱいいらっしゃるので。なので資本力で勝てない我々は、とにかく知恵で勝負だ、というところがありまして。
dpm:
知恵と工夫で生き延びろ、と。
安原氏:
ええ。おっしゃるように、こういうプロジェクトなんかだと、巨大な会社さんなら事業部とかが立ち上がるんですが、そういうのもなく(笑)。
dpm:
まぁチームが大きくなるのも一長一短ですからねえ。結果的にはうまくいってるわけですし、いい方向に転がりましたね。
安原氏:
そうですね。自分達で手を動かして作って、自分達で売り歩いて、そしてまた自分達で商品を増やして……。
dpm:
途中でツラくなったりしなかったんですか。とくに、まだ誰にも製品を知られていないようなころとか。
安原氏:
いやあ、そこは「絶対にいつか陽の目を見るはずだ」という根拠のない確信の下に(笑)。
dpm:
ポジティブですね!
安原氏:
でもやはりAmazonが最初のターニングポイントでしたね。あそこで実績を作れたからこそ、新しいものを取り入れてくれる店舗さんに置いてもらえるようになったわけですし。
“消臭機能のある袋”とは根本的に違う製品
dpm:
しかしこのフィルム、一体どういう構造なんですか?
安原氏:
あんまり細かいことは紹介できないんですが(笑)、端的に言うと「ニオイ物質を大変通しにくい素材になっている」という感じでしょうか(注:公式サイトの「こちら」参照)。
dpm:
私嗅覚には結構自信あるんですが、ホントにほとんど感じないんですよね……。
安原氏:
それならよかったです。ニオイの実験ってよくアンモニアでやるんですけど、アンモニアと、こういう……なんていうんでしょうか、便のニオイって、もうそもそも人が鼻で感じるレベルが全然違うんですよね。アンモニアと比べると便のニオイは、すごくわずかだったとしても、人はちゃんと感じ取るんですよ。
dpm:
そんなに差があるんですか。
安原氏:
「ニオイ」も物質ですから、一応機械でもチェックかけるんですが、BOSは限界を超えていて検出不可能になります。数字が出ないんですよ。
dpm:
よく「消臭機能のある袋」って売ってるじゃないですか。ウンチ袋を入れておくと匂いませんよ、みたいな。ああいうのとは根本的に違うということですか?
安原氏:
あれは、消臭剤が袋に練り込まれているんです。
dpm:
あ、なるほど。それだけのものだったんですね……。
安原氏:
でも元々の袋の素材自体はニオイを通しやすい素材ーーーというか普通の素材ーーーで、そこに消臭剤を入れ込める量は極々ほんのわずかなんです。
dpm:
袋の素材なんてホントに薄いものですしね。
安原氏:
ええ。例えばウンチ袋や、ペットシートを入れてあるビニール袋を想像してもらえればいいんですけど、消臭スプレーを一回プシュッとしたところで、ニオイが消えたりはしませんよね。要はそういうことです。
dpm:
どれを試してもまともに消臭してくれないなぁ……と思ってたんですが、そういう理由だったんですね。
安原氏:
ですのでBOSは、素材自体がニオイの漏れをブロックしていて、まったくニオイを感じない構造になってるんです。とはいえ「100%通さない」というのは難しいので、ホントに極々わずかずつ漏れてるんですね。でもそれは人間の鼻にはほとんど感じ取れないということです。
「袋に感動したのは初めてです」という声も
dpm:
でもそういう根本的な構造が違うからこそ、何にでも使えるわけですね。おむつだったり、生ゴミだったり。
安原氏:
相性の悪いものもごくわずかあるんですけど、たいがいのものは大丈夫ですね。
dpm:
相性の悪いものってちなみになんですか?
安原氏:
柔軟剤とかの「芳香剤」はダメですね。それ以外はいまのところすべて大丈夫です。ドリアンでも平気だったよーと、知り合いが言ってました(笑)。
dpm:
これだけニオイが漏れないなら、例えばマックのポテトも平気で電車に持ち込んで持って帰れそうですね。……あれ結構においますよね。車内に持ち込んでる人がいると一発で分かります(笑)。
安原氏:
大阪で言うなら551の豚まんですね(笑)。全然大丈夫だと思いますよ。豚まんは私自分で試しましたから。
dpm:
まぁ人間の便でも大丈夫なものなんですしね……。
安原氏:
よく「袋に感動したのは生まれて初めてです!」って言われます。
dpm:
それは言い得て妙ですね。確かに「袋」に感動したのは私も生まれて初めてかもしれない。素材1つでこんなに使い方が変わって、生活の中での重要度も変わるものなんですねえ。
安原氏:
もっともっと知ってほしいんですけどね。犬のウンチは、飼っている人にとってストレスにさえなりうるものなわけですし。
dpm:
そうなんですよね。この製品で、犬との生活にも変化が起きた気はします。どこでウンチされても焦らないですし。
安原氏:
あ、それは嬉しいです。例えばどんなところが変わりました?
dpm:
以前は、例えばドッグカフェに行く前とかにウンチされたら、それどうすればいいんだろう……とか心配してました。持って店に入るのはさすがに抵抗あるし申し訳ないし、とはいえカバンには入れたくないし、外には置いておけないし、捨てるところもないし……みたいな。わざわざ一回クルマに戻って外にぶら下げたり、場合によってはカフェに行くのを諦めたりして。でもいまなら全然問題ないですね。カバンはおろか、極端に言うならポケットに入れても大丈夫です。
安原氏:
お役に立ててるようで嬉しいですね。あと赤ちゃんのおむつなんかも、レストランとかでもししてしまったら……とか。
dpm:
確かにそうですねえ。まぁ本気で怒る人はいないと思いますけど……ね。とはいえ、最初の1枚を使うときにはやっぱり半信半疑でしたね。「とはいってもビニール袋でしょこれ」みたいな。
安原氏:
まぁそうですよね(笑)。
dpm:
大体、普通に犬を飼っていればウンチの処理で頭を悩ませないはずはないんですが、普通は「袋」に違いがあるなんて分かりませんよね。私だって偶然見つけて買って試してみるまで、そんなもの(=まったく臭わない袋)があるだなんて思いもしませんでしたし。
安原氏:
あると思わないから探さないんですよね。そこが今後の展開の悩みところです……。
dpm:
いやまったくですね。どこかすごく目に付くところに出すしかないのかな。
安原氏:
例えばベビー用品だったら、3大店舗というものがあって「ここに出しておけば皆さんの目に付く」みたいなものがあるんですよね。アカチャンホンポ、西松屋、トイザらスという。
dpm:
うーん、確かにペット用品って、そこまで強い店舗なり場所が存在しないですよね。
安原氏:
そうなんです。ですので告知も展開もすごく難しいなぁ、と。
dpm:
ある意味とても健全なマーケットだとも言えますが、確かに新製品を販売する側としては悩ましい問題なのかもしれません。
安原氏:
関東圏だと、イオンペットさん、カインズホームさん、オリンピックさんなどで取り扱ってくださってるので、だいぶ押さえられているとは思うんですが。関西のほうだとアミーゴさんという店舗があって、そこで長いこと手厚くやっていただいています。
dpm:
あ、そういえば先日すごく役立ったことがもう1つあってですね。
安原氏:
本来の用途ではなく、ですか?
dpm:
いえ、ある意味本来の用途ですが。犬が誤食して、それが小さいもので、かつレントゲンには写らないものだったので、たぶん下から出てくるだろうと思って待ってたことがありまして。出したウンチを全部指で押し潰して「あるかな?どうかな?」と調べなきゃいけないんですね。
安原氏:
あぁ、それは……。
dpm:
ええ。とうてい普通のウンチ袋じゃあまりに臭くてやる気にならないですし、もちろんコンビニのビニールとか論外です。BOSがなかったら、大変ツラい作業だったと思うんですよね。一応3日分くらい全部潰してましたが(笑)、一度もニオイが漏れたことはありませんでした。
安原氏:
お役に立ててなによりです(笑)。
dpm:
ときに、このあとのさらなる商品の多角化などは、何か考えていらっしゃいます?
ペット用は一番種類が多いんですけど、その中でもこのMサイズ(23×38cm)だけは大容量のパッケージがないので、まずそれを出そうと思ってます(注:すでに登場したようだ。リンク先は楽天)。
dpm:
Mって結構大きいですよね。ウチはS(20×30cm。実質A4サイズくらい)で全然間に合ってますもん。
安原氏:
そうですね。普通はSで十分だと思います。でも、大型犬飼ってらっしゃる方とか、多頭飼いの方とか、結構需要あるんですよ。
dpm:
大型犬の多頭とかだと、確かにSじゃちょっと間に合わない気がします。
安原氏:
あとペットシートなどを入れるのにも、Mくらいじゃないと厳しいと思います。なのでMだけ200枚パッケージがなくて、展示会なんかでもご要望を多くいただいたので。
dpm:
小型犬一頭飼いくらいなら、SS(17×27cm)で十分すぎますよね。
安原氏:
そうですね、十分かと思います。「SS」って聞くとすごく小さいイメージがありますけど、普通に使えるサイズですし。
災害時の大いなる助けになることを目指して
dpm:
この製品、ほかの類を見ない製品なんですが、作るときに何か苦労したことってありますか?
安原氏:
えー、なんだろう……なんかあったかな……(しばし熟考)。
dpm:
……もしかしてなかったんですか?
安原氏:
ないですね。なんかバタバタはしてましたが、すごく楽しく作っていた気がします。
dpm:
なんかずいぶん幸せな商品開発ですね。
安原氏:
そうですか?(笑) でもまぁとにかく早く広げていきたかったので、時間の制約については、ひたすら自分達に課してました。とにかく早く、1日でも早く、先へ先へと。
dpm:
マイルストーン(中間目標)の設定が厳しめだったということですか?
安原氏:
そうなります。何をするにも自分達で「オシリはここまで」と切ってしまって、とにかく時間との戦いにして、それで自分達の首を絞めるという(笑)。でもそれがあったからここまでやってこれたんじゃないかなぁ、とも思いますし。
dpm:
自分で自分の首締めるのは大事ですよね(笑)。追い込まないとなかなかできないし……。しかしエラい速度感でやってたんですね。
安原氏:
もうずーっとこれを作ってる感じがしますね。
dpm:
しかしやっぱり、BtoCでモノを売ったことがない会社なので、それ以外のところが大変だったりしませんでしたか? 例えば営業とかマーケティングとかですか。
安原氏:
確かにそこはそうですね。営業活動はもちろんですが、例えば分かりやすいところではパッケージですかね。飼い主のみなさんの目に付くにはどうしたらいいんだろう、どういうのがいいんだろう、というのがまったく分からなくて知見もなくて。
dpm:
確かにBtoBの会社ですと、そういうものかもしれません。
安原氏:
このパッケージにしても実は2代目でして、最初はもうホントにどうしたらいいのか分からなかったので、「BOS」という名前を知ってほしくてそれを最前面に打ち出してみたりとか。まだAmazonとかでは売ってますけど。
dpm:
このときのロゴはいまでもパッケージに残ってるんですね。
安原氏:
ええ。でもそうやってAmazonで販売しているうちに、一般店舗でも買いたいというお声を多くいただくようになって、じゃあ店舗用のパッケージも作ろう、と。分かりやすく、目に付きやすいものを心がけました。
dpm:
確かにこれはひと目で目的が分かりますし、色味も派手でいいですよね。しかしペット、ベビー、生ゴミ、介護……ほかに用途って何があるんだろう。何かまだ残ってますかね。
安原氏:
いま開発してるのは、災害時用の非常トイレです。
dpm:
確かにすごく役立ちそうです……。私は幸運にも3・11の被害を直接は受けなかったんですが、避難されていた方達はトイレの問題が大変だったと聞いています。
安原氏:
今年の夏(2015年6月頭)に完成しました。震災のときはトイレの問題が凄まじくて、それが原因で関連死などもあったりとか……。嘔吐や下痢なんかもすごかったとのことで、自分の嘔吐物を枕元に置いて寝なくてはいけないとか、でも臭いのはみんな同じだから我慢するしかないとか、聞いているだけで悲惨な状況で……。
dpm:
ものすごい状況を強いられてたんですね……。
安原氏:
はい。それを聞いたときに「これこそ我々の製品の出番だ」と思ってがんばりました。ご年配の方なんかでも、仮設トイレなんかは段差があって行けなかったりとかしますし。いろいろな場面でお役に立てるのではないかと思っています。
dpm:
使う人の不便を直接軽減できるという、大いなる社会貢献ですね。素晴らしいです。
安原氏:
そういうことも含めて、BOSというフィルムがいろんな形で広がっていってくれるといいな、と思っています。
dpm:
この商品になくなられると犬の散歩が大変困るので、ぜひ今後ともがんばってください。ありがとうございました。
ーーー2015年7月6日収録