日本全体の出産率が下がり、夫婦であっても個人のライフスタイルが重要視され、DINKS(死語ですかね?)が当たり前になり、それに引っ張られるように、犬が良くも悪くも“家族の一員”としての地位を確立していくにつれ、「ペット監視用カメラ」(ネットワークカメラ)の需要はどんどん増加している。その証拠に、パソコン系周辺機器メーカー大手は、アイ・オー・データ機器やPLANEX、コレガ、エレコムなどそのほとんどが製品を出しているし、そればかりかパナソニックやNECなどの大手電機メーカーも参入、果ては携帯キャリアまでもが乱入するという、地味ながらも大混戦のマーケットだ。
・画素数(=大体の場合、画像の綺麗さと言い換えてよい)
・カメラ部分の可動性(=レンズを動かして広い範囲が見られる)
・リアルタイム性(=リアルタイムに見られるか数秒に1枚か)
・動き検知(=何かが動いたときだけ撮影)
・録画機能(=あとで見返すときのために録画できる)
・画像チェック方式(=スマホでも見られる)
・マイク/スピーカー内蔵(=カメラから声が出せて音が聞ける)
・温度計内蔵(=カメラがある場所の温度を測定)
など機能の違いはいろいろあるが、でも正直なところ結局のところどの製品にも「ネットワークを通じて映像が見られる」という根本的な性能の違いはさほどなく、オプション機能が気にいったかどうかと、お財布事情、入手のしやすさなどで選んでしまうことになりがちだ。
とはいえ、共働きや一人暮らしで犬と共に暮らす人であれば「いつか必ず欲しいアイテム」のリストの筆頭にあるだろうと思われるアイテムで、単に「どれが一番いいのかよく分からない」「自分で設定できるとは思えないのでちゃんと考えたことがない」という理由で延び延びになっているだけだと推察する。
そんな中、2015年8月に登場予定のこの「ilbo」(イルボ)は、いままでのペット用カメラとは明らかに一線を画する製品だ。今回のインターペットで試作機を展示してあったのだが、その新しさに目を引かれたので紹介しよう。
ilbo公式サイト
ilboの最大の特徴は、写真を見れば一目瞭然。見たとおり、カメラ部分が移動できるのだ。ネットワークカメラを買ったことがある人なら分かると思うが、設置場所には大変に気を遣う。そもそも留守中ににフリーないしそれに準ずる状態にしてあるからカメラが必要なのであって、移動する犬の行動をチェックするために、どこに置くのが一番いいのか割と真剣に悩む。
しかしilboなら、その心配はまったく無用だ。「あれ、いないな?」と思ったら遠隔操作で移動させればよい。しかもその操作は、スマートフォンやタブレットで実際のカメラ映像を見ながら自由に動かせる。便利。
また、これも同じくネットワークカメラを買ったことがある人なら(もしくは買おうと思ってちゃんと調べたことがある人なら)分かると思うが、製品によっては設定が泣くほど面倒くさい。筆者はIT系にはそれなりに詳しい自負があるが、それでも普通に面倒くさいと思うし、「NAT越え」「グローバルIPアドレス」「ファイアウォールの設定変更」「ルーターにログイン」などの専門用語を連発されたら、普通の人がちゃんと設定するなんて無理難題に決まっている。そもそも一般の人が相手の製品なのに、ネットワーク機器の知識や複雑な設定を要求するなんてどうかしている。
さすがに最近はその手間を省いた製品も多いが、ilboもそれに準じた形で非常に簡単な設定方法になっている。ilboを自宅のWi-Fiに繋いで(これもボタン1つで済むことが多い)、ilboを使うためにユーザー登録をするだけだ。それでおしまい。面倒なネットワークの設定は一切不要だ。*
*詳しい人のために若干補足説明しておくと、ダイナミックDNSを使ってポート開放するパターンの接続ではなく、ilboのサーバーを介して通信するという、古典的だが枯れて信頼性の高い方法になっている。本体に情報をプリセットしておいてダイナミックDNSへの接続を確立してUPnPを使ってあれやこれや……という方法が割と幅を効かせているが、どうにもボトルネックになる部分が多いので問題も噴出しがちで、一般的にはちょっとどうかな?と思うところではある
いったんその設定が終われば、あとはiPhoneやAndroidなどのスマートフォン、iPadなどのタブレットからカメラの映像がリアルタイムに見え、しかもスマホ上でカメラ自身を移動できる。カメラそのものの上下角度も45度くらいまで動かせるようなので、だいぶ広い範囲が見える。近未来SFの香りが漂う感じも大変に良いが、とにかく純粋に便利である。
ちなみに自走式ということでバッテリーの持ちが気になると思うが、フル充電からの連続走行で約2時間。移動などの操作をしない待機状態であれば、約4時間だ。「それだけ?」と思うかもしれないが、これはあくまでも「2時間連続で動かしっぱなしで映像をチェックしていた場合」の話である。そんなことはまずしないだろうし、ilbo自身が上に乗ることで充電できる専用の充電台もある。スマホ側でバッテリー残量の確認はできるので「ヤバいな」と思ったら操作してその上に乗せればOKだ(ちなみに本体のデザインがちょっとごっついのは、大型犬などが倒したりかじって壊したりしないため)。
犬飼いのみなさんであれば、ペットが動いた場所を追っかけられる……という便利さを真っ先に想像すると思うが、“カメラを移動できる”というのは利用用途が大変に広く、「電気の消し忘れ」「窓の閉め忘れ」「エアコンの消し忘れ」「TVの消し忘れ」「カーテンの閉め忘れ」など気になる部分は全部チェックできる。筆者は忘れてばっかりなので、非常に頼もしい感じだ。
でもチェックするだけじゃねえ……と思ったあなたはするどい。ilboを作っている株式会社エクストランによれば、(公式サイトでは「予定」と書いてあるが)赤外線通信機能は搭載済みで、“学習型リモコン”にして家電やエアコンのON/OFFもできるようにするとのことだ。そこまでいくとペット監視カメラというより一種の遠隔操作ロボットだが、それはそれで、大変に楽しくて便利な未来が見えそうだ。温度センサーも搭載されているので、そうなれば家の中の情報はほとんど取れる。マイクとスピーカーも内蔵していて双方向の通話もできるので、悪いことをしてる愛犬を発見したらスマホ越しに叱ることも可能だ(筆者もたまにやるが効果絶大)。
まだテスト版ゆえ、大きさやデザイン、スペックなどは変わることもあると思うが、2015年8月の発売に向けて絶賛開発中。現時点では「3万円くらいで売りたいと思っています」(エクストラン社談)とのことで、機能を考えたらかなりの戦略プライスだ。期待して待ちたい。
最後に、現時点でのスペックを列挙しておこう。
全長x全幅x全高 | 180×180×167mm |
重量 | 825g |
カメラ | 30万画素C-MOS。H.264 640×480 30fps |
音声 | マイク/スピーカー共に内蔵 |
移動 | 前進/後退、左右旋回 |
無線LAN | IEEE 802.11b/g/n 2.4GHz(WPA2) |
その他 | 赤外線リモコン/温度センサー内蔵 |