愛犬の健康管理は、飼い主の皆さんそれぞれが気を遣って実践していることと思う。毎日のウンチの状態チェック(これが一番大事だったりする)はもちろん、尿の色、歯茎の色、目やに、毛づや、歩き方、ご飯の食べ方などで状態をチェックして、爪切りや肛門腺絞り、歯磨き、シャンプーなどでメンテナンスをする。まぁこのあたりは(全部はやっていないにしても)割と一般的だ。
しかし「何か変だな?」と思ったときに、病院に行く/行かないの判断は意外に難しい。四の五の言わずに黙って行けばよいのだが、時間的にそうもいかない場合もあるし、“誰が見ても緊急”という状態でない限りはつい後回しにしがち。脈拍や心拍数などを全部管理している人はそうそういないだろうし、「いま病院に行ったほうがいいのかどうか」というのはシンプルで意外に難しい問題なのだ。
そんなときに病院に行くことを後押し(または行かなくてよいという判断をくだすための材料を提示)してくれるのが、今回紹介する株式会社日本テクニメッドの「サーモペット」だ。インターペットに出展していたのを発見したので、紹介しておこう。
サーモペット公式サイト
日本テクニメッド公式サイト
本製品をひと言で言うと「愛犬用の体温計」。知っている人も多いと思うが、犬の体温は、成犬であれば38.5℃前後。健康なときの愛犬の体温を知っていれば、「何か異常な事態」になったときにも数値でそれが分かるというわけだ。ちなみに大体39℃くらいを越えると“よくない事態”だと思ってよいと思う(パピーは代謝が激しいので体温が高めに出るが、体温調節機能が不安定なので体温の数字も不安定になりがちだ。なので体温表示を過信しないようにしたい)。
では体温を測るにはどうするか。獣医さんがよくやるように、肛門から体温計を入れるのが一般的だ。オイルなどを塗って滑りをよくして4cmほど入れるだけなのだが、なんだか(人間視点で考えると)ちょっと可哀想な気もするし、そのまま少し我慢させなくてはいけないのもちょっとハードルが高い。
そんなときに役に立つのがこのサーモペット。愛犬の体のどこにも接触させずに、1秒で体温が分かる優れものだ。
原理は(ハイテクだけど)シンプル。目から放射されている赤外線(動物は赤外線を出しているのです。知ってました?)を感知させて、その赤外線を温度に変換する技術で数字として表示しているというわけだ。なので「接触させずに」「一瞬で」計測ができるという次第。
ペットボタンを押したまま、本体から出る赤い光を愛犬の目に合わせて、ボタンから指を離せば計測終わり。* インターペット会場で実践してもらったが、慣れれば本当に1、2秒だ。赤外線とはいえ赤い光を当てるのがちょっと気になるし、目の前から何かが迫ってくるのをイヤがる犬もいるんじゃないかと思って聞いてみたところ「耳の内側やお尻の表面、歯茎などでもちゃんと計れますよ」(日本テクニメッド社談)とのこと。ちなみにもちろん、この赤い光が当てられる大きさの場所があれば、いろんな生き物で計れる。牛とか馬とかゾウとかウサギとか、なんでもOKだ。
*厳密には“ピント合わせ”のような動作も必要だが、それとて一瞬で終わるものなのでここでは考慮しない。
ところでちょっと上で“ペットボタン”と書いたことからも分かると思うが、実はこの製品は非接触型温度計としても完全に機能するので、食べ物の温度、赤ちゃん用のミルクの温度、お風呂の温度、庭の土の温度など、どんなものでも問題なく計れる(そのための「ホームボタン」が付いている)。上限値は「55℃くらいまで」(同社談)とのことで、残念ながら天ぷら油の温度は計れそうにないが、たいがいのものは大丈夫だろう。
会場で同社代表取締役社長のGeorge Godoy(ジョージ・ゴドイ)氏に話を聞いてみたところ、なんとこの製品、開発に6年をかけている自信作とのこと。2015年2月から販売を開始したばかりで、しかもなぜか最初に販売開始した国は日本だ。
なぜ日本からなのかという問いに、「犬や猫などペットのヘルスケアに対する感覚が、世界のどの国よりも日本は強く、独特のものを持っている。家族の一員としてとても大事にされており、そういう国の飼い主さんであれば、私どもの製品の価値が分かってもらえると思った」とのこと。
もちろん、体温を知っておけば万事安泰などということはない。体温だけを過信して、どんなに犬の体調が悪そうでも「高くないので病院に行かない」などという判断はくださないよう気をつけたい。元気や食欲など、総合的に見て判断することが重要だ。
しかし“総合的に見て判断”するためには、飼い主の義務として愛犬の通常状態を把握しておかねばならない。万が一何かがあったときにも適切な判断をして、獣医さんに正確な報告ができるよう、こういう製品を1つ持っておくのもよいだろう。また動物病院向けにも良い製品だと思うが、この計測の簡便さからみても“プロではないけれど体温を頻繁に測る必要がある人達”(例えば保護団体とか)にとっても最適な製品ではないかと思う。価格はやや高め(税込2万9800円)だが、ぜひいろいろなところで役立てたい。