犬の世界で「遺伝子検査」というと、たいがいの場合はブリーダーが行う遺伝性疾患に対するチェックを指すイメージではないだろうか。トイ・プードルのPRA(進行性網膜萎縮症)やレトリーバー系の股関節形成不全症など、有名どころの検査はぜひ行ってからブリーディングしてほしいものだが、実際にそれをやっているブリーダーさんというのは、全体から見れば少数だろう。ましてや生体販売ショップでそれをしているところは聞いたことがない(あったらぜひ教えてください!)。
そんな、一般の飼い主的にはほとんど縁のなさそうな遺伝子検査だが、それを“カジュアルな形で”(語弊のある表現だがそれがもっとも適切な表現だと思う)実施してくれるサービスが登場した。それが、インターペット2016に出展していた「Gene Puppy」だ。検査価格は、なんと1万5000円(通常価格3万円)。
最初に述べておくと、このGene Puppyは、あくまでも一般飼い主に向けた遺伝子検査であって、冒頭で述べたような専門的なものではない。アトピー性皮膚炎などの各種疾病リスクや、その個体の性格傾向などを教えてくれるものだ。
Gene Puppy公式サイト
これが検査キットの中身。写真だけ見ると“お堅い”イメージだが、その実体は単なる綿棒だ |
公式サイトに
近年の研究の成果によって、性格、体質、様々な病気のかかりやすさなどに、遺伝的傾向があることがわかってきました。遺伝子は一生涯変わることがないため、検査はたった一度でOK。遺伝的傾向を知ることで、「わんちゃん」のことをより深くしることが出来、日々の生活に役立てる事も可能です。
とあるように、この検査は、採取した遺伝子の傾向を判別して教えてくれるサービスだ。例えば人間でも、お酒の強い/弱いには遺伝子が関連しているように(ちなみにNN型、ND型、DD型の3パターンがある),ある特定の遺伝子がなんらかの性質を決定付けるものが、犬にもある。
いま世に出ている膨大な論文を精査して、信用できるものをチョイスし、採取した遺伝子の解析をして、それらのデータに当てはめて結果を示してくれるというわけだ。そして「遺伝子検査」というとなんだか素人的には病気の検査だけに思えるが、それらはその個体の性質/性格にも関わってくる。
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インターペットの会場で取締役CEOの榎田氏に話を聞いてみたところ、現時点では犬の性質についてはだいぶハッキリしたものが出てくるが、疾病周りに関しては、慎重にデータを精査中とのこと。確かに迂闊なことは言えない重要な部分だし、ぜひともそこは慎重にお願いしたい。
2016年4月時点では「アトピー性皮膚炎」のなりやすさを教えてくれるとのことだが、そのほかの疾病についても「肥満」「緑内障」「関節炎」「てんかん」「歯周病」などについて、現在論文とデータを鋭意精査中とのことだ。
※株式会社ディアーパピーからの依頼により、記事の一部を削除いたしました(2016年4月15日15:30)。料金プランを再検討中、とのこと。ご了承ください。
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検査のために、採取キットを使って研究所に送るようになっているのだが、送るものは唾液。キットの綿棒を使って唾液を採取するだけなので、誰にでも出来る。獣医で皮膚の表面の細胞を取ってもらったり、爪を切って送ったり、大量の毛を切ったり、採血をしたり、そういうことをする必要はない。これなら楽ちん。ちなみに送る先は、千葉県木更津市のジェネシスヘルスケア。2004年設立の会社で、(もちろん人間を含め)遺伝子全般を扱う業務を行っている。
ジェネシスヘルスケア公式サイト
まだまだ遺伝子検査は「万能」ではなく、検査で分からない遺伝病も多いとはいえ、比較的低価格で愛犬の性質や疾病の傾向が分かるのは、素直に嬉しい。むろんこれは“医療行為による診断”ではないので、獣医の指導を優先させるべきだとは思うが、自分で情報をある程度把握しておけるというメリットは非常に大きい。
リスクが分かれば、それに応じた食事(正確には「食餌」と書くべきだ)などで対策が立てられるし、散歩や運動などにも役に立つ知見が含まれているに違いない。
具体的で、明日からすぐに役に立つ結果を皆さんにお届けしたいのです
という榎田氏の言葉にあるように、誰にでも分かる内容を表示してくれるこのサービス、気になる方はぜひ一度利用してみよう。サプリや薬と違って、愛犬の体に負担がかかるリスクはゼロだ。社長はIT系の出身なので、個人情報の管理について抜かりはないし、希望すれば検査後のデータ削除についても行ってくれるようだ。
余談だが、猫版の「Gene Kitty」もサービス開始に向けて鋭意進行中とのことなので、猫好きの知り合いがいたらぜひ教えてあげよう。