ドッグフード・キャットフードに関するアンケート調査結果
元アンケートの質問は8つあるのだが、dogplus.meには関連のない猫関係の質問を除くと、全部で7つ。一般に公開されているもの以外のデータも入手したので、その興味深い結果を軽く一望してみよう(以下すべて、調査結果はマイボイスコム(株)調べ)。なおこのMyELというアンケートデータベースは、ジャンルを問わず割と興味深い結果がチラ見できるようになっているので、時間のあるときにぜひチェックしてみよう。
アンケートデータベースMyEL
マイボイスコム公式サイト
1)飼育状況
このアンケートは、n=10731(10731人に対して行われた調査)であり、その中で犬を飼っている人は9.8%。つまりアンケートに答えた人の中の(ドッグフードに関する)有効票は1051人ほどだ。10%かよ! と一瞬思うが、1050人に聞いたアンケートだと考えると、それなりに精度は高い。
ただ、基礎データを見る限り50代以上のシニア層ともいえる人達が50%を占めているので、近年次々と新製品が投入されて、意識改革が行われつつある「ドッグフード」というマーケットにまつわるデータとしては、ちょっとバイアスがかかっているような気はする(これだけ多種多様な製品が登場しているにも関わらず、みんな自分がずっと買っている製品をなかなか変えないだろうし)。以降のデータを読み解くときは、そこに注意だ。
また、もっとも注意すべきは「犬と猫を一緒にしてアンケートをとっている」ということ。猫はウェットフードが強くて、犬はドライが強い……など両者のフードを取り巻く環境にはやや差があるので、そこも勘案して見るのがよいだろう。
2)フードのタイプ
ここは特に特筆すべき点はない。流行っているように思える手作り食が、3年前の調査より減っていることが「おや、そうなのか」と思うくらいか。ただ前述のとおり年齢層のやや偏ったアンケートなので、そこは勘案して考える必要はある。
3)ペットフードにかける1か月あたりの費用
3000円未満/月のボリュームゾーンで50%を越えることが見てとれる。
例えば、そのプライスで急激にシェアを伸ばした「愛犬元気」をサンプルとして考えてみよう。楽天市場で愛犬元気を調べると、大体6kg入りパック「愛犬元気 全成長段階用 ビーフ・緑黄色野菜・小魚入り」が1600円前後。みんながみんな楽天で買うわけじゃないだろうから、ざっくりと「愛犬元気6kgは2000円」として考えてみる。
愛犬元気は、5kgの小型犬だとすると一日の給与量は125g(ほとんどが植物性タンパクで出来ているので消化吸収があまりよろしくなく、与える量はやや多めだ)。6000÷125=48 つまり愛犬元気6kgで小型犬なら48日間持つわけで、そこから導き出される1か月のフード費用は1300円ほど。若干の誤差を見て大体1500円/月くらいか。
低価格で有名な愛犬元気でさえ月に1500円かかるわけで、調査結果では11%ほどいる「1000円未満」という人は、一体何をあげているのか不安にさえなってくる……。もちろん、高いものをあげていればそれでいいというわけではないが、犬のご飯は、犬自身で選ぶことはできない。飼い主こそが気をつけてあげるべきものであり、良質な動物性タンパク質を含むフードを、ぜひとも選んでいただきたい。
余談だが、3%ほどいる「月に10000万円以上」という人。これはこれで何かが間違っていませんか。ただこれ、元の質問が「1頭あたり」という明確な問いではないので、そこでデータ精度に誤りが生じている可能性はある。例えば我が家も多頭なので、単純に「1か月のフード代」と聞かれたら軽く1万円を超えてしまう。次回のアンケートの際にはぜひ「1頭あたり」と明確にしてほしいと思う。あと、できれば犬だけで統計を取ってほしいのだけど、それは公開されておらず残念(有料で販売されている元データがあればクロス集計できるんだろうけれど)。
4)直近1年で使ったフードの名前
“良いフードをあげてほしい”と願うdogplus.meとしてはなかなか興味深い結果が出ている。まずぶっちぎり1位は「愛犬元気」で有名なユニ・チャーム製品。なんと全体の13.7%の人が「使ったことがある」と答えている。以下、ロイヤルカナン製品(8.4%)、サイエンス・ダイエットなどの日本ヒルズ・コルゲート製品(6.6%)、ペディグリーやアイムスなどのマース製品(5%)、ビタワンなどの日本ペットフード製品(4.4%)……と続く。
ドライフードに限って単純に社名/ブランド名、製品名だけでランキングを書き出すと、
1位 ユニ・チャーム(愛犬元気など)
2位 ロイヤルカナン(ヘルスニュートリションなど犬種別フードで有名)
3位 日本ヒルズ・コルゲート(サイエンス・ダイエットなど)
4位 マース(ペディグリー、アイムスなど)
5位 日本ペットフード(ビタワンなど)
6位 日清ペットフード(ジェーピースタイルなど)
7位 ネスレ日本(ピュリナ ワンなど)
8位 ニュートロ(シュプレモなど)
9位 ペットライン(メディコートなど)
という感じだ。
ここだけ見ると、なるほど想像どおりの順位なのだが(全国ベースでの単純シェアなら、おそらくまだヒルズがトップだと思うが)、実はこの調査には「その他」が29%以上いる。しかもこの「その他」は、3年前に比べて5%ほど増えているのだ。
表を見ると、3年前の調査時に比べて「サイエンス・ダイエットなど日本ヒルズ・コルゲート製品」「ビタワンなど日本ペットフード製品」「ジェーピースタイルなど日清ペットフード製品」あたりがシェアを減らしており、シェアが増えたユニ・チャーム製品(愛犬元気など)にしても1%ほどだ。残りが丸々「その他」の中に入った感がある。
数年前から、「プレミアムフードのシェアがじわじわと伸びている」という調査結果が各種調査データで出ているが(何をもって「プレミアム」なのかの定義はどこにもないのだが……)、このデータがそれを表しているものであることに期待したい。
5)ペットフード購入時の重視点
ペットフードに関する調査は山のようにあるが、その調査ごとに激しいブレがないのがこの項目だ。見たままの結果であまり特筆すべきことはないのだが、「価格」を重視する人がやや減って(4%ほど減っている)、「原産国」と「原材料」を重視する人が微増しているのは、前述の“プレミアムフードシェア拡大傾向”というムーブメントと合致しているように思う。
ところで「原産国」を気にするのは、おそらく中国を念頭に置いてのことだと思うが(メラミン事件などクリティカルな問題も多いし)、飛び抜けていろいろと厳しいヨーロッパ以外の国々は、安全性という意味では、国によって(良い意味で)あまり大きな差はないように思う。
中国については現時点では例外だと言わざるを得ないが、それでも昨今は、フードに限らず安全性や透明性、市場の健全性が政府主体で改革が行われるようになってきている。今後には期待できるだろう。しかし皆さんフードについては中国を気にするのに、おやつやトリーツについてはあまり気に留めていない人が多い気がする(中国製、たまにありますよ)。
6)ペットフード選定時の情報源
こちらはこちらでなかなか興味深い。企業のページやショップ店員の説明、パンフレット、折り込みチラシ、雑誌記事、新聞広告、TV CM、友人/知人の意見……などというものが軒並み価値を失っているのが興味深い。フード業界に限ったことではないが、既存の情報伝達経路は、軒並み重要性と信頼性を落としているということだ。前述のように「半数が50歳以上」という年齢層高めの本調査においてもこの結果なのだから、時代の変化をひしひしと感じる。ペットフードのプロモーションもなかなか大変そうだ。
しかし一方で、「商品パッケージの説明」「店頭POP」などの重要度はやや上がっている。商品パッケージには、いまだに「そういう書き方はマズいのではないか」と思われるキャッチコピーや効果・効能、不確かな原材料表記などがまかり通っているので(ダイエットフード、などの表記も割とグレーな製品が多い)、鵜呑みにするのはやや不安ではあるし、そこは業界が中心となってもっとキチンと規制/管理すべきだろう。
実はペットフードのパッケージの書き方については2つの規制がある。その1つが「ペットフード安全法」だ。正式名称を「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」といい、立派な国の法律だ。平成21年6月1日から施行されている。条文をそのまま読んでも大変だろうから、内容については農林水産省のこのあたりのページを参考にしてみてほしい。
もう1つは、ペットフード公正取引協議会が自主基準として定めている「ペットフードの表示に関する公正競争規約」だ。業界の自主基準とはいえ、公正取引委員会と消費者庁の認定の下で作られているものなので、その内容と規制力はなかなかのもの。その2つが、いまのペットフードのパッケージの各種表示についても基本ルールを定めている。
ペットフードを選ぶ側である我々消費者としても、知っておいて損のない情報が多く書かれているので、時間のあるときにでも、両方の資料にはぜひ目を通しておこう。
余談だが、3年前も今年も「獣医やブリーダーなど専門家の意見」を参考にする人が一定数いるが、ブリーダーはともかく、獣医で「フードに詳しい」という人にあまりお会いしたことがない。むろん病気には詳しい(?)が、フードは何がいいのかという話になると、とたんに腰が引ける傾向にある人が多い……気がする(大差ないのでなんでも構わん、という人もいるし。まぁそれも一定の真実ではあるのだが)。その場合は、その動物病院で契約しているヒルズなりロイヤルカナンなりを勧めてくることが多いので、獣医に聞く場合はそのあたりにも注意しよう。
ペットフード安全法 表示に関するQ&A(農林水産省)
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(環境省)
ペットフード公正取引協議会 公式サイト
ペットフードの表示に関する公正競争規約
■ドッグフード・キャットフードに関するアンケート調査
調査対象:「MyVoice」のアンケートモニター
調査方法:インターネット調査(ネットリサーチ)
回答者数:1万731名
調査期間:2016年10月01日〜10月05日
調査機関:マイボイスコム株式会社
調査対象:「MyVoice」のアンケートモニター
調査方法:インターネット調査(ネットリサーチ)
回答者数:1万731名
調査期間:2016年10月01日〜10月05日
調査機関:マイボイスコム株式会社