今回の新製品3種。左から「クラシック レッド」「プレイリーポートリー」「ワイルドコースト」。アカナのパッケージは、とてもあけやすく(ハサミ不要でキレイに開く)、とても閉めやすい。フードストッカーを使っていない人も多いだろうから、パッケージが管理しやすいのは嬉しい。こういうところにもコストをかけてあるあたり、さすがだ(袋は結構コストに直結する。なので低価格フードは袋も簡素なのだ) |
世の中に“プレミアム”と呼ばれるフードは数あれど、信頼度の高いプレミアムフードといえば、アカナ(Acana)とオリジン(Orijen)。どちらも同じ会社(カナダのChampion Petfoods社)が作っていて、日本ではアカナファミリージャパンが販売している製品なのだが、知名度としてはそんなに高くないかもしれない。しかし本国ではドッグフードの賞を総ナメにしており、すでに25年の歴史を誇る由緒正しい会社だ。
なんといってもその特徴は、
・タンパク質含有量の高さ
・肉含有量の高さ
なのだが、今回は、そのアカナに新製品が登場したので紹介してみたい。
アカナファミリージャパン公式サイト
新製品「アカナ クラシック レッド」紹介ページ
新製品「アカナ プレイリーポートリー」紹介ページ
新製品「アカナ ワイルドコースト」紹介ページ
Champion Petfood公式サイト
Champion Petfood社の賞歴
タンパク質含有量の高さ
いろいろな説があるが、ドッグフードのタンパク質源の基本は、やはり肉だ。まずは肉がどれくらい入っているかを、「良いフード」の目安として考えても問題はないと思う |
一般的なショップで売っている“プレミアムフード”のパッケージの裏あたりを見てもらうと分かるが、通常タンパク質含有量はせいぜいが23%前後で、高いものでも26%ほどだと思う(パピー用はどの製品でも高い)。中には、価格が安いにも関わらず27、8%ほどのものもあって「お?結構いいかも?」と思うが、まぁたいがいにおいてそういうものは「タンパク質の数値」だけ上がるような原材料構成だったりするので、あまりオススメしない。まともな肉の含有量が多い製品が、安いはずはないのだ。
もちろん、タンパク質が高ければすなわち正義、というわけではない。アジリティをしたり、毛並みを美しく保つ必要があったり、筋肉隆々でないといけない犬であったり、そういう場合でもない限りはそこまで徹底的にこだわる必要もない……かもしれない。そもそも高タンパクのフードを食べ慣れていない犬が急に食べると、てきめんにお腹を下すし(ゆっくり移行すれば大丈夫)。
しかし、犬がそもそも肉メインの食性であることは、おそらくは間違いない。住んでいる地域であったり由来であったり、犬の食性を決める要素はさまざまだが、少なくとも犬の歴史の中で、彼らが草食だった時期はないだろう。獲物である草食動物の肉や内臓、骨などから、さまざまな栄養素を補給していたはずだ。つまりは、ほかの動物の肉こそが、犬にとって重要なタンパク源なのだ。
そう考えると、タンパク源を肉類に頼るドッグフードは、一般的に言って「良いフード」だと言って間違いはない。フードメーカーは、あの手この手でコストを下げ、“数値上の栄養価”をキチンと整えて、安い値段で消費者に売り込みをかけるが、それは人間で言うならサプリだけを食べて生きているようなもの。控えめに言っても「素晴らしい食事」と呼べるものではない。
肉含有量の高さ
そんな中、アカナとオリジンの売りは、その肉含有量の高さだ。アカナの場合、なんと肉含有量は平均60%。オリジンにいたっては80%が肉だ。しかもそれらは、カナダの放し飼いのチキンだったり、アカナ自らが飼育している牛だったり、自家栽培の野菜だったり、由来の不明な原材料は一つもなく、乾燥原材料もほとんどなく、そして製造工程のただの一つも外注しない。
普通のドッグフードは大半が乾燥原材料で作られることが多いのだが、むろんそれには大いなる利点がある。長期間保存できて、大量長距離輸送が容易なのだ。つまりコストは下がり、フードの値段も下がる。原材料としては劣ったもの(栄養の多くが乾燥の加工途中に吹き飛んでいる)であることは否定できないが、作る側から見たときのメリットが大きすぎるし、価格が下がるなら、それはそれで消費者にとっても良いことだ。
原材料を比較してみよう
ホームセンターのペットコーナーなどで、一般的に低価格が売りのドッグフードの原材料一覧を見てみてほしい。おそらくは下記のようになっているはずだ。
穀類(トウモロコシ、コーングルテンミール、小麦粉、パン粉、コーングルテンフィード等)、肉類(チキンミール、ビーフミール、ポークミール、ササミパウダー、ビーフパウダー等)、動物性油脂、豆類、魚介類(フィッシュミール等)、野菜類(ニンジンパウダー、カボチャパウダー、ホウレンソウパウダー、ビートパルプ)、チーズパウダー、ミネラル類(カルシウム、塩素、コバルト、銅、鉄、ヨウ素、カリウム、マンガン、ナトリウム、リン、亜鉛)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D、E、K、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)、着色料(赤色102号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号)、酸化防止剤(ミックストコフェロール等)
原材料をざっと眺めれば分かるが、肉も野菜も穀類も、その多くが乾燥原材料で、しかもフードを作るときにはおそらく高熱で一気に加工しているため、原材料が持つ栄養素のほとんどが壊れている。あとで大量に添加しないと、栄養素が満足に補給できなくなっていることをよく表しているといえるだろう。意外に多い着色料使用のフード。犬にとっては何の意味もなく、単なる飼い主アピール用の原材料なので、これが入っている時点で信用度は限りなく低い Dog Food 2 / Sh4rp_i |
だがこれは、このメーカーだけが飛び抜けて悪いわけではない。消費者に少しでも安いものを、少しでも目に付くものを届けようと思ったらこういうものを作らざるを得なくなる。ホームセンターなどでフードコーナーを見て回れば分かるが、ほとんどすべての一般的なドッグフードは、似たような原材料一覧になっているはずだ。我々消費者が「より良いもの」を選ぶようになれば、彼らのビジネスだってきっと変わってくるだろう。
ではここで、今回登場したアカナの新製品の原材料一覧を見てみよう。
ラム肉ミール、スチールカットオーツ、新鮮アンガスビーフ、新鮮ヨークシャー種豚肉、ラム肉脂肪、丸ごと赤レンズ豆、丸ごとグリンピース、丸ごと緑レンズ豆、草を与えられて育った生ラム肉、ホールオーツ、新鮮牛レバー、豚肉ミール、ニシン油、新鮮豚レバー、丸ごとヒヨコ豆、丸ごとイエローピース、日干しアルファルファ、レンズ豆繊維、新鮮牛トライプ、乾燥ブラウンケルプ、新鮮カボチャ、新鮮バターナッツスクワッシュ、新鮮パースニップ、新鮮グリーンケ?ル、新鮮ホウレン草、新鮮ニンジン、新鮮レッドデリシャスリンゴ、新鮮バートレット梨、フリーズドライ牛レバー、新鮮クランベリー、新鮮ブルーベリー、チコリー根、ターメリック、オオアザミ、ごぼう、ラベンダー、マシュマロルート、ローズヒップ、ビタミンD3、ビタミンE、コリン、亜鉛、ビタミンB5、腸球菌フェシウム
前半は肉の名前が並び、その後豆類、次に野菜/ハーブが続いて、最後にちょっとだけ添加物が並んでいる。原材料の栄養価があまり壊れていないので、こういうリストになる。原材料だけですべてを断ずるわけにはいかないが、この時点ですでにずいぶんと差があることは否定できない。新製品「アカナ クラシック レッド」紹介ページ
新製品「アカナ プレイリーポートリー」紹介ページ
新製品「アカナ ワイルドコースト」紹介ページ
ハイレベルな製品だけあって、値段もハイレベル
肉も野菜も、すべてカナダの地元産。このこだわりが、このクオリティを産む |
むろん、ここまでこだわって作られた製品であるがゆえのデメリットもある。それは価格だ。楽天の安売りショップで見ても、2kgで3000〜3500円くらい。一般的なドッグフードは、同じお店で2kgが1000〜1200円くらいで買えるわけで、純粋に3倍近くする。
価格のこともあって、一般的なペットショップやホームセンターではなかなかお目にかかれない製品だったわけだが、ここへきて登場した新シリーズ3種が、その状況に少し変化を与えるかもしれない。2016年12月に登場したばかりの新製品だ。
・アカナ クラシック レッド
・アカナ プレイリーポートリー
・アカナ ワイルドコースト
名前から中身がちょっと想像しづらいのだが、レッドはラム肉メイン、プレイリーは鶏/ターキーメイン、ワイルドコーストは魚(ニシン)メインだ。むろんこれらは、いままで書いてきたようなアカナの特徴をそのまま継承しているが、肉類が「50%」に若干減らされているのが特徴だ。
「減ってるならダメなんじゃないの」と思うかもしれないが、肉含有量60〜80%のフードというものは、良いものであることは分かっていても、やはり高い。そこについては製造元も販売代理店も理解はしているようで、問題にならないレベルで肉類含有量を減らし、コストを抑え、少しでも買いやすくしよう……というのがこの製品の特徴だ。
10%減ったといっても、それでもほかのフードに比べたらまさに「圧倒的」な含有量であり、製品としてのレベルの優位性はまったく揺るがない。
実勢価格を少し下げることによって、ホームセンターや大手ペットショップへの販路拡充も目指し、手にとってもらう機会を少しでも増やしたい(アカナファミリージャパン談)
とのことなので、近々、家の近くのホームセンターなどでお目にかかることがあるかもしれない(一部Web店舗ではすでに販売されている)。ぜひその際は、手にとって原材料をチェックして、同じ棚にあるほかの製品と比べてみてほしい。しかしいくら価格を下げてホームセンターに流通させる予定があるとはいえ、アカナはおそらく他社製品よりずっと高いはずだ。
愛犬の健康は食べ物だけで決まるわけではない。食べるものや、飼い主とのスキンシップ、運動量、ストレス……さまざまな要因が絡み合って「健康」が維持されるわけで、フードにだけ気を遣ってさえいれば安心というではないが、犬は自分で食べるものを選べない。価格差をどう見るのかは飼い主次第だが、毎日食べるものをグレードアップしてみることを、愛犬の健康作りの第一歩としてみてはいかがだろうか。