インターペット2017でブースを構えていた。なにせこの原材料、よっぽどニオイが強いのか、ウチの犬が興奮して大変でした |
フードやトリーツのヘルシーな原材料として有名な「鹿肉」(ベニソン)。タンパク質含有量が約22%で非常に高く、それでいて脂肪分が1〜3%と極めて低い。しかも含まれる脂肪の半分は不飽和脂肪酸であり、鉄分含有量も多く、これこそが“ヘルシー肉”と呼ぶにふさわしい栄養価構成だ(ちなみに鉄分は同量のレバーより多い)。
「鹿肉」紹介ページ
そんな鹿肉だが、昨今の日本では鹿の数が増えすぎて害獣認定され、駆除対象となっているのは多くの人が知るところだろう。かつて一度は絶滅しかかったために保護対象にされたのだが、その後猟師が減って“天敵”がいなくなったことにより、爆発的にその数を増やしてしまった。
地球温暖化によって冬の降雪量が減り、鹿がエサを採れる期間や場所が広がり、豊富なエサを背景に子育ても順調に進んで数がふえ、生息地が広がり……という理由もあるとは思うが、心情的な問題を抜きにすれば、鹿は減らさねばならない対象であることは確かであるようだ。
「森を正常な状態に戻す」というミッションと、「鹿の命を無駄にしない」というミッションを、同時に達成できるという意味で、鹿肉という原材料はもうちょっと広がってもよいと思うのだが、それに真っ向から取り組むフードがあったので紹介しよう。
製品を見つけたのは、先日行われていたインターペット2017でのこと。オーガニックコットンを扱う一般財団法人「森から海へ」が扱っている製品だ。
なんといってもその特徴は、びっくりするくらい潔い原材料しか使われていないこと。dogplus.meのフード紹介ページの原材料から抜き出してみると、
鹿肉、大麦(有機)、玄米(有機)、黒米(有機)、ビール酵母、かつお粉、米ぬか(有機)、菜種油、発酵調味液、さつまいも(有機)、かぼちゃ(有機)、にんじん(有機)、牛骨カルシウム、卵殻カルシウム
しか使われていない。有機にできる原材料はほぼすべて“有機”になっていて、着色料不使用、保存料不使用は当たり前として、オーガニック原材料使用、国内産原材料使用(100%らしい)、天然ビタミン源/天然ミネラル源使用(どちらもほとんど添加されていない)……とほかにはあまり見かけない特徴のオンパレードだ。というか、インターペットのブースでも食べるよう勧められたのだが、これ普通に人間が食べられるレベルのものなのでは。
「鹿のめぐみ」製品紹介ページ(dogplus.me内)
「鹿のめぐみ」公式サイト
「鹿のめぐみ」販売サイト
また、タンパク質やら鉄分やら鹿肉のメリットはいくつも挙げられるが、あまり気付かれず、かつ重要なのは「鹿肉には人の手が一切加わっていない」という部分だ。ほかのフードの原材料とは違って、鹿はすべて野生。山に生えてる草や、木の皮などを食べて成長している。
わざわざ言うことでもないが、人間の食用の肉を含め、一般的に流通している肉は、牛であれ鶏であれ豚であれ、そのほとんどすべては「家畜」だ。多くの家畜は、それを育てる人間の都合により、大量の成長ホルモン剤を与えられ、運動もさせられず(場合によっては太陽光さえ知らず)、密飼いによる感染症を防ぐための抗生剤もバリバリと注入される。飼料にしても、飼料そのものに変なものは入っていなかったとしても、日本はそのほとんどすべてを海外からの輸入に頼っている状況なので、ポストハーベストや遺伝子組み換え原材料に対する不安など、手放しで歓迎できるようなものではない。むろん、安心安全な“食肉”を生産している人も少なからぬ数いるが、まだまだ全体からしたらごくわずかにすぎない。
人間もそうだが、食べたものが分解されて利用されてカラダが作られるわけで、そういう家畜の肉は、すなわちそういうものであるわけだ。しかし鹿肉は完全に野生の肉。そういう化学的物質が肉に残留していることはまずないであろう、とても健全な「食用肉」だ。
一般的な小型犬であれば、一袋で約10日分。1か月で1万3500円というプライスをどう判断するか、だ |
もちろんリスクはゼロではない。上記のことを逆から見ると、生息する環境の汚染がそのまま鹿に跳ね返ってくるわけで、鹿が生息している環境が例えば重金属などで汚染されていたら、鹿肉も当然汚染される。そういう意味では産地がとても気になるだろう。そこについても「鹿のめぐみ」は抜かりがない。トレーサビリティが確立されているので、鹿肉がどこの産地の鹿肉であるのか、履歴がたどれるようになっているとのこと。
確かに、高い。dogplus.meに掲載されているフードの中でも、1kg4500円というプライスは最上位レベルだ。国産100%だったり有機だったりという、こだわりの原材料からきている価格であることもさることながら、安全性と環境への貢献という表には見えづらいメリットもあるので、そこに魅力を感じる飼い主さんであれば、ぜひとも一度試してみよう。ジャーキーやトライプ(第四胃)などのトリーツもあるので、フードに少しためらうのであれば、ぜひそちらも候補に。