抜本的な対策が打たれないまま、努力を惜しまない人達の活動のおかげで、年々状況が少しずつ改善されている捨て犬/捨て猫問題。日本全国に大小織り交ぜてさまざまな団体があるが、その大半は、資金や人材、受け入れスペースなどのリソースの枯渇に頭を悩ませていることだろう。
寄付を募る、物販をするなどを筆頭に、ピースワンコなどの大きな組織であれば「ふるさと納税」の対象になるなどの資金調達手段があるが、最近脚光を浴びる「クラウドファンディング」を使った資金調達が成功しつつある例がある。それが、このNPO法人「WAMPERS」(ワンパーズ)だ。
さてこの「クラウドファンディング」とは何かというと、主にインターネットを通じて、不特定多数の人達に向けて資金の提供や協力を募るという、一種の募金システム(本当は募金ではなく“出資”なのだが、分かりやすくそう書いておく)。crowd(群衆)+funding(資金調達)という造語で、比較的新しい言葉だ。
実は10年以上前からある手法なのだが、ごく最近急激にブレイクしたもので、アメリカのKickstarterというクラウドファンディングサイトが最も有名。主にコンピュータゲームの業界では、個人や小さいグループが開発資金を集めるときの「ごく一般的な資金調達手段」となっており(大きなものでは数億円を集めたプロジェクトも多い)、アメリカを始め日本にもいくつかのクラウドファンディングサイトが存在する。
さてこのWAMPERSがクラウドファンディングで何を募集しているのかというと、千葉県勝浦市の古民家の改修費用。ぜひサイトの写真やYouTubeのムービーを見ていただきたいが(YouTubeのムービーは、ポリシーが伺えるので必見)、なんと建築から100年以上も経っている、歴史を感じさせる家屋だ。
資金を募集しているREADYFOR?のサイト
元大リーガーという異色の経歴を持つWAMPERS理事長の池田氏曰く、
ほとんどの人々から「壊して建て直した方が良い。」と言われました。コストを考えると確かに正論です。でも「要らないから犬を捨てる」「都合が悪いから犬を捨てる」ことと、「要らないから壊して建て直す」ことは、本質的に同じことではないでしょうか?(クラウドファンディングサイトの説明文より)
とのことで、なるほど、確かに団体の行動規範と非常にマッチしたアクションだ。「要らないから犬を捨てる」「自分にとって都合が悪いから犬を捨てる」というたわけた輩がいる限り、捨て犬問題が終焉を迎えるまでまだ時間がかかりそうではあるが、古民家を改修して使うことで、自分たちのポリシーを体現するというそのアクションを、素直に応援したい。……ところでクラウドファンディングという手法は、一般的には期限を切って、その期限内に集めたい金額を提示し、期限内に「お金を出してもいい」という人が提示金額分集まれば「成立」、集まらなかった場合は「不成立」となる。不成立の場合はお金は徴収されず、成立した場合にのみ支払うことになるわけだが、実はこのWAMPERSのプロジェクトは、すでに「300万円」という当初の希望金額を達成している。期限は2015年2月26日23:00なのだが、2週間近くを残して達成しているわけだ。
とはいえこの300万円で出来ることは、古民家の基礎部分と屋根の修理費のみ(自分達では出来ない部分をプロに任せるための費用とのこと)。この古民家を完全再生させるのは時間もコストもまだまだかかるだろうから、いまからの応援も歓迎されるはずだ。WAMPERSのサイトやREADYFOR?(実際にクラウドファンディングに参加するためのサイト)の説明文を読んで、その心意気に同意できる人は、ぜひ出資してみよう。
この資金調達が無事に大きな成功を収め、約4年間の活動で100人の里親を見つけたその行動力を、いままで以上に存分に発揮できることを願ってやまない。そしてこの成功が足がかりとなって、保護活動に従事する人達の資金調達に新しい道が開けるのなら、大変に喜ばしい。そういう意味においても、非常に重要な役割を持ったプロジェクトであるといえるだろう。