彩りをよくして人の目に食欲を沸かせる目的で食品に使われる着色料のうち、「食用赤色○号」「赤色○号」あるいは「赤○」という表示がなされているものは、合成着色料の「食用タール系色素」に分類される色素である。タール系色素の合成着色料は、過去に石油タールやコールタールなどのタール系物質を原料に化学合成された歴史を持つ色素で、現在はタール系物質は原料に用いられていないが、石油を精製するときに得られるナフサという粗製ガソリンが用いられている。
自然に存在する天然色素とは異なり、合成された色素は加熱などの加工を加えても退色しにくく、長期間鮮やかな色を保つうえに安価であることから、加工食品のほか口紅やファンデーションなどの化粧品、さらには衣料品にも多く使われている。食品においては、未加工の野菜・肉類・海藻類などへの使用は禁止など、使用範囲は限られている。
現在、食品添加物として指定されて食品への使用が許されている合成着色料は、黄色が2色(4号、5号)、赤色が7色(2号、3号、40号、102号、104号、105号、106号)、青色が2色(1号、2号)、緑色が1色(3号)の計12種類である。赤色2号は別名アマランス、赤色3号は別名エリスロシン、赤色102号は別名ニューコクシン、赤色106号はローズベンガルとも呼ばれている。
同じ赤色でも、紫がかった赤(2号、106号)や桃色(3号)、濃いピンク(104号、105号)、朱色(102号)などいろいろな色調があり、加熱を要する菓子類やソーセージ、かまぼこ、酸類を加えるジャムや紅ショウガなどの加工食品に使用されている。犬用としては、ドッグフードのほかに動物医薬品でもカプセルや錠剤の製剤色素として使用されている。
赤色102号(ニューコクシン、E番号はE124)は、黄色4号と並んでハイパーアクティビティの原因としての議論があることから、2010年よりEUにおいては、赤色102号など6種の合成着色料を含む食品に警告表示が義務づけられている。通常の場合、合成着色料は使用量が全体の1万分の1(0.01%、100gに対して10mg)以下と極めて少量であることから、健康への影響はないとされる。
なお、犬は食べ物に対する認識の仕方がヒトとは異なるため、ドッグフードに着色をしても犬にはまったく意味がなく、ドッグフードの彩りをよくしておいしそうに見せることは、犬のためではなく飼い主へのイメージ的なアピールにすぎない。