トリプトファンは犬の体の中で合成することはできず、食餌として外部から取り込まなければ賄うことができない10の必須アミノ酸の1つに数えられる。しかし、穀類(特にトウモロコシ)のトリプトファン含有量は少なく、トウモロコシを含む穀類中心のドッグフードなどでは、犬の体が必要とするアミノ酸バランスを取るためにトリプトファンが加えられることがある。
トリプトファンは体内で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン(神経伝達物質)に変換されることから、鬱病対策として近年注目を浴びている。犬でもセロトニンが不足すると攻撃的になったり、ハイパーアクティブで落ち着きがなかったり、あるいは学習困難や不安を示すことが知られており、セロトニンの原料となるトリプトファンを脳内に供給するには、鶏肉など多めのトリプトファンが含まれている素材と、それを脳内へと運ぶことができる炭水化物(米やジャガイモなど消化しやすいもの)を同時に摂ることが大事とされる。1)
1)J. O'Heare: Neuropsychology in Dogs