私たちの食卓に上がる牛肉(英名Beef)は、その名のとおり牛(学名Bos primigenius taurus)の肉。牛はウシ目ウシ科に属する草食動物であり、4つの胃袋を持つ反芻動物である。現在家畜として飼われている牛は130品種を超える。世界的に見て、牛の飼育方法はその飼育目的によって異なり、搾乳目的の牛(乳牛)では畜舎飼い、食肉目的の牛(肉牛)では繋ぎ飼い・畜舎飼い・放牧が主である。いずれの牛も、オーガニック飼育であれば放牧飼育がなされる。
牛や羊、鹿など反芻動物の胃のことをトライプと呼ぶ。反芻動物の胃の中でもトライプと呼ばれるのは主に第一胃(ミノ)と第二胃(ハチノス)、第三胃(センマイ)で、胃液を分泌する第四胃(ギアラ)は、ほかの動物の胃に相当する。
牛など反芻動物の第一胃には、咀嚼が不十分な植物と大量の微生物が水中(大量の唾液に由来する液体)に浮遊し、微生物により植物成分が分解されてプロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が生じる。生じた脂肪酸は胃壁を通して反芻動物の体内へ吸収されて栄養源として利用され、このことより、トライプ中には脂肪酸が多く含まれるとされる。
胃壁自体は結合組織を多く含み、タンパク質源としての質は赤身より若干劣る程度。消化率も92-98%と悪くないが、カルシウムなどのミネラルと脂溶性ビタミンが少ないので、赤身の肉同様にトライプだけの給餌は避けるべきである。しかしトライプの何よりの長所は、犬の嗜好性が抜群だということだろう。加熱していない生または乾燥したトライプ表面には大量の微生物が残っていることから犬の整腸に役立つ一方で、微生物による感染症なども懸念されるため、特に生での取り扱いには注意が必要である。