反芻動物の第一胃には咀嚼が不十分な植物と大量の微生物が水中(大量の唾液に由来する液体)に浮遊し、微生物により植物成分が分解されてプロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が生じる。生じた脂肪酸は胃壁を通して反芻動物の体内へ吸収され、栄養源として利用され、このことより、トライプ中には脂肪酸が多く含まれるとされる。
胃壁自体は結合組織を多く含み、タンパク質源としての質は赤身より若干劣る程度。消化率も92-98%と悪くないが、カルシウムなどのミネラルと脂溶性ビタミンが少ないので、赤身の肉同様にトライプだけの給餌は避けるべきである。しかし、トライプの何よりの長所は、犬の嗜好性が抜群だということだろう。加熱していない生または乾燥したトライプ表面には大量の微生物が残っていることから犬の整腸に役立つ一方で、微生物による感染症なども懸念されるため、特に生での取り扱いには注意が必要である。
鹿肉は牛肉などにアレルギーを持つ犬への代替肉類として提供されることが多いが、鹿肉は牛肉と交差反応を起こす傾向があることが知られており、ベニソンのトライプもまた、必ずしもアレルギー対策になるとは言えない。1)しかしそのアレルギー性の程度は反応試験では分からないので、実際にベニソンのトライプを食べてアレルギーを引き起こさないことも、またよくある事例である。
1)S. Spitzauer et al.: Characterization of allergens from deer: cross-reactivity with allergens from cow dander, Clinical & Experimental Allergy
Volume 27, Issue 2, pages 196?200, February 1997
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2222.1997.tb00693.x/abstract