ちなみにアトランティックサーモンはその成長ホルモン分泌を促進して成長速度と体のサイズを大きくするように遺伝子組換えされたものが、アメリカの食品医薬品局(FDA)から食品として認可され、「食用の遺伝子組換え動物第一号」となった(しかし、その後多方面からの反対運動により禁止への動きがある1))。ノルウェーをはじめ北欧や北米(アメリカ・カナダ)での養殖が盛んで、身が赤く美しい。
鮭のライフサイクルは、川で卵から孵り、海に出て、そして再び生まれた川に戻ってくる回帰性を示すことで有名である。秋にかけて川を遡るときには、婚姻色と呼ばれる赤い色が体の側面に現れる。市場に出回っている食用鮭には天然のものと養殖のものがあるが、アトランティックサーモンやチヌック鮭、ギンザケなどは養殖に向いていることから市場に出回るもののほとんどが養殖もの、一方ベニザケは養殖が難しいことから、天然で漁獲されたものである。
「サーモンピンク」と呼ばれる鮭の赤い身の色は、筋肉中に含まれるカロチノイド色素のアスタキサンチンによるもので、日本では赤色が濃いほどその品質が良い(等級が高い、高価である)とされている。アスタキサンチンはエサとなる甲殻類に由来するもので、甲殻類をエサとして多く食べているものほど赤みの濃い身になる。アスタキサンチンの含有量によって身は赤色を示すが、サケは白身魚である。
鮭には約20%のタンパク質が含まれ、脂肪は種類によって含有量が異なる(例:ベニザケ4.5%、タイセイヨウサケ16%)。鮭の脂肪にはドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの長鎖(多価)不飽和脂肪酸が含まれることから良質の食材とされるが、これら長鎖不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、ビタミンEなどの抗酸化効果を持つ物質を十分量同時に摂ることが大事である。
生の鮭にはビタミンB1(チアミン)を破壊するチアミナーゼという酵素は含まれないあるいは微量に含まれるとされ、いずれにしても鮭の生食によるビタミンB1欠乏の心配はない。
ちなみにいくつかのフードで使われているサーモンミール(サーモン粉、鮭ミール)だが、AAFCOの定義によると「清潔でレンダリングされた、損傷のない鮭または鮭切り身のいずれかまたはその双方の組織乾燥物で、一部含有脂肪の抽出の有無を含む」とされる。
魚肉の消化性は一般的にほ乳類・鳥類の肉に比べ劣るが、日本犬や北方のソリ犬など何世紀もの間魚を食べ続けてきた歴史から、犬種によってはほ乳類の肉よりも魚の方が体に合ったタンパク質源であることがある。
1)”House Moves to Ban Modified Salmon” by PAUL VOOSEN of Greenwire, New York Times, June 16, 2011
http://www.nytimes.com/gwire/2011/06/16/16greenwire-house-moves-to-ban-modified-salmon-84165.html?scp=4&sq=salmon&st=cse