ニシンは青魚の中でも多くの脂肪を含む魚で、その量はイワシやサバよりも多い。約15%含まれる脂肪の約75%は不飽和脂肪酸で、そのうちさらに70%(つまりニシンに含まれる脂肪の半分)を一価の不飽和脂肪酸(組成はニシンの食性により異なる1))が占める。
不飽和脂肪酸は酸化しやすいので、ニシンミールの場合には通常、酸化防止・品質保持のための抗酸化物質にエトキシキンやブチルハイドロキシトルエン(BHT)などが加えられる。
約18%含まれるニシンのタンパク質は、ほ乳類・鳥類の肉類に比べると若干消化性が劣るが、日本犬や北方のソリ犬など何世紀もの間魚を食べ続けてきた歴史から、犬種によってはほ乳類の肉よりも魚の方が体に合ったタンパク質源であることがある。
しかも、ニシンミールのようにニシンを骨や内臓ごと粉砕・乾燥させたものには、骨と内臓由来の水溶性ビタミンやミネラルが含まれ、タンパク質源以上の価値がある。
また生のニシンにはチアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素が特に多く含まれることから、ニシンを生で与えるとビタミンB1(チアミン)が破壊され、長期で生ニシンを与え続けるとビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがある。チアミナーゼは加熱すると失活するので、ニシンを与えるときは必ず加熱するか、あるいはレバーなどビタミンB1を多く含む食材を充分量与えることを忘れないようにしたい。
1)近藤尚:ニシンの脂質に関する研究:第II報 北部オホーツクニシンの脂質について,北海道大學水産學部研究彙報,第26巻 第3号 P289-301,1975年.
http://hdl.handle.net/2115/23568