食物繊維とは、一般に食餌の中に含まれる難消化性あるいは消化不能なものことを指す。第一義的には、科学的測定法により数字として表される粗繊維として理解されるが、このほか動物の毛や爪を構成するケラチンやミネラル成分なども、それなりの作用があるとして考慮されることがある。
食物に含まれる食物繊維は食物の体積に影響し、消化管内、とくに大腸において腸壁に圧力を伝えて蠕動運動(食物を管内に押し運ぶ腸の筋肉収縮運動)を促進する。食物繊維はまた、腸内細菌の消化活動を支え、理想の便の硬さを作り出すのに欠かせないことから、犬の食餌においても大事な構成要素である。
犬の食物繊維所要量は食事の量によって異なり、健康な成犬では食事量(乾燥重量)の約1.5%、高齢犬では1.8%、成長期の犬や授乳中の母犬そして使役を行う犬などでは約1ー1.5%の食物繊維を含んでいることが望ましく、またその際には、同時に食餌中にあまり多くの動物由来難消化性素材(毛や爪など)やミネラル成分を多く含んでいないことが前提とされる。
体重減少の目的以外で3%を超える食物繊維量を与えると、食物全体の消化性が低下し、便量が著しく増えるため避けるべきである。