脂肪は、動物の体内でグリセリンに脂肪酸が3個結合したトリグリセリド(TGまたはトリアシルグリセロールTAG)という形で貯蓄されるが、動物性油脂の主成分は脂肪酸であり、その脂肪酸の種類により油脂の性質が異なる。
牛脂と豚脂には飽和脂肪酸が約40%、オレイン酸(一価不飽和脂肪酸)が約45%含まれ、鶏脂には飽和脂肪酸が約30%、オレイン酸が約37%のほか、リノール酸(ω-6系多価不飽和脂肪酸)が約20%含まれる。魚油では、原料となる魚の種類によって脂肪酸比率は異なるが、鮭油を例にとると飽和脂肪酸が約18%と低く、オレイン酸が約25%のほか、ドコサヘキサエン酸(DHA、ω-3系多価不飽和脂肪酸)が約17%含まれ、多価不飽和脂肪酸の合計比率は動物性油脂の中でもダントツである。
飽和脂肪酸は酸化しづらく安定した脂肪酸で、一価不飽和脂肪酸も比較的酸化しづらい脂肪酸ではあるが、いずれも体が必要とする必須脂肪酸への変換は行われない。リノール酸やドコサヘキサエン酸など多価不飽和脂肪酸は酸化しやすい性質を持つが、体内で生理活性物質など別の物質に変換される必須脂肪酸を含む。
脂肪酸組成の違いから常温における脂肪の性状も異なり、牛脂と豚脂は固形、鶏脂は多価不飽和脂肪酸により軟らかいペースト状、魚油は液状である。これら性状と安定性の違いから、一般的には動物性脂質の中でも魚油は別のカテゴリーに分けられ、動物性脂質といえば牛脂、豚脂、鶏脂の混合油脂のことを指す。どの動物の油脂が使われているかは、メーカーに問い合わせない限り(そしてメーカーが答えてくれない限り)、商品から特定することは難しい。油脂が混合でない場合は、それぞれ牛脂や豚脂、鶏脂など原料となった動物の名称を用いて呼ばれる。
1)(社)日本畜産副産物協会「レンダリングとは」
http://www.jlba.or.jp/con08_1.html