菜種には本来、エルカ酸(またはエルシン酸)という不飽和脂肪酸と、グルコシノレートという甲状腺肥大の原因物質に変化する物質が含まれているが、1970年代頃より品種改良が進み、現在ではこれら食用・動物飼料への使用の際のデメリットとなる成分が極力少なく抑えられたものが多く栽培されている。
菜種は使用目的によって改良され、エルカ酸の含有のみを抑えたものはロー(low、0、無エルカ酸)菜種と呼ばれ、エルカ酸とグルコシノレートの両方の含有が少ないものはダブルロー(double low、00)菜種、そしてグルコシノレートの含有のみを抑えたものはプラスロー(plus low、+0またはHEAR:High Euric Acid Rapeseed)菜種と呼ばれる。精製度の高い食用菜種油にはグルコシノレートの混入は極めて少ないことから、食用無エルカ酸菜種の代表品種であるキャノーラ品種が北米とオーストラリアで多く栽培され、日本でも、国内で改良された無エルカ酸のものが栽培の主流となっている。
菜種の表面の黒い種皮には苦み成分が含まれているため、搾油には種皮を取り除いた黄色い種子のみが使われ、加熱圧搾または冷却圧搾により油が得られる。圧搾した後の副産物である絞り粕(菜種ミール。キャノーラ品種の場合はキャノーラミールと呼ばれる)は、牛や豚・鶏など家畜への飼料として用いられる。そのため、動物飼料への使用を考慮した菜種はダブルロー菜種品種が選ばれる。
菜種油の成分の約60%はオレイン酸(オリーブ油を構成するオメガ9系一価の不飽和脂肪酸)、約20%がリノール酸(オメガ6系不飽和脂肪酸)、約8%がαーリノレン酸(植物性オメガ3系不飽和脂肪酸)、7%が飽和脂肪酸といった構成である。1)
1)五訂増補日本食品標準成分表 脂肪酸組成表編 [第2章]ー第1表 油脂類
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031801/003/013.pdf