アブラヤシの実は直径約5cm、幅約3cmほどのラグビーボール型をしたもので、これが何十個も固まって1つの房をなしている。1つの実には約50-70%(品種によって差がある)が油分として、特にオレンジ色をした果肉の部分に含まれる。搾油は、実に含まれる脂肪分解酵素を蒸気加熱によって失活させた後、潰して種を取り除いてから圧搾によって行われる方法と、化学薬品を使って抽出する方法とがある。前者は果肉の色のもとであるカロチンが油に含まれたままであることから薄い赤茶色をしているが、後者は選択的に成分抽出が行われるため無色である。
固化するという性質が加工向きであることから、食品や化粧品に多く用いられてきたパーム油は、原料となるアブラヤシを育てることで再生可能エネルギーのバイオディーゼルとして注目され用いられるようになった。しかし大量のアブラヤシの栽培が熱帯雨林を伐採して行われるため、熱帯雨林に生息する野生動物の生活環境をはじめ生態系を脅かしていることから、この熱帯雨林の伐採を制限するために2003年に世界自然保護基金(WWF)が中心となり「持続可能なパーム油のための円卓会議」(Roundtable on Sustainable Palm Oil、 RSPO)という認証制度が作られた。1)マレーシア政府機関のMalaysian Palm Oil Board (MPOB)では、アメリカの研究機関の協力を得て、同じ栽培面積で搾油量の多い品種への改良がなされ2)、パーム油の需要と森林保護の問題解決が期待されている。
パーム油の約45%は飽和脂肪酸のパルミチン酸からなり、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が約40%、多価不飽和脂肪酸のリノール酸が約10%といった構成である。
1)WWF:RSPO「持続可能なパーム油のための円卓会議」とは
http://www.wwf.or.jp/activities/resource/cat1305/rsportrs/
2)Singh. R., et al.: The oil palm SHELL gene controls oil yield and encodes a homologue of SEEDSTICK, Nature (2013) doi:10.1038/nature12356, Published online 24 July 2013.
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature12356.html