月見草オイルは、北アメリカ原産アカバナ科マツヨイグサ属の植物メマツヨイグサ(学名Oenothera biennis)から採れる油脂。マツヨイグサ(待宵草)とは夕方から翌日の朝にかけて夜に花を咲かせるマツヨイグサ属(学名Oenothera、英名Evening primrose)の植物の総称であり、月見草とも呼ばれてきた。しかしマツヨイグサ属にはメマツヨイグサのほかマツヨイグサ(学名Oenothera odorata)という種があることや、本来の月見草(学名Oenothera tetraptera)もあることから、名前だけでは混同しがちだが、これらは同属の異なる植物。本来の月見草の花は白いが、メマツヨイグサの花は黄色である。
メマツヨイグサはヨーロッパや北アメリカで創傷など皮膚の疾患に効くとして古くから民間療法に用いられてきた。しかし、いくつかの医薬品と合わせて摂ると薬効が低下することが報告されているので、もしも投薬がある場合には避けておいた方がいい。
メマツヨイグサの種を乾燥し、低温圧搾(コールドプレス)または化学薬品を使った抽出により月見草オイルは得られる。ほかの植物油脂同様に、低温圧搾しただけのものでは各種脂肪酸や色素など自然成分が含まれたままだが、化学薬品を使った抽出法では高温処理に加え脱酸・漂白等の工程が加わるため、成分が壊れたり除去されたりして、精製の度合いによって香りも色も異なる。
月見草オイルの約70%は多価不飽和脂肪酸のリノール酸である。オメガ6系脂肪酸に数えられ、細胞の新陳代謝に必要なγ(ガンマ)-リノレン酸は約9%含まれる。そのほかオレイン酸約8%、飽和脂肪酸約8%を含む。
これらの脂肪酸構成により、月見草オイルは心疾患予防と免疫機能向上効果、人間の女性では月経前症候群(PMS)や更年期障害にも緩和効果があるとされ、また胃腸の興奮を静め、アレルギーで傷んだ皮膚には直接患部にオイルをつけると、治癒を促進し消炎作用があるとされる。近年日本で、食品や化粧品によく用いられている植物油の一つである。