鶏脂は別名チキン脂肪やチキンファットなどとも呼ばれる鶏の脂肪で、食用にされる動物性油脂の1つに数えられる。鶏を屠畜後、食肉を切り分ける際に出る副産物には多くの油脂が含まれ、これらに熱を加えて溶かし出し精製することで鶏脂は作られる。この油脂加工工程をレンダリングと呼び、油脂を絞った後の粕(かす)は乾燥させてミールや肉粉になり、ドッグフードのほか家畜の飼料や農耕肥料に用いられる。油脂の精製度によりチキンオイルあるいは鶏脂と呼び分けられ、色は主にやや黄色で、常温ではペースト状である。
鶏脂に含まれる脂肪酸で最も多いのは一価不飽和脂肪酸のオレイン酸で約37%、次いで飽和脂肪酸のパルミチン酸が約22%、多価不飽和脂肪酸のリノール酸は22%含まれる。このほか、オメガ3系と呼ばれる多価不飽和脂肪酸の1つであるα-リノレン酸が1%含まれるなど、牛脂や豚脂に比べ多価不飽和脂肪酸の占める割合が高いのが、鶏や家禽などから作られる油脂の特徴でもあり、そのため牛脂や豚脂などが常温で固形であるのに対し、鶏脂はペースト状である。不飽和脂肪酸含有量が高く酸化しやすいので、油脂加工されたものは通常の場合酸化防止剤としてビタミンEなどが添加される。
鶏脂に含まれるリノール酸やα-リノレン酸は、犬の体内で生理活性物質などに変換される必須脂肪酸であるほか、牛脂や豚脂と同様に鶏脂はカロリーの供給と脂溶性ビタミンのキャリアなどであり、鶏脂もフードに加えることで犬の嗜好性が高まるという利点がある。