ニシン科の魚は青魚の中でも多くの脂肪を含む魚で、その量はイワシやサバよりも多い。約15%含まれる脂肪の約75%は不飽和脂肪酸で、そのうちさらに70%をオレイン酸(オメガ9系脂肪酸、オリーブオイルの構成脂肪酸)など一価の不飽和脂肪酸が占め、残り30%程度がドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸で構成される(組成はニシンの食性により異なる1))。
不飽和脂肪酸は酸化しやすい性質を持つことから、魚油中の不飽和脂肪酸濃度に関わらず、品質を保つために抗酸化物質(BHT、エトキシキン、ビタミンEなど使用目的と品質によって異なる)の添加が不可欠である。
ニシン油に含まれる不飽和脂肪酸の効果は、ほかの魚油に含まれる不飽和脂肪酸とおなじで、高齢の柴犬(とその雑種)の痴呆改善やアレルギーを含む皮膚疾患、関節炎、心疾患、腎疾患の治療の補助に役立つ。しかし、疾患の治療の補助とするには通常ある程度の量を摂取する必要があるため、フードに加えられている量でそれが賄われるかは疑問である。
1)近藤尚:ニシンの脂質に関する研究:第II報 北部オホーツクニシンの脂質について,北海道大學水産學部研究彙報,第26巻 第3号 P289-301,1975年.
http://hdl.handle.net/2115/23568