一方、アンチョビはカタクチイワシ(ニシン目、学名:Clupeoidei)の英名(Anchovy)。カタクチイワシは世界で最も漁獲量の多い魚で、食用のほか動物飼料や魚油の精製、肥料などにも用いられるが、日本ではやはり煮干し(いりこ)が一番身近な加工品といえるだろう。
サーモンの脂肪にもアンチョビの脂肪にも、オレイン酸(オリーブオイルの構成脂肪酸)などオメガ9系脂肪酸が多く含まれるほか、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3系不飽和脂肪酸も多く含まれ、その含有比率は魚によって異なる。1)
EPAとDHAは体内において細胞膜の構造の一部であり、DHAは特に神経細胞や網膜に多く存在する。本来EPAとDHAは、体内に取り込まれたα-リノレン酸から酵素反応によって作られるが、加齢や疾患、ストレス、過剰なオメガ6系脂肪酸の摂取などにより影響を受けて減少しやすいため、食物と一緒に摂ることでそれを補うことができる。
サーモンとアンチョビに含まれる不飽和脂肪酸の効果は、ほかの魚油に含まれる不飽和脂肪酸と同じで、高齢の柴犬(とその雑種)の痴呆改善やアレルギーを含む皮膚疾患、関節炎、心疾患、腎疾患の治療の補助に役立つ。しかし、疾患の治療の補助とするには通常ある程度の量を摂取する必要があるため、フードに加えられている量でそれが賄われるかは疑問である。
またとくにDHAやEPAのような多価不飽和脂肪酸は酸化しやすい性質を持ち、品質を保つために抗酸化物質(BHT、エトキシキン、ビタミンEなど使用目的と品質によって異なる)の添加が不可欠である。
1)五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸組成表編 第1表「魚介類」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031801/003/009.pdf