脂肪酸分子内の炭素分子同士に二重結合(不飽和結合)があるということは、その部分の結合が不安定で酸素分子が結合しやすい、つまり酸化しやすい性質を持つことから、抽出された不飽和脂肪酸の品質を保持するために通常はビタミンEなどの抗酸化物質が添加される。
α-リノレン酸はエゴマ油(シソ油)や亜麻仁油(フラックスシードオイル)に、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は魚油に多く含まれる脂肪酸である。犬の体内ではα-リノレン酸が酵素の作用によりエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸に変換されるが、何らかの原因により酵素作用が低下あるいは欠乏するとエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸が不足がちになる。アレルギーはこの変換酵素が足りないともいわれる。
オメガ3系脂肪酸は血流を良くするだけでなく、脳の働きやアレルギーの炎症抑制など、多岐にわたって良い効果があるとされるが、近年オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取比率が大事であることが注目され、ヒトではオメガ6:オメガ3の比が5:1を越えないよう(オメガ6が多くなりすぎないよう)推奨されている。犬ではヒトと食性が異なることから、これらの比率がどれほど適用されるかは分からないが、オメガ3系脂肪酸にアレルギーの抗炎症作用効果や突然死防止に効果があること1)は報告されている。
また昔から魚を食べてきた歴史をもつ柴犬などの和犬では、適度な量のドコサヘキサエン酸を摂取することが、高齢になってからの認知症防止に効果があるといわれている。
1)George E. Billman, et al.: Prevention of Sudden Cardiac Death by Dietary Pure ω-3 Polyunsaturated Fatty Acids in Dogs, Circulation, 1999; 99: 2452-2457
doi: 10.1161/?01.CIR.99.18.2452
https://circ.ahajournals.org/content/99/18/2452.full