主要ミネラルの中でも比較的印象が薄いと思われる塩素は、体の中で、体液や血液にナトリウムの対照イオンとして塩化物(陽イオンを持つ元素との化合物)の形で存在して体の浸透圧を調節するほか、食物の消化に不可欠な胃酸の材料となる大事なミネラルである。体内では、皮膚中や胃で濃度がとくに高く、体内での濃度調整はナトリウムとともに副腎皮質ホルモン(鉱質コルチコイド)によって制御される。摂り込まれた塩素は小腸で吸収され、摂りすぎた塩素は腎臓でろ過後、体外に排泄される。通常、塩素の摂取は塩素単独ではなく、ナトリウムとの化合物、つまり塩(NaCl:塩化ナトリウム)として摂取される。
犬における塩素の所要量はこれまで明らかにはなっていないが、塩としてナトリウムの摂取に伴った摂取量は1kg体重当たり約75mgといわれ、多量に失血したときや慢性的な嘔吐が続く場合には、これを超える量の摂取をして失った塩素量を補う必要がある。