微量元素の中でも知名度の低いマンガンは、体内には体重1kg当たり2mgしか含まれないが、細胞内の酵素反応に多く関与し、代謝に欠かせない元素である。
成犬の1日のマンガン所要量は体重1kg当たり0.7mgと微量で、犬に適正とされる食餌内容(牛乳、卵製品を除く多くの食材)に十分含まれることから、とくに摂取量を気にせずともよい量である。
通常の食餌をとっている犬でのマンガン不足の報告はこれまでにないが、ほかの動物種では骨格異常や繁殖能力障害、胎児の骨格奇形などの症状が観察されている。犬のマンガンに対する許容性は高く、高濃度のマンガンを与えられた実験では、鉄の吸収への影響による鉄不足が観察されるに留まっている。