
食物と一緒に摂り込まれたヨウ素はほとんど体に吸収され、さらにそのほとんどすべてが甲状腺に蓄積される。常に多めのヨウ素摂取がなされている場合には、摂り込まれても体内で利用されるヨウ素量は少なく、利用されなかったヨウ素は尿中に排出される。ヨウ素の多量摂取による急性中毒症は食物からは極めて希であるが、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能に影響を与えるため、避けるべきである。
成犬の1日のヨウ素所要量は、体重1kg当たり15μgとされ、授乳中の母犬や運動量の多い犬(実猟犬や現役ソリ犬)などでは、需要がほぼ倍になる。ヨウ素が不足すると甲状腺ホルモンの合成が不十分になることから、体力減退や脱毛、繁殖能力の低下、成長阻害、浮腫などが現れる。とくに妊娠中の母犬にヨウ素が不足すると、胎児に甲状腺機能低下や脱毛、骨格異常、虚弱などの影響が現れる。