微量元素のセレンは別名セレニウムとも呼ばれ、1954年になってその必要性を認められた元素である。セレンは細胞にとって有害なフリーラジカル(過酸化イオン)を不活化する酵素グルタチオンペルオキシダーゼの構成元素で、同じく抗酸化に働くビタミンEと共に、細胞膜の保持に欠かせない。セレンを多く含む自然食材には、レバーを含む肉類や魚類、卵黄、ニンニク、ブラジルナッツなどがあり、またサプリメントとして、セレン含有量の多い培地で酵母を培養したセレン酵母などがある。
犬の1日のセレン所要量は、体重1kg当たり2.5-5μgと推測され、体重10kgの犬に必要なセレンの量25-50μgは、牛レバー約3-7gで十分に摂ることが出来るため、とくにさらなる摂取を心がけることはない。また、同時にビタミンEの供給量が十分あればセレンの需要は下がるというように、ビタミンEの供給量によってセレン所要量は変動する。妊娠中の母犬に、ビタミンEと共にセレンが不足すると、その影響は子犬の筋肉の萎縮やそれに伴う成長阻害、免疫低下、虚弱などとして見られる。
セレンはまた、許容範囲の狭い微量元素としても知られており、所要量の20倍量を数か月にわたって毎日摂ることで、貧血や肝臓壊死といったセレン中毒が現れるとの報告がある。