リン酸塩は、リン酸と、ナトリウムやカリウムなど塩類との化合物の総称で、工業的に化学反応により製造される。ハム・ソーセージ類の食感改善やpH調整、醸造補助などの目的で、加工品に多く用いられ食品添加物の一つだ。代表的なリン酸塩であるポリリン酸ナトリウム(あるいはカリウム)やピロリン酸ナトリウム(あるいはカリウム)、リン酸-ナトリウムなど数種のリン酸塩が混合され、食品添加用複合製剤として使われるときに「リン酸塩」と表示される。
体内に摂り込まれて胃酸の働きにより遊離したリン酸(H3PO4)は、胃内に遊離している食材由来のカルシウムやマグネシウム、亜鉛、鉄、重金属などほかのミネラルと結合しやすく、リン酸と結合したこれらのミネラルは一部が吸収されるが、多くは小腸からの吸収が妨げられ、便と一緒に排泄される。
リン酸を多量摂取することにより、血中カルシウム濃度が低下して副甲状腺ホルモン値が上昇することが観察されるが、それに起因する「リン酸の過剰摂取は体内のカルシウム-リン酸バランスを崩し、骨中よりカルシウムを放出する」という説は明らかになっていない。また、添加されたリン酸塩によりリンの過剰摂取に繋がることも、その添加量からして考えにくく、犬の場合のリンの過剰摂取はむしろ肉類の摂り過ぎから、そしてカルシウムとのアンバランスはカルシウム摂取量の少なさからによるところが大きい。