リン酸水素カルシウムは、骨粗鬆症やくる病など代謝整骨疾患の治療あるいは妊娠・授乳時のカルシウム補給に、第二リン酸カルシウムが医薬用カルシウム剤として使われるときの名称である。1)カルシウムの吸収の程度は乳酸カルシウムよりも劣るので、カルシウムだけの補給でなく、カルシウムとリン酸の両方を補給したいときに用いられる。
体内に摂り込まれたリン酸カルシウムは、胃酸の働きによりリン酸(H3PO4)と塩化カルシウム(CaCl2)に分かれる。塩化カルシウムは小腸から吸収されるが、リン酸は胃内に遊離しているマグネシウム、亜鉛、鉄、重金属などほかのミネラルと結合しやすく、これらのミネラルはリン酸と結合することで、一部は吸収されるが、ほかは小腸からの吸収が妨げられ便と一緒に排泄される。
人間の場合、リン酸カルシウムが添加物として含まれるさまざまな食品を摂取しすぎることから引き起こされる、リン酸の過剰摂取によるカルシウムの吸収阻害が、食品添加物として問題にされる。しかし犬の場合、市販のフードにはリンとカルシウム量の表示があるほか、一日に摂る食餌量や、リンとカルシウムの量なども飼い主が管理することができるので問題にはならない。
1)第十六改正日本薬局方(JP16)名称データベース ”リン酸水素カルシウム水和物”
http://jpdb.nihs.go.jp/jp/DetailList_ja.aspx?submit=詳細検索(日本語名)&keyword=リン酸水素カルシウム水和物