セレン酸ナトリウムは、亜セレン酸ナトリウムと同じセレン化合物の一つとして、日本国内では0.00013%以上の含有量の製剤は毒物として指定されている。とくにアメリカやEUでは、栄養目的のセレン酸ナトリウムのドッグフードへの添加が認められていることからたびたび使用されているが、セレン酸ナトリウムを含むドッグフードの日本国内販売は、毒物劇物指定令に基づき、セレン酸ナトリウム含有量が0.00012%以下(フード1kg当たり1.2mg)であるときのみ可能である。1) ちなみに食品衛生法においては規定外添加物であり、食品への添加は認められていない。
体内に入り分離したセレンは小腸で吸収され、抗酸化物質としての機能を果たす。しかし、成犬のセレンの1日の所要量は1kg体重当たり2.5μg(セレン酸ナトリウムとして)といわれ、これはまたビタミンEの摂取量にも影響されるほか、長期にわたり毎日6μgを与えた試験ではすでに中毒症状が見られたほど、セレンはとくにミネラルの中でも体が許容する範囲が極めて狭く、その調節量が難しいとされる。
合成の亜セレン酸ナトリウムまたはセレン酸ナトリウムに代わるセレン供給源となり得るものには、セレン酵母(セレン含有の高い培地で培養されセレン含有量の高い酵母)や魚、レバー、腎臓などがあり、これらのアミノ酸と結合した有機質セレンは化学合成された無機質セレンよりも吸収が良いとされる一方で、含有量が不安定であることや自然環境からの汚染物質の蓄積などが懸念される声もある。
1) 毒物及び劇物指定令(昭和四十年一月四日政令第二号)最終改正平成23年10月14日政令第317号
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE002.html
【参考資料】ペットフード公正取引協議会「2-5.制限ある添加物の例」
http://www.pffta.org/seizo/genryo2-5.html