キレートとは、配位子と呼ばれる化合物が1つの金属イオンを中心に挟むこむ(あるいは包み込む)ようにして結合することをいい、配位子にアミノ酸が結合している場合この化合物をアミノ酸キレートと呼ぶ。アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)の定義では、金属アミノ酸複合体やタンパク質キレートよりも厳密に定義され、金属1に対しアミノ酸が1-3のモル比率で共有結合することによって得られるものであるほか、加水分解されたアミノ酸の平均分子量が150、キレート全体では分子量800を越えないものとされる。1)
1980年代から90年代に相次いで報告された研究により、アミノ酸やタンパク質とキレート結合させた亜鉛や銅、マンガンなどのミネラル成分は、有機酸と結合させた有機ミネラルや無機ミネラルよりも吸収がよく体内に長期で留まる傾向にあることが分かり2)、以来サプリメント食品やペットフード、動物飼料などへ添加されるミネラル成分は、アミノ酸やタンパク質とキレート結合させた化合物が用いられることが増えてきた。
食品では、豚や鶏のレバーや鹿肉がダントツに多くの鉄分を含むほか、牛の第三胃袋(センマイ)や卵黄、貝類、馬肉、鴨肉などに鉄は多く含まれる。
鉄は体に必要なミネラルのうち、亜鉛や銅、コバルト、マンガンなどとともに微量元素と呼ばれるものの1つである。犬の体の中にある鉄分の約60%はヘモグロビンとして赤血球の中にあり、約10%はミオグロビンとして筋肉中に、また約20%はフェリチンやヘモシデリンなど貯蓄型鉄としてレバーや脾臓、骨髄などに存在する。なお血液1ml中には、約0.5mgの鉄が含まれる。
鉄はヘモグロビンとミオグロビンの酸素運搬機能の中心的役割を果たすほか、細胞内で酸素を供給する酵素反応にも関与する。犬の一日の鉄分所要量は体重1kgあたり約1.4mgとされ、出血時や長毛犬種の換毛期、妊娠・授乳期間には、その需要はさらに高まる。3)
大量の脂肪や大量の糖分を含むフードの摂取や、寄生虫感染、出血、血便・血尿などにより、鉄は不足しやすい。子犬の鉄分補給はまず母乳からであり、もし母乳中の鉄分が少ないなどで子犬に鉄不足が生じると、貧血や心肥大、あるいは感染症にかかりやすくなる。鉄分を過剰に摂ると消化器官を腐食したりするほか、マンガンやリンなどほかの栄養素の吸収阻害の原因となる。
1)PROTEINATED AND CHELATED MINERAL COMPLEXES
http://www.ams.usda.gov/AMSv1.0/getfile?dDocName=STELPRDC5057630
2)H. DeWayne Ashmead: Chapter 3 COMPARATIVE INTESTINAL ABSORPTION AND SUBSEQUENT METABOLISM OF METAL AMINO ACID CHELATES AND INORGANIC METAL SALTS, The Roles of Amino Acid Chelates in Animal Nutrition,
3)H. Meyer, J. Zentek: Ernährung des Hundes, Parey Buchverlag Berlin